第27話:噂の二人と、公認の学園生活
週が明けた、月曜日の鳳凰高校。
登校するなり、俺に向けられる視線は、どこか今までとは違っていた。
「おい……聞いたか? 音無と椎名会長、週末に二人で出かけてたらしいぞ」
「えっ、マジで!? 付き合ってるってこと!?」
「前から噂になってたけど、マジで学園最強カップルの誕生じゃん……!」
廊下を歩くだけで聞こえてくる、驚きと祝福の入り交じったざわめき。
演じるのをやめ、容姿も能力も隠さなくなった今の俺と、誰もが憧れる生徒会長の一葉。かつての俺なら「俺なんかが」と卑屈になっていたかもしれないが、一葉とあの熱い週末を過ごした今の俺には、照れくささはあっても迷いは一切なかった。
二年B組の教室に入ると、クラスメイトたちが一斉に集まってくる。
「音無! 実際、どうなんだよ! 椎名会長と付き合ってるのか!?」
「ちょっと、男子! 音無くんが困ってるでしょ!」
クラスの男子たちが身を乗り出して尋ねてくるのに対し、女子たちがそれをたしなめる。
「ああ、ちゃんと付き合ってるよ。……俺にとって、一番大切な人だ」
俺が誤魔化さずに真っ直ぐ答えると、教室中が「うおおお!」「やっぱりかー!」「おめでとう、音無くん!」という大歓声に包まれた。
前の席の一ノ瀬莉央も、ふっと柔らかく微笑みながら、「やるじゃない、音無くん。お幸せにね」と小さく拍手を送ってくれた。
※ ※ ※
放課後。
すっかりお馴染みとなった生徒会室の扉を開ける。
「おかえりなさい、タカヒロくん。今日も……すごかったわね」
奥のデスクで仕事を終えた一葉が、少し頬を赤らめながら歩み寄ってきた。
朝の教室での出来事は、当然のように生徒会の耳にも届いていたらしい。
「一葉、嫌だったか……? 学校中で噂になっちゃって」
「嫌なわけないじゃない……っ! 私、嬉しくて、嬉しくて……一日中ずっと胸がドキドキしてたんだから!」
一葉は耐え切れなくなったように、俺の胸元へと飛び込んできた。
カチャリ、と背後でドアの鍵がかかる音が響く。
彼女は俺の制服の胸元をぎゅっと掴み、上目遣いに潤んだ瞳で見つめてくる。そこには『氷の女王』の面影などひとかけらもなく、ただ恋する一人の少女の甘い熱だけがあった。
「タカヒロくんが『一番大切な人』って言ったって聞いて……私、生徒会室で一人、顔が真っ赤になっちゃったのよ?」
「本当のことだろ。……もう隠す必要なんてないんだし」
俺がそう言って一葉の腰を優しく抱き寄せると、彼女は幸せそうに目を細め、俺の首筋へとすり寄ってきた。
「うん……! 私ね、もうすぐ始まる合同文化祭を、絶対に大成功させたいの」
「合同文化祭か。他校も巻き込んだ大きなイベントだな」
「ええ。そこでね……みんなの前で、私の世界一格好いい恋人を、思いっきり自慢しちゃうんだから!」
一葉はいたずらっぽい笑みを浮かべ、背伸びをすると、俺の唇へそっと小さなキスを落とした。
学園中から祝福される堂々たる恋人同士として、俺たちは最大のイベントである合同文化祭へ向かい、共に歩み始めるのだった。
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