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こっちで元気にやってます  作者: 楠 螢
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動き出した陰謀

腕が動かない?どうしたんだろう。馬車に乗って椅子に座ったはずだけど、何か硬い物の上にいるようだ。いつの間にか寝てしまっていたのか?

「マサト、マサト!」

誰かが大きな声で呼んでいる。

「マサト!」

「う・・・」

目を開いた前には鉄格子がある。

「目が覚めたか、マサト!」

鉄格子の向こうにもう1つ鉄格子があり、そっちにアリドメッドとモニエーラがいる。

「2人ともどうしたんですか!?」

駆け寄ろうとして何かに阻まれているのが分かった。

両方の手首には鎖に繋がった手腕輪が付いている。

「これはいったい!?」

「嵌められた!フォルコダははじめから自分たちを騙していたんだ。」

「島から早く出てきたものだから、その分の日数を稼ぐために私たち地下牢に閉じ込められたのよ。」


フォルコダが迎えの為に準備した馬車には睡眠ガスが仕掛けてあった。何も知らずに乗った3人はそのまま眠り、そしてこの地下牢へ連れてこられたのだ。

「やっとお目覚めかな。よほど疲れていたようだね。硬いベッドで申し訳なかったね。」

「フォルコダ!一体どういう事なんだ!?」

「島に3日も引き留めておけないなんて情けない。王室警備隊第一隊の仲間として恥ずかしいですね。任務はきちんと遂行できないなんて。」

「だって魔物のいない島で魔物調査なんて無理な話じゃない!そもそもあなたも隊長に不満があるようなこと言ってたくせに!」

「そんなものはあなた達を信用させるための嘘に決まっているじゃありませんか。私は第一隊にいることを誇りに思っているのですよ。その隊長の命令に逆らったあなた達は処罰の対象です。マサト君、君にはフランチェ隊長が直々にお会いになるそうだから、もうしばらくそこで待っていてくれたまえ。まあどうせ出られないだろうけど。」

そう言ってフォルコダは地下牢から出て行った。

「真人の力でその鎖切れないの?」

「さっきからやっているのですが力が入らないのです。」

「その腕輪が魔道具か・・・。」

その時モニエーラが真人の首の異変に気が付いた。

「マサト!その首・・・」

「首ですか?」

右手で首を触る。

「これ・・・まさか!?」

「そんな!それは王様の許可なしでは保管庫から取り出すことも出来ないはずなのに!」

そのまさかが真人の首についている。

「何故自分に首輪が!?」

始めから狙われていたのは自分の方だったのか?トモさんから自分を引き離すのが目的ではなく、自分からトモさんを引き離すのが目的だったのか?

