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悪夢の魔女と死んだ恋  作者: かなゑ
始まりの始まり

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23/28

23

ベラは静かに、ベッドのそばに置かれていた椅子へ腰掛けた。

周囲を一度見回してから、ゆっくりとウィンプルを外す。


「お前、それ……!」


驚きの声の先にあったものは、首にあるはずのない“目”だった。

透き通るような藍色で、見つめていると胸の奥を撫でられるような、落ち着かない感覚に陥る。


「気持ち悪いですよね。すみません」

「いや……驚きはしたが、気持ち悪くはない。純粋な疑問なんだが、その目はなんなんだ?」


ベラは小さく息を吸い、言葉を選ぶようにして口を開いた。


「これは……視えないものが視える目です。わたしの場合は、人の思考や嘘などがわかります」

「な、なるほど。だが、それがさっきの話とどう関係するんだ?」


会話は淡々と進んでいるが、アマリリスはまたしても卒倒しそうになっていた。


「この目は、人の精神や身体に干渉することができます。たとえば、特定の記憶や行動に鍵をかける、というようなことが可能です」

「それは…忘れさせる、ということか?」

「いえ。忘れはしません。ただ、人の認識に制限をかけるだけです。覚えているのに、思い出せない…そんな状態になります」


その時、これまで黙っていたシェイラが小さく呟いた。


「なるほど……そういうことだったのね。あなた、だったのね。ベラさん」


シェイラの中で、点と点が一本の線に繋がった。


一方でレイは、なぜそこまでの秘密を自分に明かすのか理解できずにいた。

あの二人がそれほど大切なら、問答無用で精神に制限をかけてもよかったはずだ。


「あなたの考え、もっともです」

「……えっ」

「視えてしまうので。すみません」

「あ、そうか……そうだったな。なんだか、恥ずかしいな」

「やっぱり、いい人ですね。あの二人が、笑顔で話して、名前まで名乗るわけです」

「そうか?普通だと思うが……褒められるのは嬉しいな」


ベラの言う通り、人の良さが滲み出るような笑顔だった。


「私以外に、あんな二人は初めて見ました。これから関わることはないかもしれませんが……あなたには、この力を使いたくないと思ったんです」


その言葉は真っ直ぐで、偽りはなかった。

ベラは答えを急かさず、ただ静かに待つ。


「ありがとう。嬉しいよ。でも……これから関わることはないかも、って言われるのは少し寂しいな」

「え……でもレイさんは、首都配属の騎士様なんじゃ……」

「あはは。騎士だって、バレてたか。まあ隠してないからいいんだが。その通りだ。ただ、当分はこの領地に滞在することになりそうでな」

「──そう、なんですね」


ベラは嬉しそうに微笑んだが、同時に戸惑いも浮かべていた。


「ねえ。ここは、何年なの?」


アマリリスがふと口にした。


「1867年です」

「……ここは、もしかしてシュテルストブルク?」

「はい」


1867年のシュテルストブルクは、隣国ノイフェーゲルとの戦争の最前線だった。

レイは、王都から援軍として派遣された騎士である。


「行きましょうか」


シェイラの方を見ると、そこにはすでに扉が現れていた。

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