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悪夢の魔女は星を宿す  作者: かなゑ
始まり

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「アマリリスさん、すみません。先ほどの質問には、今はお答えできません。……ですが、そう遠くない日に必ず」


相変わらず淡々とした口調だった。それでも、その言葉には誠意が滲んでいる。

返事をしようとして、アマリリスは気づく。

口が開かない。


(ちょっと! そこの馬鹿っ! 口をどうにかしなさいよ!)


身振り手振りで訴えるアマリリスを、イーサンはニコニコと眺めているだけだった。異変に気づいたシェイラが顔を上げる。

事情を察したのか、ふっと微笑んだ。その笑みのままイーサンへ視線を向ける。

次の瞬間、底冷えするような殺気が滲んだ。


「イーサン?」

「シ、シェイラちゃん、なに?」

「今すぐ解きなさい。さもないと──」

「わ、わかった! ごめんなさいっ!」

「わかってくれれば良いんです」


殺気は消え、シェイラは何事もなかったかのように笑っていた。

一方イーサンは、首根っこを掴まれた子猫のように大人しくなっている。


「アマリリスさん、もう大丈夫だと思いますよ」

「─ぁ、あ。本当に戻ったわ」

「どこかの馬鹿がすみませんでした」

「別に僕は悪くな─」

「イーサン、うるさいですよ」

「はい、すみません」


(……彼女に喧嘩は売らない方が賢明ね)


アマリリスは心の中でそう呟き、静かに誓う。

この魔女とは敵対しない方がいい。


「シェイラさん、さっきの話だけど」

「えぇ」

「偽りはないのよね」

「もちろんです」


魔法契約を結んだ以上、シェイラは嘘をつけない。

けれどそれがなくとも、アマリリスは彼女を信じただろう。

あの質問をしたときの表情を、確かに見たからだ。


「わかったわ。待ってあげる。でも、わたし気は長くないから」

「はい、覚えておきます」


アマリリスは肩をすくめる。


「それじゃあ気を取り直して、あの意地汚い男の話に戻りましょう」


毒のある言葉を軽く投げながら、イーサンへ視線を向けた。


「それで話を戻すけれど。さっきのお伽話と黒髪、どう関係があるのかしら」

「まず、五つの属性の妖精がいるとお伝えしましたよね」

「えぇ。花、火、影、風、水だったわよね?」

「その通りです。その中の影の妖精が、イーサンと加護契約を結んでいるんです」


アマリリスの視線が、即座にイーサンへ向く。

まさかこいつが、と顔が物語っていた。

イーサンはむっとする。

その表情のまま、アマリリスはシェイラへ視線を戻した。


「アマリリスさん、お気持ちはわかります。ですが本当なんです」

「あなたが言うなら本当なんでしょうね。でも……信じられないわ」

「はい〜? なんで君にそんなこと言われなきゃいけないのかな?」

「その気持ちもわかります。しかし事実なので、一旦飲み込んでください」

「シェイラちゃんまで!? 酷いよ! 僕ほんとに泣くよ!?」

「わかったわ。不服だけど、飲み込みましょう」


騒ぎ続けるイーサンの口へ、シェイラはクッキーを放り込んだ。

もそもそと文句を言いながらも、とりあえず静かになる。


「どの妖精と契約するか。それがとても重要なんです。妖精と一括りにされていますが、同じ呼び名でも性質は違います」

「教えてほしいんだけど、どう違うの? 想像がつかないわ」

「わたしは花の妖精と契約しています。人格や身体に影響はありません。ですが、イーサンは違います」


そこで、アマリリスは気づいてしまった。


「もしかして、それが黒髪と関係しているの?」

「さすがですね。影の妖精の力は、花の妖精とは別の意味で強力です。もしわたしが契約していたら…喰われていたかもしれません」

「えっ」


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