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二人が手伝っているのなら、施療院にいる他の孤児たちも同様に関わっているのだろう。アマリリスはそう考えた。しかし予想に反して、それらしい姿はどこにも見当たらなかった。
「あの二人以外の子どもは、手伝っていないのかしら。姿が見えないけど」
「ここは一応、治療の場ですからね。手伝える人間は限られます。特に子どもは」
そう言いながら、シェイラはまるで行き先を知っているかのような足取りで、迷いなく歩いていく。ある部屋の前でふいに立ち止まり、地面を見つめたまま動かなくなった。どうしたのかと声をかけようとした、その瞬間、顔を上げて部屋の中へ足を踏み入れる。
「動かないで。あんた、死にたいの。家族に会いたいんでしょ。三分でいい、静かにしてて」
「三分もいらねぇだろ。さっさとやろうぜ」
聞き覚えのある、子どもの声。続いて、処置台の上から男の悲鳴が上がる。視線を向けて、アマリリスは息を呑んだ。折れた足の骨が、皮膚を突き破って露出している。
「……っ!あれは、子どもに看させるものじゃないでしょう。どうして誰も止めないのよ」
「大丈夫ですよ。施療院の大人も、そこまで愚かではありません」
アマリリスの訴えを、シェイラは静かに遮る。
「言いましたよね。手伝える人間は限られると」
とりあえず黙って見ろということなのだろう。
そんな彼女をよそに、処置台の傍でケイミーが患部をじっと観察し、淡々と言い放った。
「あらら、こっちも折れちゃってるじゃない。そりゃ痛いはずよ。まあ、すぐ終わるからじっとしてなさい」
見ただけで、そこまで分かるのか。アマリリスはまた疑念を抱いたが、どうせ騒いでも声は届かない。黙って様子を見守ることにした。
すると、横で傍観していたアルスが動き出し、ケイミーの前へ回り込む。二人は同時に、何かを取り出して顔に装着した。
「……ゴーグル?それに、アイマスク?」
アルスは金属製の大きなゴーグル。ケイミーは、目の部分が塞がれた、透明な石のような素材でできたアイマスクを着けている。背中合わせになると、ケイミーはアルスにもたれかかり、低く告げた。
「アルス。失敗したら承知しないわよ」
「寝言は寝て言えよ。俺を誰の弟だと思ってんだよ」
小さく笑う声に、覚悟と自信が滲んでいた。




