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悪夢の魔女は星を宿す  作者: かなゑ
始まり

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「アマリリスさんの気持ちは変わらないと思いますが、ひとつだけ」

「なにかしら」

「死者に逢えるのは一度きりです。ラグトさんを選べば、他の誰にも逢えません」

「構わないわ。最初から、ラグトしか選ばないもの」


言葉は迷いなく落ちた。

シェイラは視線を落とし、手を擦り合わせた。乾燥してひびの入った指を見つめる。その先に、差し出された手があった。アマリリスは一度だけ、ネックレスを握り直した。


「覚悟はできているわ。あなたを信じて渡す」


掌に置かれたネックレスが、静かに光を返す。澄んだ赤が、彼女の瞳と重なった。


「……綺麗ですね」

「えぇ、人生で一番の贈り物よ」


綺麗という一言で、アマリリスの目尻が下がる。

シェイラはネックレスを包むように受け取った。まるで、壊れ物に触れるような手つきだった。

立ち上がり、扉へ向かう。短く促し、外へ出る。肌にあたる光が、心地よく感じられた。


「イーサン、頼みます」

「僕ってば天才だからね〜ここは任せて」

「アルス、行きますよ」

「あぁ、やるぞ」


やる気に満ちたアルス。その様子がかえって不安を煽った。


「あははっ、顔に出てるよ。不安そうだね〜」

「あぁ…そうですよね」

「…大丈夫よね?」


三人の視線が、アルスへ向いた。


「おい、それどういう意味だ…シェイラも“そうですね”じゃねぇよ!」

「役に立つ馬鹿ですから」

「否定はしないね」

「シェイラさん?誰が馬鹿だって?」


詰め寄るアルスを一瞥もせず、シェイラは何かを軽くアルスの手へ落とした。


「これは預けます。下手に扱ったら、殴ります」

「…わかってるよ」


渡された物を、ガーデニングポーチへ入れる。そこには、見覚えのないハサミがあった。カシメ部分には青い石が埋め込まれている。思わず視線が吸い寄せられた。


「始めても?」

「──えぇ」


一呼吸の静寂のあと、ネックレスが掲げられ、場の空気が一変した。


「イーサン」


イーサンへ顔を向けた瞬間、庭の光が掻き消えた。

足元も見えない闇が広がり、アマリリスは息を呑む。

目の前で、光が灯る。


「リコレッド・リトルノ」


次の瞬間、世界は花で満たされた。


「主アマリリス、此れを以て過ぎし世界を視ることを是とするか」

「もちろん」


(ついに、始まるのね……)


視界の中にシェイラが現れる。強い眼差しで、アマリリスをまっすぐ見つめていた。


「見つけてみせます──エフネ・プレテリト」

「お願い」

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