第12話 通報
「うっ…さむっ…」
肌寒さを感じて恵一は目を覚ました。
スーパー〇〇〇人になったことにより、体の周囲に微弱なオーラを纏っていることによって「寒さに耐える」ことはできても、やはり「寒さを感じなく」するのは不可能である。
『北に向かって進んできたのは失敗だったか?』
早くも若干の後悔を感じた。
周囲を見回すと辺りはすっかり明るくなっている。
公園の時計を見るともうすぐで7時になるというところだった。
犬の散歩などで出歩いている人もちらほら見える。
こんなところで寝ているということに若干の恥ずかしさを感じた恵一は、すぐに出発するべく準備を始めた。
着こんだ服をリュックに詰めて身軽な服装になる。
そして公園の水道で顔を洗うと再び走り出した。
ちなみにここまで読んでいただいている読者の方には説明不要かもしれないが、一応説明しておこう。
恵一はスーパー〇〇〇人を自らの意思で解除しようとしない限り、その効果は永続される。
これはいわゆる「セ〇編」の時、某親子が修行によって会得した状態と同じである。
だから寝ている時も変身状態を維持できているわけだ。
恵一はしばらくスーパー〇〇〇人状態で生活し続けたことにより、力加減なども大分把握してきたので基本的には変身状態を解くことはない。
ただし、微妙な力加減を要求される場合は部分的に解除したりしながら、うまくバランスを取ってやっている。
しばらく走った所で〇ックが見えた。
丁度お腹もすいてきたところだったので入ることにする。
朝〇ックは恵一の大好物でもある。
だが、通勤途中に寄れる場所に〇ックがないことと、仕事の日は限界ギリギリまで寝ていたいという心理が相まって、朝〇ックは滅多に食べることが出来ないご馳走となっていた。
エッグ〇フィンを目の前にした恵一は思わず「じゅるり」と涎が垂れる。
そしてすごい勢いで貪るように食べると、一言小声で「うますぎる」と呟いた。
ご満悦になった恵一は再び北の方向へ向かって走り出す。
正確に北がどちらなのかはわからないが、道路の案内標識を見ながら「それっぽい」地名の方向に向かって走り続ける。
走り出してから数時間が経過し、太陽の位置から見るに大体お昼頃の時間帯になった。
さすがに疲れないとはいえ、走っているとやはりカロリー自体は結構消費しているのだろうか?
お腹がすいてきたので何かを食べることにした。
そこに丁度、町中華の店がある。
近隣にスーパーやコンビニなどもしばらくなさそうな雰囲気だ。
恵一はその店に入ることにした。
店に入ってみてもどこにでもあるような典型的な「ザ・町中華」といった店だ。
こういった雰囲気の店は嫌いじゃない。
お腹がペコペコの恵一は、とりあえずラーメンとチャーハンを注文することにした。
周りを見るとお客さんも数人入っている。
そしてテレビがついていてワイドショーが流れている。
しばらくするとラーメンとチャーハンが運ばれてきた。
オーソドックスな中華そばとチャーハンだ。
レンゲでラーメンのスープをすくって一口飲む。
『うんうん。こういうのでいいんだよ。』
奇をてらっていない、何とも懐かしい味が口いっぱいに広がる。
町中華からしか摂取できない栄養がある。
それを今恵一は存分に摂取していた。
そしてズルズルと麺をすすっていた時だった。
「ブフォッ!!」
恵一は勢いよく噴き出してしまった。
「――続いてのニュースです。先日、〇〇市で起きた殺人未遂事件で、警察は先ほど、逃走中の男の身元を特定、全国に指名手配しました」
女子アナの落ち着いた、しかし冷徹な声が店内に響く。
直後、画面いっぱいに、見覚えのある「自分の顔」が映し出された。
「指名手配されたのは、会社員、三谷恵一容疑者、40歳です」
それは、数年前の免許更新の時に撮った、自分でも忘れていたような冴えない顔写真だった。
ワイドショーの画面には、ご丁寧に「犯人の特徴」として、今の彼が着ているものと酷似した服装のイラストや、防犯カメラが捉えた「前傾姿勢で歩く不審な男」の粗い映像がリピートされている。
「近隣住民の話によりますと、容疑者は最近、周囲との交流がほとんどなく……」
画面は、警察が規制線を張った彼の家へと切り替わった。
見慣れたボロいドアの前に、群がる記者とカメラ。
「物静かな印象だった」「まさかあんな事件を起こすなんて」
近所の住人が、知ったような顔で自分の印象を語っている。
司会者の男が、険しい表情でパネルを叩く。
「被害者は今も意識不明の重体です。この容疑者、現在も逃走資金を持っている可能性があり、さらなる犯行の恐れもあります。
皆さん、この顔にピンときたらすぐに通報してください」
画面の下には、大きく『通報は110番、または〇〇警察署まで』というテロップ。
『ヤバイ、まさかこのタイミングで自分の事件が報じられるとは…しかも殺人未遂事件と話が大きくなっている…』
恵一は焦りまくった。
髪を切る前の写真とはいえ、テレビに映った写真ははっきりと自分だと認識可能だ。
しかもびっくりしてラーメンを噴き出してしまったことにより店員のおばちゃんに注目され、チラチラとこちらを見られている気がする。
『通報されるかもしれない…』
何気なく入った町中華で、恵一は絶体絶命の危機を迎えようとしていた。




