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朝起きたらスーパー〇〇〇人になっていた件について  作者: 如月


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第10話 突破

パトカーが徐々に迫ってきている。

このまま正面から道路を突っ切ろうとすれば確実に止められることになる。

かと言って強引に強行突破すればさらに面倒な事にもなりかねない。


ひとまず恵一はコンビニの裏手に回った。

そこには少し高いコンクリートのフェンスがあり、その奥はマンションかオフィスビルかわからないが建物が建っている。

フェンスは普通の人なら乗り越えるには結構な時間がかかりそうだが、恵一にとっては軽くジャンプするだけで飛び越えられそうだ。


迷わずにぴょんと簡単に飛び越えると、恵一の姿はコンビニ側からは完全に見えなくなった。

おそらくもうパトカーは到着している頃であろう。

ビルの横を走り抜けると、そのままビル正面の道を走り続ける。


さすがに警察もコンビニ裏手のフェンスを飛び越えて逃走することは想定していなかったのだろう。

幸いこちら側にパトカーや警官の姿はない。


恵一は無心で走り続けた。

駅の方向へ行くには警察の包囲網を突破しなくてはいけなくなるので、それとは逆方向に走った。

人間が出せるであろうギリギリくらいの速度で、極力不自然にならないようにひたすら走った。


少し走った所の交差点にパトカーが見える。

それを遠目で確認した恵一はそれを避けるように脇道に入り回避する。

そしてまた走る。


どうやら主要な交差点には警察が配備されているらしく、包囲網が敷かれているようだ。

だが幸いこの周辺は細い路地も多く、遠くにパトカーや警官の制服が見えたら脇道に入ってしまうだけで簡単に回避できた。


そして走る、走る、ひたすら走る。

恵一のこの行動は、偶然にも今後の逃走における大きなメリットをもたらすことになる。

そう、電車などの公共交通機関に頼らずともひたすら走って逃げれば良いのだ。


逃走資金が少ない恵一にとって、移動にかかる交通費はバカにならない。

しかも、駅などは監視カメラも多く、簡単に警察の追跡を許すことになる。

そもそも、今回はたまたまパトカーが迫ってくる方面の先に駅があったので逆に逃げることになったが、現時点で最寄り駅には私服捜査員が配置されており、スマホを見るふりをしながら、改札を通る人間の顔を一人ひとり、最新の手配写真と照合していた。

とっさのことで恵一はここまでのことを考えていたわけではなかったが、逃亡犯が電車で逃げることは悪手なのだ。


その点、走って逃げるのは最も合理的だ。

公共交通機関のように警察の包囲網に引っ掛かる心配も少ない上に、車やバイクでの逃走のようにNシステムに引っ掛かる心配もない。


人間が走っていて不自然にならない速度と言えば、おおよそ時速20~30kmくらいだろう。

大体自転車と同じくらいのスピードだ。

時速20㎞とした場合でもフルマラソンを2時間そこそこで走れる計算になる。

いわゆる世界トップクラスのランナーレベルの走りと言えるが、一般人でも瞬間的にはもっと速度が出るので、傍から見ても「結構な速度で走ってる人がいるな」くらいの印象しか持たれない。

その上、スーパー〇〇〇人である恵一は、その程度の速度で走る分には何時間走り続けたとしても疲れることはない。

仮に時速30㎞で走り続けた場合、1時間で30㎞。3時間で90㎞。10時間も走れば300㎞も進めることになるので、警察の包囲圏内からいとも簡単に脱出することが出来るのだ。


恵一は走った。ひたすら走った。

もう2時間くらい走っただろうか?

だいぶ郊外まできたのか、辺りはのどかな景色になっている。

若干吹っ切れてきているのか景色を楽しむ余裕すらある。


しかし疲労感は全く感じないが喉は乾く。

そういや逃げるのに必死で忘れていたが朝から何も食べていない。

ということで、ちょうど目に留まったスーパーマーケットに入ることにした。


お弁当と飲み物を手に取りレジで会計を済ませると、そのスーパーにはイートインスペースみたいなのがあり、電子レンジなども備え付けられていたのでそこで食べていくことにした。


なぜ恵一はスーパーに入ったのか?

それにはちゃんとした理由がある。


もしすでにニュースなどで顔が公開されていた場合、飲食店で悠長に食べていたら通報されるかもしれないというリスクを考えたので、飲食店は真っ先に除外された。

ではコンビニではなくなぜスーパーなのか?


まず第1の理由はシンプルにコンビニよりも先にスーパーが見えたこと。


そして第2に逃走資金が乏しいのでコンビニよりも割安感のあるスーパーをコスパの面で選択したということ。


そして、もしかしたら第3番目が一番大きな理由かもしれない。

先ほど警察に追いかけられたことにより、コンビニに入るのが少し怖くなっていた。

前回もコンビニのコーヒーマシンを破壊して警察とトラブルになっている。

今回で2度目なわけだ。

そう、恵一にとってコンビニが軽くトラウマになってしまったのだ。


警察に追われるストレスというのは半端じゃない。

昔、恵一は原付にノーヘルで乗っていてパトカーに追いかけられたことがあった。

その時は上手く撒けたのだが、その夜は心臓がバクバクして寝られなかったほどだ。

そのくらい恵一はチキンハート。

「スーパーチキン人」なのだ。


1人でお弁当をむしゃむしゃと食べる恵一。

スマホでニュースなどを確認したいが、電源を入れたら追跡される可能性もある。

せっかく警察の包囲圏内から脱出できたかもしれないのに、それは絶対にやってはいけないと今の冷静な恵一なら判断できる。


『これからどうしようかな。』

『どこへ向かおう。』

『というか今夜はどこに泊まったらいいんだろう…』


そんなことを考えながら途方に暮れる恵一だった。

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