第28話:輝くステージと、最高のパートナー
鳳凰高校と聖華女子学園、そして近隣校が合同で開催する、秋の一大イベント『合同文化祭』。
校内は朝から他校の生徒や一般の来場者で溢れ返り、熱気と熱狂に包まれていた。
「音無! ステージ裏の音響トラブル、どうにか調整できないか!?」
「音無くん、他校から追加のパンフレットを要請されたんだけど、どこに回せばいい!?」
本部テント前。
ひっきりなしに飛び交うトラブルや確認事項に対し、俺は、手元の端末で各部署へ即座に的確な指示を出し、瞬時に交通整理を行っていく。
「音響は第二予備ラインに切り替えてくれ。パンフレットは聖華の生徒会倉庫に予備がある。一ノ瀬、手配を頼めるか?」
「任せなさい! 指示が早くて助かるわ、音無くん!」
一ノ瀬莉央が爽やかな笑顔を見せ、てきぱきと駆け出していく。
かつて周囲に嘘の噂を流され、面倒を避けるために陰へ潜んでいた男は、もうどこにもいない。自分の『優秀さ』を誰かの笑顔のために使い、仲間たちと全力で駆け抜ける充実感が、俺の胸を満たしていた。
「――本当に、見事な手際ね。私の『特別補佐』さん」
背後から響いた、鈴を転がすような美しい声。
振り返ると、そこには鳳凰高校の制服ではなく、文化祭実行委員会の総代表として華やかな衣装を身にまとった一葉が立っていた。
「一葉。そっちの開会式の挨拶と、来賓の対応は終わったのか?」
「ええ、完璧にこなしてきたわ。……でも、タカヒロくんが他校の女子生徒たちから『あの実行委員のイケメン、誰!?』って注目の的になってるのを見て、少しだけヒヤヒヤしちゃった」
一葉はくすりと微笑むと、周りに大勢の人がいるのも構わず、俺の隣へ寄り添って腕をきゅっと組んできた。
周囲から「あ、鳳凰の生徒会長カップルだ!」「相変わらずお似合いすぎる……!」と温かな歓声が上がっても、彼女は隠そうともせず、誇らしげに胸を張っている。
「みんな見てるぞ、会長」
「いいの。今日は、私たちがこれまで頑張ってきた集大成の日なんだから……世界で一番大好きな人の隣にいる権利くらい、見せつけさせて?」
一葉の瞳には、どこまでも深く真っ直ぐな愛情が宿っていた。
※ ※ ※
夕方。
文化祭も、いよいよ終盤。
後夜祭の熱狂的な音楽がグラウンドから聞こえる中、俺と一葉は校舎の屋上へ上がっていた。
橙色から深い群青色へと移り変わる夕暮れの空。爽やかな秋風が、二人の髪を揺らす。
「……大成功だったね、タカヒロくん」
手すりに寄りかかり、眼下に広がる賑やかな学園を見下ろしながら、一葉が愛おしそうに呟いた。
「ああ。一葉が諦めずに準備を進めてくれたおかげだよ。本当にお疲れ様」
「ううん。あの日、タカヒロくんが私の手を取って、生徒会に来てくれたから……私、ここまで頑張れたんだよ」
一葉は振り返り、夕日を背に受けて、世界で一番綺麗な笑顔を俺に向けた。
「十年前、誰も気づいていなかったあなたの輝きを、私はずっと知っていた。……そして今、学園中のみんなが、あなたの凄さと格好よさを知っている。それがね……私、自分のことみたいに誇らしいの」
美咲の裏切りによって深く傷つき、「自分なんて」と諦めかけていたあの夜。
俺の心に寄り添い、暗闇から引っ張り上げてくれたのは、間違いなく目の前の少女だった。
「一葉。俺の本当の姿も、努力も、ずっと見守ってくれてありがとう」
俺は一葉の手を両手で優しく包み込み、真っ直ぐにその目を見つめた。
「お前が俺を見つけてくれたから、俺は新しい自分になれた。これからの人生、俺の隣にいてほしいのは……お前だけだ」
「……! タカヒロくん……っ」
一葉の瞳から、喜びの涙が溢れ落ちる。
彼女は自ら背伸びをすると、夕暮れの屋上で俺の首に腕を回し、深く唇を重ねてきた。
後夜祭の歓声と花火の音が遠くで響く中、俺たちは夕闇の中で、ほどけることのない強い熱と絆を確かめ合うのだった。
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