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熱き俺の友人

「おっす、黒ちゃん。」

俺は教室に入るなり、声をかけられた。

「おっす、堅。」

俺もあいさつを返す。俺に声をかけてきたのは、俺の親友、時に悪友の、鳴神堅(なるかみけん)だ。

堅は、中等部からの友人で、俺が学園に転入したと同時に堅もこの学園に転入した。理由は親を亡くし、親戚を訪ねて、この島へ。

俺と堅は同じ境遇ということもあり、仲良くなるのは早かった。それから、二人で協力して、この学園での人脈を広げて行った。今でも、生徒会の仕事を手伝ってくれることもある。ただ、役員の誘いは断られてしまった。柄じゃないからだそうだ。そして、たまには喧嘩もする。堅はボクシング部なので、一発のパンチが重く、竹刀で受け止めても、芯から折れてしまう。それでも、俺はいつも何とか引き分けに持ち込む。ただ、俺が粘るせいで被害も大きくなり、二人して、教師たちに叱られることもよくある。そんなことがあっても、俺たちが停学、退学にならないのは、生徒会役員という権力のおかげだ。この学園の生徒会役員の権力が大きいため、処分をまぬがれるのはたやすいのだ。

俺たちはその後、軽い雑談を交わし、予鈴がなったので、席につく。

「おーす、みんな、ホームルームの時間だ。席につけ。」

担任の飯塚先生が教室に入ってくる。慌てて、席につくクラスメイトもいた。さらに・・・

「すいませーん、遅れました。」

教室に弾丸並みの勢いで入ってくる影があった。

「遅いぞ、大鳶。」

影の正体は大鳶だった。大鳶は慌てて俺の席の隣へ座ろうとした。が、しかし・・

「うわーあー」

何故か大鳶は転んで、机がひっくり返る。

「だ、大丈夫か?」

俺は大鳶に手を差し伸べ、大鳶が立ち上がったあと、倒れた机を元に戻す。

「ありがとう、黒金君。」

「ああ、怪我ないか?」

「ううん、大丈夫。」

「そうか、それはよかった。」

俺は安心する。どうも、俺は昔から、助けが必要そうな女子には、助けずにはいられない。そのせいで、冷やかしを受けることがある。

「よっ、お二人さん。朝からお盛んで。」

そう言っているのは、堅だった。

おそらく、さっきの俺と大鳶のやり取りを見ていたのだろう。

「お盛んってなんだよ、別にそんなんじゃねえ。」

俺は堅の言葉に反論する。

「ははは、冗談だ。」

何とか、理解してもらえたようだ。俺は必要以上助けてしまうことがあるので、こういう冷やかしは多い。気をつけなければならないと思うのだが、なかなか治らない。


やがて、ホームルームも終わり、一時間目の体育の準備をするために各々、更衣室へと向かった。


そして、一時間目の体育。

「行くぜ、黒ちゃん!」

「来い、堅!」

今日の体育は野球。一回表、俺のチームの攻撃。ここまで、ツーアウト、ランナーはなし。ここで、三番である俺の番。ここでアウトになるわけにはいかない。それに相手のピッチャーは堅。絶対に負けたくないという思いが湧く。

そして、一球目。

結構速い。しかし、捉えられないことはない。俺はボールに合わせてバットを振ろうとする。

「・・・っ!」

途中でボールが曲がった。おそらくカーブ。

それでも、俺は何とか対応し、ボールをバットに当てる。ボールはコースを外れ、ファールとなった。

「んー、残念だ。」

「いやいや、あれを当ててくるなんて、すごいと思うぞ。 黒ちゃん!自信あったんだけどな。けど、ストライクはストライク。このまま、勝たせてもらうぞ。」

「いや、堅、お前の投球は場外に放り込んでやるよ。」

俺と堅は睨み合う。

二球目。

慎重にボールを見る。一見、ストレートだが、途中で急に曲がることもあることを頭にいれておく。

すると、今度も突然曲がった。だが、さっきと全く同じ。捉えるのは容易だった。

「同じ手は通用しない!」

バットでボールを捉えて打つ。打球は遥か遠くは飛ばされる。しかし、突然吹いた風により、ボールは大きくそれ、ファールとなった。

「やるな、でも、やはり、ストライクに変わりない。次で終わらせるぜ、黒ちゃん!」

「いや、次はホームランかな。」

堅は相変わらず熱い漢だ。だけど、熱いのは堅だけではない。この場の全員が熱くなっている。そして、俺も。

「行くぜ、黒ちゃん!最後は俺のこの勝負にかける思いをこのボールに込めて。くらっとけ、俺のストレートを!ふん!」

堅はボールを投げる。

今までに無いスピード。分かる。これは本当にストレート。堅の熱意がこもっていることも。

このノリは何と無く甲子園の舞台を思わせる。それに堅はこんだけ速い球投げれるなら、野球部に転部してもいいのではないのかと思う。技術も熱さも充分だと思う。

「ふっ、相変わらず熱い奴だ。けど、悪くないぜ、堅!」

俺はボールをバットで捉える。

「う、うっ、重い・・・」

ボールは重かった。堅の勝負にかける重さということだろう。けど、俺も負けたくない。剣道でも野球でも負けるのは嫌なんだ。たとえ、勝利の先に何が待っていようとも。

そこで、一瞬、元カノである人の姿が頭に浮かぶ。しかし、それを振り払う。

そして・・・

「うおおおおりゃ!」

「なっ・・」

俺はボールを遥か遠くに飛ばす。

そして、ボールは学園外に出て行いった。

辺りが一斉にざわめく。俺はホームベースまでを清々しい気持ちで回る。

だが、その気持ちはすぐに崩される。

ガシャン・・

学園の近所の家の窓が割れたようだ。

物凄いスピードで何者かがやってくる。近所の家の主人だ。

「こらあーガキども、よくも家の窓ガラスを。てめえらの頭も割ってやろうかー。」

主人はバットを持っている。俺や堅を含む生徒と体育の教師はすぐに校舎内に逃げようにして駆け込んだ。こうして、一時間目は中断という形で幕を閉じた。


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