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こっちで元気にやってます  作者: 楠 螢
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コロシアムでの戦闘

観客席のみんなが闘技場に注目している。係の者が入口の片方をあけ、そこから闘気を漲らせ真人が出てきた。まっすぐともう一つの入り口を見て、その後観客席へと視線を移す。そしてフランチェの横に座っている朋美を見つけた。

朋美は綺麗なドレスを身に纏い、髪も綺麗にセットされている。

「まさか・・・そんなはずは・・・」

「それでは開始します。」

その声で大きく頭を振る。前の扉が開き、レオンが現れた。立派な鬣に長い尻尾を持った巨大なライオンの魔物だ。大きさは3m位あるのだろうか。尻尾も2m以上はありそうだ。ゆっくりと尻尾を鞭のように地面にたたきつけながら歩いてくる。よく見ると額に黒い魔石が見える。

レオンは大きくあくびをしたかと思うと、いきなり真人に向かって火を吐いた。急いで足を強化し避ける。

「黒い魔石は魔力を作り出すことが出来る・・・でしたっけ。」

魔物の特性が分からないので、少しずつ仕掛けてみようと全身を強化し始めた。


「これはどういう事なんですか!?」

「どうって、マサトの入隊試験だよ。貴族でないものが入隊試験を受けるとなると普通の試験に合格した位じゃ拍が付かないからね。」

「真人は警備隊に入るなんて言わなかったはずです。私と真人を引き離したのはこの為だったんですね!今すぐ止めさせて下さい!」

朋美は激怒しフランチェに食って掛かった。

「止めさせてもいいが、条件がある。」

「条件ですか!?」

「そうだ。君が私の養子になることだ。」

「初めからこれが狙いだったんですね!」

朋美は席を立ち、観客席の一番前へ降りて行った。

「真人、巻き込んでごめんなさい・・・」

必死に戦う真人を目で追い涙ぐむ。


真人はレオンに近づき蹴りや打撃を与えよとするが、大きな体の割にすばしっこいレオンに簡単にかわされる。レオンは真人を餌と認識しているのか、ネズミで遊ぶ猫のように相手をする。真人も実力差を感じてはいるが、勝たなければ死が待っているという事がわかっているので必死に攻める。


「あれはどのクラスの魔物だ?」

「はい、まだ若い個体ようですが警備隊の者が5人がかりで退治するような相手です。それを1人でとなるとかなり無理があります。冒険者でもゴールド3人くらいでしょう。」

「ほう、冒険者というのはそんなに強いのか?」

「そうですね、ただ冒険者は魔物討伐がメインですので戦い慣れていますから。我々警備隊や親衛隊は対人を中心に訓練しておりますので。」

あくまで戦う相手が違うという事だ。

「あの冒険者はブロンズだと言ったな?それなのにあんな強い魔物と闘わせて、フランチェ一体何を考えているのだ?」

「ドミニゴ隊長、マサトは渡り人です。それにフランチェの隣にいた娘も渡り人です。」

「なるほど、そういう事か。」

ロドリゴの言葉で2人は納得した。

「あいつは欲が深いからな。」


真人はまだ1発も当てられずに焦っていた。今のところレオンが使う魔法は火だけのようだが、まだ隠し持っている可能性がある。慎重に距離を取りながらレオンの後ろに回り込もうとする。レオンは余裕の表情でゴロゴロと喉を鳴らし尻尾をうねらせ真人の様子を伺っている。

