ベッドの上で
すぐに救護室で治療を受けた真人は怪我も綺麗に治り、すぐに朋美のいる部屋へ飛んで行った。
「トモさんの具合はどうですか?」
医療班の人が朋美の治療をしている。
「恐らく魔力切れだと思うのですがこんなに目を覚まさないのは初めてです。体の治療の方はしておきましたのでそちらは大丈夫だと思いますよ。」
それを聞いて真人は安心した。
「トモさん早く目を覚まして下さい。」
椅子に座り朋美の手を取る。
それを扉の外から見ていたロドリゴたちは、今はそっとしておこうと扉を閉めた。
誰かが呼んでいる気がする。
「朋美、朋美。」
「お父さん!」
朋美は走って行く。
「お父さん!」
父親の手を握る。
「朋美、今日はお母さんにお花を持って行こうね。」
「うん、お母さんの好きなひまわりだね。」
父親の手を握る朋美は幼い。橋の上に来て手を合わせる。朋美もそれをまねする。
「お母さんはここから違う世界に行ったんだよね。」
「そうだよ、きっとお父さんも朋美もずーっと大きくなったら行けるんだよ。」
「お母さんそれまで待っててくれるかな?」
「お母さんは朋美の事が大好きだったからきっと待っていてくれるよ。」
「本当!?」
「ああ。でもきっとお父さんの方が先に会いに行くから、朋美は後からゆっくりおいで。」
「え~。」
父親は朋美を抱えて欄干へ座らせる。
「はい、お母さんに届くようにね。」
「うん、お母さんのところへとーどけ。」
そう言って朋美は川に向かってひまわりを投げる。ひまわりの花は川に着水し、そのまま川下へ流れていった。
父親は朋美を抱え上げ橋の上へ下ろす。そして手をつないで歩き出す。
「お父さん・・・」
朋美は目を覚ました。見慣れぬ天井がある。
「お父さん・・・ここ・・・どこ?」
真人が握っている手を握り返す。
「トモさん・・・」
ハッと我に返る。
「あれ、私どうしたんだっけ・・・」
「トモさんすみません。もしあのままトモさんが死んでしまったら自分は・・・自分は・・・」
ぽろぽろと涙を流す真人を見て、自分の身に何が起こっていたのかを思い出した。
「ああそうだった・・・よかった、真人の首輪が外れて。」
「そんな事はどうでもいいんです!トモさんの方が大事です!」
しっかりと両手で朋美の手を握る真人を見ながら朋美は幸せを感じていた。
「真人・・・あのね、私・・・」
その時扉が開いた。
「ああ、やっと目を覚ましたのですね。よかったです。少し診察しましょう。」
医療班の女性が入ってきた。
「起き上がらなくていいですよ、まだ無理でしょう。貴方は少し外に出ていてもらえませんか。」
言われてそのまま真人は部屋の外に出て行った。
「寝たままでいいです。まず脈を取りますね。」
外に出た真人は複雑な気持ちだった。
「トモさんまだお父さんの事・・・そうだよな。だから貴族の養子になんてなるはずないんだから。」
それでも命がけで自分を助けてくれた。出来ればその恩を返したい。きっとあっちに帰ることを手伝う事で恩を返すことが出来るのだろう。でも帰ることが出来ないということを伝えられない。握った右手に力が入る。
「どうすればいいんだ・・・」
「あの・・・私はどのくらい眠っていたのですか?」
「そうですね、ここに運び込まれて8時間くらいですね。普通の人なら魔力切れを起こしても1時間くらいで目を覚ますのですが、魔力量が多いのでしょうね。あんまり起きないので皆さん心配していましたよ。特に先ほどの男の方は食事のとらずにずっと側についていましたね。」
「そうですか。」
「食欲はありますか?何か持って来ましょうね。よかったら一緒に食べてあげて下さい。」
「はい、有難うございます。よろしくお願いします。」
そう言って女性は部屋を出て、外で待っている真人に中へ入るように声をかけた。
「これから食事を持ってきてくれるって。」
「そうですか。」
「真人の分も持ってくるってよ。食べていないのでしょう?」
「・・・そうですね。」
「あれからどうなったの?」
真人は簡単に説明した。
「王様が見に来てたの?それってまずかったんじゃないの?」
