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シェイラの左手の先。ガラスドームの中に、彼女の探し人が小さな姿で現れていた。
ラグトと呼ばれたその存在は、言葉を発することもなく、ただ静かに彼女へと視線を向けている。呼ぶでもなく、応えるでもない。ただそこに佇み、見つめ返していた。
「ラグト!ラグト!」
彼女は衝動のまま小さなラグトへと詰め寄り、シェイラの手をガラスドームから引き剥がす。その瞬間、そこにあったはずの姿は、霧が散るように消え失せた。ドームの中には、何事もなかったかのように、もとの花だけが残されている。
「……どうして?」
「先ほどのラグトさんは、想いから創り出した姿です」
「あなたが…やったの…?」
「はい。その通りです。それでは、わたしの質問に答えていただけますか」
「一体、なにを」
「ラグトさんに、逢いたいですか?」
「はっ?馬鹿にしてるの?」
「逢いたいですか」
先ほどまでの温和な態度は影を潜め、淡々とした声だけが落とされる。感情を交えず、ただ答えだけを求める声音だった。胸の奥が締め付けられ、息が詰まりそうになる。だが、問いへの答えは、最初から決まっていた。
「…えぇ、逢いたいわ。」




