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「え、いつの間に扉…」
「アマリリスさんが考え込んでいる間に、ですね」
「そう、なの。これはどこに繋がっているの…?」
地獄へ誘う扉ではないかと、ふと考えてしまい、恐る恐る質問する。
「っふ、安心してください。アルスの記憶を移動するだけですよ」
扉を開けて潜り抜ける。質問攻めにしたい気持ちはあったが、精神的な疲労もあり、黙ってついていくことにした。
目の前に現れたのは、少し成長したアルスだった。
「なあ、ケイミー」
「なぁに〜」
「あいつら、今日こそ上手くいくかな?」
「どうだろ〜。二人ともモジモジして進まないからな〜」
話し終えると、二人はニヤニヤと顔を見合わせている。
「誰の話をしているのかしら?」
「……わたしはこの記憶をすでに、一度視ています」
「そうなの?じゃあこれは誰の話なの?」
「最初に言っておくと、ベラさんとレイさんです」
「あら、あの二人そんな関係になったの?」
二人は何も知らず、楽しそうに笑っていた。
その姿が、あまりにも無邪気で。
「お似合いね」
アマリリスの声に、シェイラは答えなかった。
やや引っかかりはあったが、二人が部屋から出たため、追いかける。
いくらか歩くと、探していた人物を見つけた。
「アマリリスさん、ここからは視るなら覚悟を」
「どういうこと?」
「ここから先は、人が死にます」
「え、それって……」
それが誰なのか、なぜなのか。問いを口にする前に、事態は動き出していた。
「あ、いたいた。ベラ姉〜!」
「ほんとだ。ベラー、今日こそモジモジせず──」
「二人とも!逃げなさいっ!!」
その声は、必死そのものだった。
遮られて見えなかった二人の姿が、はっきりと見える。
そこには、隠しているはずのサードアイを晒し、傷だらけの身体で立つベラがいた。
レイも片腕を失い、血を滴らせながら、ただ彼女を守るように前へ立っている。
「え、ベラ姉……?なに、それ……」
ケイミーが、やっとの思いで言葉を絞り出す。
アルスは、ただ立ち尽くしていた。
「みつけた」
突然、底冷えするような声が地を這う。
姿は見えない。だがこれは──人ではない。直感でわかった。
二人とも硬直していたが、ケイミーが一歩、前へ出ようとする。
「──っ!ベラ姉!!」
「来るなっ!馬鹿ガキ」
レイが叫ぶと、ベラはこちらを見つめ、静かに微笑んだ。
「生き延びて。大好きよ。あとは頼んだわよ」
「ベラね──」
後ろから口を塞いだのはアルスだった。無理矢理に身体を引き、走り出す。
「助けなきゃ!離してよ!アルス!!離し──」
「俺だって助けたいっ!!でも、あれは無理だ!」
「そんな……嫌よ、嫌、嫌……」
声を震わせながらも、足は止まらない。
用意などしている暇はない。とにかく、少しでも遠くへ行かなければならなかった。
「ねえ、助けられないの……」
二人を追いながら、アマリリスがぽつりと呟く。
「記憶に、干渉はできません。過去は変えられないんです……」
「あの二人はどうなったの」
「二人とも、あれに殺されてしまいました」
「そんな……あれは何者なの!?」
「わたしにも、はっきりとはわかりません」
初めて聞く「わからない」という言葉だった。
その瞬間、背後の空間が、わずかに歪んだ。振り返ってはいけないと、本能が告げる。
「どこへ行く」




