翌日
翌日。
「4998、4999、5000!はあ、はあ・・・」
俺は朝、竹刀で素振りをしていた。5時半。いつもならこんなに早く起きることはない。しかし、昨日はたくさんのことがあって、こんがらがって、よく眠れなかった。
魔法使いの殺しあい。謎の存在、織姫。東雲が俺を殺しにきたこと。冬夜との同盟のこと。
どれも現実味にかけていて、夢でも見ているようだった。しかし、今、俺の素振りを見ている織姫の姿を見て、これは現実なのだと実感する。
「お疲れ様です、昴。」
織姫が俺にタオルとスポーツドリンクを渡してくる。
「サンキュー。」
俺は織姫の持ってきたそれらをありがたく受け取る。そして、500mlのスポーツドリンクを一気飲み。
「ぷはーっ!」
俺はまるで酒飲みのような行動をする。どうも、一気飲みをした後は、癖でやってしまう。人前では何とか抑えているが。
「よっ、昴、男前!ふふふ。」
織姫に見られていることを忘れていた。少し恥ずかしい。
そんな俺の思考がわかるかのように織姫が口を開く。
「昴、そんなに恥ずかしがることないですよ。私は昴のその癖をずっと見てきたんですから。」
そういえば、そうだった。織姫は元々、俺の魔力だったらしい。
織姫は話を続けた。
「それにしても、正面から見ると、それはもう恥ずかしい顔をしてましたね。思わず、吹き出しそうでした。 」
「そんなに⁉」
俺は織姫の言葉に驚く。以前、部活の先輩に癖を見られて、
「お前、将来、酒飲み親父決定だな」
と言われたことがあるが、吹き出しそうとは一度も言われたことはない。しかし、俺はよく考える。
酒飲み親父決定というのは、顔もおっさん顔になっていたからそう言ったものではないのか。織姫も俺の顔がおっさん顔に急変したから笑ったのではないか。
という考えが頭に浮かぶ。
一体・・・俺はどんな顔をしていたんだ・・・?
自分自身の結論が出たところで、スポーツドリンクを一気飲みした後の自分の顔が気になった。
「織姫、一つお願いがある。」
「?何でしょう。」
「今度、俺が飲み物を一気飲みした後の顔をカメラに撮っておいてくれないか?なんか、自分でも気になったから。」
「はい、了解です。しっかり、撮っておきますね。」
俺には何故か織姫がしっかりという言葉をやけに強調しているように見えた。
そして、もう5000本素振りをしてから、朝風呂に入って汗を流し、制服に着替えて、朝食の準備をする。
6時15分、すでに制服に着替えている雪乃が二階の自分の部屋から、階段を使い、ここ、一階の台所に降りて来た。
「おはよう、兄さん、今日はやけに起きるの早いね。」
「おはよう、雪乃。まあ、眠れなかったんだ。」
そうやって俺と言葉をかわした雪乃の髪型は実にひどかった。芸術は爆発だって言う言葉をそのまま再現したような髪型だ。
「雪乃、相変わらず寝相悪いみたいだな。髪型がすごいことになってるぞ。」
俺がそう指摘すると、雪乃が慌てて髪を触り始める。
「え、やだ、なんか、恥ずかしい、兄さん、見ないで。」
そういって、雪乃はものすごいスピードで洗面所に走っていった。
俺は思う。
そんなに恥ずかしがることない、兄妹に見られただけだし。別にすごい髪型だって、すぐに直せばいいだけだ。本当にこの時期の女の子というのはわからない。
と。
それから、しばらくし、雪乃も髪型をいつも通りに整えて、今日の朝食が置いてあるテーブルへと座る。
綺麗な銀髪のショートヘアー。雪乃の髪はまだ若干跳ねている部分が見られたが、あえて言わない。理由はそれはそれで可愛いと思ったからだ。
すると、ちょっとしてから、織姫もやってくる。
「「「いただきます。」」」
俺と雪乃と織姫は朝食を食べる。
今日のメニューは、トースト、スクランブルエッグ、生野菜のサラダ昴特製ドレッシング和え、ホットコーヒーだ。
「うん、美味しい。」
「美味しいです。」
雪乃と織姫は朝食の感想を言ってきた。美味しいという言葉を聞き
、俺は少し嬉しくなる。
「ところで兄さん、織姫はこれからどうするつもりなの?」
雪乃が話題を変えて俺に尋ねてくる。
「うーん・・」
俺は悩んでしまう。全く考えてなかった。俺と雪乃は学校にいかなくてはならない。織姫はどうしようか、学校には連れてはいけない。手続きもしてないし、経歴も今までの履歴も、戸籍もない。手続きすらできない。
そんな時、織姫が口を開く。
「大丈夫ですよ、私は。家に残って家事をして起きますから。学校に興味はありますが、行けないという身分だというのは分かってますから。」
と。織姫を雑用係にするのは嫌だったが、本人がいいと言うなら仕方ない。今はそうしてもらうしかない。
なんやかんやで事は解決し、朝食も食べ終え、俺と雪乃は学校へ出発する。
「いってらっしゃい、昴、雪乃。」
「いってくる。」
「いってきます。」
俺と雪乃は歩き出した。




