俺の後輩
その後、60分授業を3コマ終わらせ、昼休みになる。
俺と堅はすぐに購買へと向かう。
「うおおおおおお!」
堅は人混みを走りながら、吹き飛ばして行く。俺も、堅が通った道をそのまま通って先頭へ。
「「おばちゃん、焼きそばパン、ソーセージパン、アンパン、ミックスサンドパン、コーヒー牛乳、それぞれ一つずつ。」」
「はいよ。」
俺と堅はおばちゃんに代金を払い、同じ物をもらう。そして、何とか人混みを抜け出す。
「黒ちゃん、今日も例のところへ行くのか?」
「ああ、まあな。」
「よっしゃ、ついていくぜ。」
「ああ、大歓迎だ。」
「じゃあ、早く行こうか、美少女達のところへ。」
「はいはい・・好きだねえ、お前も。」
「だってさ、お前、羨ましすぎるだろ。」
「はい?」
「はい?じゃねえ!お前は生徒会っていう組織で、美少女達とキャキャしているんだろ?」
「してねえ。それにお前のいうキャキャしているという可能性があるのは、俺だけじゃないだろ?」
「・・・うーん、まあな。東雲君のことだろう。でも・・お前は無意識に女子に優しいところあるからな。だから、お前の方が女子にモテるんじゃないのかと、俺は思ってる。それゆえに、美少女達とキャキャしている可能性が高いと。」
「うーん・・もう、どうとでも言ってくれ。それより、早く行くぞ。お前の言う、例の場所へ。」
例の場所というのは、生徒会室だ。生徒会役員は昼休みにそれぞれの友人を生徒会室に連れて来て、一緒に昼食を食べるという習慣があったりする。
「「お邪魔します。」」
俺たちは生徒会室の扉を開ける。
生徒会室内にはすでに伏見の友人と、天音の友人と本人達がいた。基本的にこれで全員だ。東雲がこの時間に生徒会室に来ることはないのだ。大勢で交流するのが苦手らしい。それとうっかりしていたことが一つ。大鳶にこの集まりのことをいうのを忘れていた。
俺たちはいつもの席に座る。
「おっ、飛鳥?」
俺は正面を見ると懐かしい顔があった。
「・・・やっと会えましたね。昴さん。」
「やっぱり。久しぶりだな。でも何で一年生の飛鳥がここに?」
「・・・それは私が招待したのよ。」
天音が俺たちの話に入って来た。
「えっ?」
「私が生徒会室にくる前に二年生の教室をウロウロしている時崎さんを見つけたのよ。それで話を聞いたら、昴君を探してるって言うから、ここに昴君が来るって思って、ここで待ってもらっていたのよ。」
「俺を探してた?」
「はい、そうです!と、言ってもただ、昴さんとお昼を食べたかっただけなんですけどね。」
飛鳥の顔が少し赤くなったような気がした。さらに、天音と伏見が俺を睨みつけてきた気がした。
「イテテテテ」
俺は堅に耳を引っ張られる。
「どういうことだ、黒ちゃん。生徒会の美少女達というものがありながら、こんな可愛い後輩にまでに好かれているなんて。うらやましすぎるぞ。せめて、俺にも紹介しろ。」
「はあ〜・・」
俺はただ堅の言葉に呆れる。しかし、俺たちの会話を聞いていたらしく、飛鳥が自己紹介してきた。
「あ、すみません、皆さん。自己紹介が遅れました。私、中等部時代、昴さんの所属していた、中等部の剣道部でマネージャーをしていた、時崎飛鳥です。よろしくお願いします。」
「俺の名前は鳴神堅。よろしくな、飛鳥ちゃん。」
飛鳥の自己紹介が終わるなり、堅が飛鳥の両手を包み込むように掴んだ。
「あはは、よろしくお願いします、鳴神先輩。」
「うんうん、よろしく。それと俺のことも、黒ちゃん同様、ファーストネームで呼んでくれ。」
「・・・遠慮しときます。」
「トホホ・・・」
堅は落ち込んでしまった。まあ、あの用件を断られたのは当然と言えば、当然。いきなり、手を掴んでくる異性をファーストネームで呼びたくないというのは当然の感情だ。
「どうして、黒ちゃんばかり・・」
堅は呪いのように独り言を連呼している。
そんなことは気にしないかのように飛鳥が俺の隣の席にやってくる。
「隣いいですか?昴さん。」
「うん、いいよ。って、もう座ってんじゃん。」
「えへへ。」
飛鳥は何故かとても笑顔だった。
飛鳥とは中等部時代、よく隣に座って昼食を食べた。今のこの光景が何だかとても懐かしく思えた。
「あの、昴さん、今日、剣道部を見学に行ってもいいですか。」
「おお、また、マネージャーやってくれるのか。」
「はい!」
「けどね、見学は今はまだ無理かーな。そのうち、見学の機会はあるから、そん時にな。それと飛鳥の右斜め前にいる女子、伏見っていうんだけど、伏見も剣道部だから、覚えておくといいかもな。」
「よろしくお願いします、伏見先輩。」
飛鳥は伏見に軽くお辞儀をする。
「ああ!よろしくな、時崎。前のマネージャーが卒業しちゃったから、ホント、助かるわ。」
「そう言ってもらえるとありがたいです。」
「かっかっか、それは良かった。それと時崎、私はお前のことが気に入った、私のことは絢香って呼んでいいぞ。」
「ありがとうございます。じゃあ、絢香先輩、私のことも、飛鳥って呼んで下さい。」
「ああ、いいぞ、飛鳥。」
飛鳥と伏見は握手を交わす。笑顔で。
「俺だけなんで・・・」
堅はファーストネームで呼び合う飛鳥と伏見を見て、自分はファーストネームで呼ばれないという現実を悲しむのだった。




