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答えを聞いたシェイラは、静かに笑みを浮かべた。その表情に喜びはなく、拒絶もない。ただ、決定を告げる前触れのような静けさがあった。
掌を目の高さへと持ち上げると、そこへ光の粒が集まってくる。その光に向かって、そっと息を吹きかけた。粒は形を持ち、やがてシェイラと彼女を囲うように、淡い輪を描く。
「契約を、しませんか」
「……契約?」
「わたしが、ラグトさんに逢わせて差し上げます」
「う、嘘よ」
「嘘ではありません。魔法契約と言えば、信用に足るのでは?」
「っ──あなた、正気なの……」
魔法契約。それは魔法使いにとっては、絶対の拘束を持つ誓約だ。契約を違えれば、命を以って代償とする。その名を口にする以上、軽率な虚言は成り立たない。魔法使いの数は少なく、彼らは多くを秘して生きている。だが、魔法契約の重さだけは、一般の人間ですら知っていて当然の知識だった。
「契約しますか」
(本当に?本当に、信じていいの?知らない女。それでも…他に、方法はない)
逡巡の末、絞り出されるように声が落ちた。
「…契約、するわ」
それが最善だったのか、彼女自身にもまだわからない。それでも、口にした答えを引き下げる気配はなかった。
「承りました」




