第3話 憑依
その頃、待機警察官は・・・
矢来・道の駅駐車場では三重県・北東署の面々が待機していた。
そこには署の名物刑事、強行犯係の刑事、岩田剛警部と部下の島田一平がいて無駄話をしていた。
「先輩」
「ん?」
「先輩の名前は誰が付けてくださったんですか」
「なんで?」
「いやなんとなく、なんかゴツゴツした名前で強そうじゃないですか」
「あぁ、実はなぁオレ、親父が誰か知らんのだ」
「はぁなんか俺変な事聞いちゃいましたか?」
「いやいや、いいんだ、それで俺のかあちゃんがさぁ
俺を一人で生んだらしいんだ。
ガキの頃なんでウチにはオヤジがいねぇのか聞きたかったんだけどなぁ、なんか子供心にソレは聞いちゃダメなことのような気がしてな・・・
で俺の名前は誰が付けたのかって聞いたことがあるんだ」
「はい」
「俺はさぁ未熟児で生まれたらしいんだ、だから強い子になって欲しいって思ったらしく『つよし』ってつけたんだとさ」
「はぁ・・・それは、お母様がって事ですか」
「いやぁそれがよ、かあちゃんニコニコ笑うばっかりでさ・・・
『おまえが、良い子でいれば、いつか父ちゃんが会いに来るから、
嘘ついたり悪いことだけはしちゃだめだよ・・・』なんて言うんだよ」
「はい・・・でお父様には会えたんですか」
「いや全然」
「はあ、なんかスイマセン変な事聞いちゃって」
「いやいや、いいんだよ、ただこの話、女房と今話したお前しか知らない話だから誰にも言うなよ」
「はい、誰にも言いません」
「本当だな」
「はい」
「じゃついでだが、かあちゃんが死んだの、お前もわかってるな」
「はい」
「葬式じゃ世話になった、ありがとう」
「いえ・・・」
「それがよ俺んち金には困らなかったんだ、毎月かあちゃんの銀行口座に入金があってな、毎月30万から50万・・・
それが未だに毎月入金があるんだ・・・」
「はぁ・・ひょっとして先輩の父親ってことですか?」
「わからん、ただその名前がよ」
「は?」
「オオバ ケンって名前なんだ・・・まさかなぁ」
「はぁ・・・大場?まさか、あの俳優の?」
「んーーーまさかとは思うんだが、もし会うことがあったら、思い切り殴ってやろうと思ってるんだ・・・」
「はぁ・・・あっ、あれっ!岩田さん、ホテルの方角なんか空が明るくなってますよ、あれっ!」
「んー、何か始まったな」
「はい」
ホテルの方角が明るくなり空は青く光りだした。
一方、現場では静華が珍しく慌てていた。
「タイガ・・・帯雅っ!聞こえるか!」
「あ、はい」とブラックドラゴン・タイガ。
「状況が変わった、今すぐ下に来い、で、ホテルの玄関前に悪魔がいるからソーっと背中から近づいて逃げないようにガッチリ抑えてくれないか・・・そーっとだぞ」
「はい、いま行きます・・・そーっと移動しますね……」
静華は慌てている自分に気がつき大きな深呼吸を始めた。
「すううーーーはあーーーー」
目の前にいるのが父を死に追いやった悪魔の一人とすれば
危険な憑依をする悪魔に違いない。
それは細かく人間の体に根を伸ばし内蔵全てに絡みつく。
憑依した悪魔を倒すには、憑依された人間の心臓が止まり体から離れた悪魔を斬るしかない。
つまり、今なんとかしようとしても人間だけが傷つき悪魔は平気だからだ。
静華は冷静に考えた。
そこに勝志郎の思いがテレパシーとなって静華の頭に入ってきた。
『静華さん、俺は今から自害します、後の事よろしくお願いします』
『まて、もう少しだけ時間をくれ今、助けを呼んだところだ』
『わかりました・・・』
『タイガ、悪魔を掴んだら絶対に離すな逃がすんじゃないぞ』
『はい、すでに勝志郎様ごとガッチリ掴んでます』
『くっそう、勝志郎の命には変えられん、でも、やだなぁーもう、うううーーんっ!』
静華は苦渋の決断で彼女の神に力を借りることにした。
父の二の前は踏むわけにはいかない。
静華には同じ魂の自分がもう一人、この世に存在している。
もう一人の自分は静華にとって分身であり親戚であり、さらに神様のような存在だった。
北海道の国際警察・函館南警察署・署長・北条一凜にテレパシーで助けを求めた。
『かずりっ!かずり!』
ものすごいエネルギー波は三階に向かう和華の頭の中にも入ってきた。
―ギャンッ・・「かずりっ!」
廃ホテル内の和華が立ち止まった。
「痛いっ!いったーい」
「どうしました?大丈夫ですか」とアキラ。
「もう、お姉さまよ、痛いテレパシーが聞こえたの・・・下で何かあったみたい、でもコッチはこっちよアキラおじさん行きましょ」
「はぁ、はい」
青龍の後を追い、走りながらアキラは考えていた。
『逮捕された時、萌ちゃんの姿、なんで俺にだけ見えていたんだろう・・・
まさか霊体だとして・・・萌ちゃん・・・まさかな……』
先を走る和華がチラリと振り返った。
「もうー余計な雑念捨てて悪霊に噛まれたり憑かれたりしないように気をつけてよぉー」
小学生・和華の言う通りだった。
「はい」
『これだよ、また読まれてた・・・そりゃ和華さんも早く大人になるよ…』