「それで今後の事を話したいと言われました。時間を取って欲しいそうです。」
「絶対に行かなきゃダメかしら。」
「これだけ事が大きくなったのですからね。それにここも国の施設の中ですし。」
「そうね。真人はどうするの?王室警備隊に入隊するの?」
「いえ、そのつもりはありません。トモさんと一緒にあっちに帰る方法を探しますよ。」
「帰る方法ね。」
朋美はそのまま黙ってしまった。
頂いた食事が終わったころ、マリウスがやってきた。
「体調はどうだい?大変な目にあったね。気づくのが遅くなって申し訳なかったね。」
「いえ、とんでもないです。まさかあんなことになるなんて思ってもいなかったし。」
「しかし全属性が使えるとなると、国の機関に所属してもらいたいところなのだがね。」
「それは強制ですか?」
「いや、その事については陛下から直接お話があるそうだ。体調が戻り次第時間を取って欲しいと伝えてくれと上から言われている。」
「そうですか。それは私だけですか?」
「いや、2人に話があるそうだ。当然マサトも一緒だ。」
朋美は少しホッとした。その顔を見た真人も安心した。
「では明日よろしくお願いします。」
「無理はしなくてもいいんだよ。」
「いえ、少しでも早くお会いしたいです。」
「そうか。では明日また来るよ。それでもし体調が悪かったら言ってくれ。」
そう言ってマリウスは部屋を出て行った。
「真人、私帰ったらリルーディさんのところに行きたいの。あの話をちゃんと聞きたいわ。どうしても確かめたいことがあるの。」
「確かめたいことですか?」
「ええ。実は私、日本からこっちへ来た子供に会ったの。」
「え!?日本から来た子供にですか?」
「そうなの。にわかには信じられない話を聞いたの。だからどうしてもリルーディさんの話を聞きたいの。」
「・・・そうですか。わかりました。シェスナに帰ったら会いに行きましょう。それじゃあ今日はゆっくり休んで下さい。自分も念の為にこの施設に泊まるように言われていますから。」
「そうなの?それじゃあお休みなさい。また明日ね。」
「日本から来た子供?そんな話聞いたことないな。マリウスさんに聞いてみよう。」
真人も自分に与えられた部屋へ戻って行った。
「子供の渡り人?記録にはなかったな。報告漏れかな。」
真人の部屋でマリウスが首をかしげる。
「後で調べてみよう。それではトモーミのところに行ってみようか。」
2人で朋美の部屋へ向かった。
「トモさん入ってもいいですか?」
「どうぞー。」
2人は中へ入った。
「具合はどうですか?」
「うん、随分と良くなったわ。」
「それはよかった。では本日の謁見は大丈夫だね。」
「はい、宜しくお願いします。」
「それでは私はさっきの事を調べてきますね。」
「はい、宜しくお願いします。」
マリウスはすぐに部屋を出て行った。
「さっきの事って?」
「トモさんが昨日言ってた子供の事ですよ。」
「ああ、多分記録はないと思うわ。」
「え?どうしてですか?」
「その子、以前いなくなった子どもと間違われているから。」
「どういうことですか?」
「んー、詳しくはリルーディさんの話を聞かないと言えないわ。」
「そうですか。それじゃあそうしましょう。」
「真人は興味ないの?」
「トモさんが今話したくないのなら無理に聞く必要はないでしょう?」
「相変わらず優しいのね。」
「本当に謁見は今日で大丈夫ですか?」
こくりと頷く。
「それじゃあ自分は部屋に戻りますね。何でも謁見用に服を準備すると言われているので着替えないといけないんです。」
「そういえば私も着替えをと言われたわ。やっぱりこんな格好じゃまずいわよね。」
昨日の服はあちこちに汚れがついて破れているところもある。治療用に服を着替えされられていたが、ネグリジェのような服だ。
「そうですね。流石にそれはまずいと思いますよ。」
上着を羽織っているのでそうでもないが、真人は内心ドキドキしていた。一緒に住んでいる時も部屋から着替えて出てくるのでこんな姿の朋美は見たことがないのだ。
「後で迎えに来ますね。」
そう言って少し赤くなる顔を隠しながら部屋を出て行った。