ダダダ・・・一気に走ってレオンの後ろに回り込む。レオンは待っていたかのように尻尾を使って真人を掴んだ。

シュルル・・・あっという間に尻尾で真人を掴み、持ち上げて締め上げる。

真人は体をくねらせ必死に脱出を試みるが、かなりの力で締め付けられているのか尻尾が緩むことがない。

「くっ・・・」

更にレオンは尻尾を上下左右に振りまわす。何とかしてこの尻尾から逃れなければと真人は思いっきりレオンの尻尾に噛みついた。

「グルル!」

流石に痛かったのか、レオンは真人を壁に向かって叩きつけた。

「ガハッ!」

強化しているとはいえ思いっきり背中から壁にぶつかった真人は一瞬呼吸が止まる。

「ハーハーハー」

急いで息を吸い、レオンの隙を伺う。しかし噛みつかれて怒ったのか、先ほどと表情が違う。確実に餌を仕留めるべく、じわりじわりと真人に向かって歩いてくる。


「真人を援護しなきゃ!」

朋美は急いで観客席を走り真人の近くまで行き魔法を繰り出す。

「えい!」

レオンに向かって雷を落とそうとするが、魔法は発動しない。

「え?」

何度もレオンに向かって手を振るが、魔法が発動する気配すらない。

「何故?どうして?」

そして魔法を出そうとした時にブレスレットの宝石が光ったのに気が付いた。

「このブレスレット・・・」

振り返ってフランチェを見る。フランチェはニヤニヤしながら朋美を見ている。

やられた!と朋美は思った。眷属の首輪を意識し過ぎていたのだ。魔法が使えなければ朋美は一般人と何ら変わりがない。ならば剣でとおもい収納から取り出そうとするが、ブレスレットのせいで収納から物を取り出すことも出来ない。

「こんなもの!」

ブレスレットを外そうとするが、シルビアが『外れないように』しっかりと留めているのでどんなに頑張っても取れなかった。

気が付けばフランチェが隣に来ていた。

「それは『魔封じの腕輪』というものだよ。それをつければ魔法は一切使えなくなる。その魔石が使った魔力をすべて吸収するからね。」

先ほどから光っていたのは朋美の魔力を吸っていたからだ。

「どうだい?養子になる気になったかな?」

「どうしてこんなことまでして私を養子にしようとするのですか?」

「この国では親の言う事は聞かなければならないのだよ。私の養子になれば君は私の言う事を聞かなければならないようになるからね。」

「つまり言う事を聞かせるために養子にするってことですか?」

「ある程度はね。渡り人を自分の傘下に収めるという事はこの国ではある程度の力を手に入れたことになるからね。今回は2人も渡り人がいる。しかも君を押さえておけば必然的にもう1人が手に入るからね。」

自分の魔力の高さが目をつけられる原因になったのだ。

「さあどうする?マサトを助けられるのは君だけだよ。」

悔しいがその通りだ。でもこんな人に屈したくない。

「あなたなんかの養子になるくらいなら真人と一緒に戦うわ。」

朋美は全身全霊を込めてブレスレットに魔力を流した。魔石が激しい輝きを放つ。

チチチ・・・バリン!

朋美の魔力に耐え切れず、ブレスレットの魔石は粉々に砕け散った。

「バカな!」

体内に魔力の流れが戻ってきたのを感じた朋美はレオンに向かって雷を放った。



レオンの死角は完全に尻尾に補われている。尻尾が届きづらい所をと決死の覚悟でレオンの腹の下に潜り込んだ。しかしレオンはひょいと飛び跳ねて真人を懐には入れない。

「あれで逃げるという事は、やはり腹部は弱いんだな。だけど高すぎて手が届かないな。」

真人が攻め込んできたのが気に入らなかったのか、レオンは真人に向かって激しい炎を吐いた。それを転がりながら避けていく。


「凄いな、あいつ。俺たちでも手を焼くのに1人であんなに攻め込むなんて。」

「でも1発も当たってないぞ。大した事ないんじゃないか。」

警備隊の隊員は好き放題に言っている。

実際レオンを前にしたら警備隊員でも1人では足がすくむものだ。それを勇敢に立ち向かっていく真人を褒めるものは少ない。

そんな言葉を聞いてモニエーラが怒っている。

「あいつらあんなこと言ってるわ。」

「言わせておけよ。実際自分たちもマサトの強さを知らないからな。ここはじっくり見学させてもらおう。首輪の効果もあるが、あそこに立っているだけでも凄いことだしな。」

レオンは威圧も持っているので弱いものは足がすくんで立っていることすら出来ない。そんな相手に果敢に向かっていく真人。2人は心の中で精いっぱい真人を応援していた。

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