頭の中をそんなことがぐるぐると駆け巡る。

「食事です、どうぞ。」

見習いのような若い警備隊員が3人に食事を持ってきた。

「ちょっと、私たちいつまでここに入れられるの?」

「自分には分かりません。ただ食事は3食きちんと届けるようにと言われています。」

そう言って鉄格子の下の扉を開け、トレイに乗った食事を牢の中に入れた。

「きちんと食べて下さいね。後で食器は取りに来ます。」

そう言って見習いの子が出て行った。

罪人扱いではないのだろう。食事は粗末なものではなかった。

「私たちみたいな第四、第五貴族の子女がどんなに訴えたって第二貴族のフランチェ隊長にかなうわけなんてないのよね。ほとぼりが冷めるまでここにいるしかないわよね。」

そう言ってモニエーラは食事に手を付けた。

「何があるか分からないのでとりあえず腹は満たしておかないと。」

そう言ってアリドメッドも食べ始めた。2人が食べるのを見ていた真人も流石に毒は入っていないだろうと出された食事を食べ始めた。



久しぶりにシルバーの冒険者が出た為、冒険ギルドは王室警備隊へ報告書を上げていた。それにすぐ目を付けたのがフランチェだった。

「ほう、渡り人の冒険者がシルバーに。エドガルトフィはいるか?」

「はい、何でしょうか。」

「このトモーミという冒険者の事を調べ上げろ。」

「かしこまりました。早急に調査いたします。」

仕事のできるエドガルトフィは他の隊に情報がいかないように冒険ギルドからの報告書をすぐに隠した。そして朋美の事を調べ上げた。


「隊長、トモーミに関する報告書です。」

2日後には調べ上げた報告書をフランチェに提出した。

「ふむ、なるほど。ほう、マサトという武闘タイプの冒険者と一緒にきたのか。そして今一緒に住んでいる・・・結婚しているのか?」

「いえ、仕事のパートナーとして一緒に住んでいるだけだそうです。しかし男の方はトモーミをかなり大事にしているようです。周辺で聞き込みをさせましたが、皆がそう言っていたそうです。間違いありません。」

「そうか。・・・第二隊のマリウスと交友関係ありだと?ということは男の方は脳筋が目をつけているのだろう。使える魔法もこれだけか?まあ水属性で氷も扱えるならばまずまずだな。」

報告書をデスクに置く。

「男の方もこちらでもらうか。2人を引き離して1人ずつ手に入れるとしよう。まずは必ずトモーミを1人で私のところへ連れてこい。」

「はい、手配いたします。」

エドガルトフィはそう言ってすぐに部屋を出て行った。

「さてさて、あれを使うか。後で脳筋に取られたら困るからな。問題はどうやって手に入れるかだ。王はそう簡単には出さないだろう。一度設定すると外せないからな。しかし渡り人の冒険者だ。きっと大きく化けるぞ。王がご崩御になり戦争になったら真っ先に前線で活躍してもらうためだ。後で報告しても最終的には納得していただけるだろう。」

フランチェは王に内緒で眷属の首輪を手に入れる方法を考えていた。

エドガルトフィはすぐにギルドへ真人への偽の指名依頼を出した。そして真人がその指名依頼に行っている間に朋美をフランチェのところへ連れていこうというのだ。冒険者はいろんなところへ出かけることが多い為、住んでいるシェスナだけに指名依頼を出してももし出かけていれば戻ってくるまで何日も待たなければならない。しかし各ギルドへ依頼を出しておけば必ずどこかに引っかかる。そして今第一隊の最優先事項はトモーミの獲得だ。その為には隊員を動かしてでもこの計画を達成する必要がある。

「男は邪魔だな。リスデン以外なら最低3日は足止めさせるか。情報係と足止め係、訓練もかねて引っ張り出すか。」

こうして偽の指名依頼が各ギルドへ通達され、真人足止め計画が実行された。


「ついに王室警備隊が動き出したか。トモーミのランクが上がったのだから当然か。これでマサトはもうここへは来れないだろう。仕方がないな。第一隊の指示だから第二隊にでも恩を売っておくか。」

こうしてリスデンの冒険ギルドから第二隊へ今回の指名依頼の内容を書いた手紙を送られた。そしてそれがマリウスの手に届きロドリゴへ伝えられたのは、真人が偽の指名依頼を受けた後だった。


「あいつめ!情報を独り占めしたな。今どんな状況だ?」

「冒険ギルドに問い合わせたところマサトは依頼を受けてバジュール沖の訓練施設の島にいるようです。トモーミの居場所は不明です。おそらく第一隊が隠していると思われます。あの2人はパーティを組んでいていつも一緒にいましたから、恐らくバジュールまでは一緒にいたのだろうと思われます。今こちらに向かう検問所に問い合わせをしています。」

ロドリゴを脳筋と思っているのはフランチェだけで、一応隊の隊長をしているのだからそれなりに頭も切れる。

「あいつのことだ。渡り人欲しさにろくでもない事を考えているに違いない。色々と調べ物をするからそっちが得意なものを集めろ。」

「わかりました!」

「場合によっては第三隊に協力を・・・いや、親衛隊に報告して協力を仰ぐことになるかもしれんな。」

王室親衛隊、王族の直属の警備をする部署であり、警備隊を纏める国のトップの部署だ。ロドリゴはそれだけ今回の件は重要な事だと考えていた。

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