島の調査
島の施設で勝手に夕食の準備をしていた真人の元に他の2人がやってきた。
「これ、マサトさんが作ったのですか?」
「はい、材料を確認して足の速そうなものから調理しました。」
「すごくいい匂いがします!早く食べたいです。」
アリドメッドもモニエーラも真人が作った料理に釘付けだ。
「皿とか準備して頂ければすぐにでも食べられますよ。」
言ったと同時に2人はすぐに食器の準備をし、待った状態のわんこになった。
「ううう、美味しい。こんな島で美味しい料理は諦めていたのに。」
「幸せです。島で調査なんてハズレだと思っていたのに。」
2人はお替りをしながら話している。
「そんなにこの島の調査は大変なんですか?」
一瞬動きが止まった。
「大変というか、実はこの島は魔物が住んでいないと言われているのです。しかし船乗りから『魔物を見た!』という証言が入ると調査をすることになっているのです。」
「見たという証言だけでですか。」
「そうなんです。この島は国の所有物なのですが、現在は使われていないので国はほったらかしなんですよ。そこに魔物が住み着くと大変なことになるのでこうやって調査をするんです。」
2人は何とか話を合わせて会話をする。
「だったら王室警備隊が調査をすればいいのではないですか?各地に定期的に調査に行っていますよね。」
ドキリとした2人だが、すぐにモニエーラがそれについて回答をする。
「王室警備隊の仕事は他にもあるのでしょっちゅうこの島には来れないのですよ。だから冒険者を雇って調査に行かせているのです。」
その回答に真人は納得したのか頷いている。それを見てアリドメッドはほっとする。
「でもここは使われていない割に綺麗ですね。厨房の包丁も最近研いだみたいにいい切れ味でしたよ。」
「それは多分前に調査にきた冒険者が研いだんじゃないかな。ほら、自分みたいに剣を使うものはいくらか研ぎも出来るから。」
「そうなんですか。」
ふう、何とか誤魔化したぞという表情のアリドメッドを見てモニエーラが笑いを堪える。
「ところで明日の予定はどうなっていますか。」
「ああ、明日は島の西側にいこうと思います。あっちには洞窟があるので、もし魔物が住んでいるとすれば可能性が高いですから。」
「洞窟ですか。わかりました。」
「ところで明日からの食事の事ですが・・・」
ちらりとアリドメッドはモニエーラを見る。
「あの、マサトさんの料理が美味しくて・・・。」
「ああ、自分が作りましょうか?」
「「いいんですか!?」」
「構いませんよ。普段から作っていますし、他の料理もお口に合えばいいのですが。」
「「合います合います!こんなに美味しい料理、いくらでもお口に合います!」」
食事の心配が回避された2人はとても喜んでいた。
翌朝朝食を済ませ出かける準備をする。
「どちらか収納をお持ちですか?」
「私が持ってます。昼食は預かりますね。」
モニエーラの収納へ3人分の昼食を入れる。
「それでは行きましょうか。」
アリドメッドを先頭に出発する。
「東の洞窟は足場が悪いので気をつけて下さいね。私についてきて下さい。」
そう言ったがアリドメッドは不安そうだ。もしばれたら真人の鉄拳が後ろから飛んできそうだからだ。びくびくしながら洞窟へ向かった。
魔石を使ったライトで洞窟の中を照らしながら進んでいく。足場が悪いからとはいえ、かなりゆっくりだ。
「何がいるかわかりませんからね。」
そう言いながらアリドメッドは故意にゆっくり進んでいるのだ。1時間程で洞窟の突き当りに出た。
「何もいませんでしたね。よかったです。それでは戻りましょう。」
今度はモニエーラを先頭に進む。魔物がいないと分かったからか、あっという間に外に出た。
「次はどこに行くのですか。」
「ええと、南側かな。」
段々嘘とつき続ける自信が無くなってきたアリドメッドだった。
南側は綺麗な砂浜が続いていた。完全なプライベートビーチだ。
「トモさんも連れてきてあげたかったな。」
ちょっと気が緩んだ真人がこんなことをつぶやいた。
「トモさんって、一緒に来た渡り人の女性ですか。」
「はい。こっちへ来てこんなきれいな砂浜は見たことがないと思うので。」
「バジュールにも綺麗な砂浜があるわよ。戻ったら連れて行ってあげれば?」
「そうですか。有難うございます。是非そうします。」
すでに朋美はその砂浜に行っていることを知らない真人たちはその会話で場を持たせた。機嫌が良くなった真人の機嫌を損ねまいと話題を振ろうとするが、冒険者ではない2人には真人と共通する話題がない。
「ええと、そろそろお昼にしませんか。」
まだ施設を出て2時間しかたっていない。いくらなんでも早すぎだ。
「アリドメッド・・・。」
「いやー、だってマサトが作った食事があまりに美味しくて・・・。」
「アリドメッドさん、そんなに食べていたら食料が最終日までもちませんよ。」
確かにそうだ。食料はキッチリ3泊4日分しかない。魔物も生き物もいないこの島では現地調達も出来ない。
「いいんだ!最終手段がある。私は今すぐマサトの作った美味しい料理が食べたい!」
まるで駄々っ子のように言うアリドメッドにマサトもモニエーラも少々呆れ気味だった。
施設に帰ってすぐにモニエーラがアリドメッドの部屋に行く。
「今日はどうしたのよ!?マサトが変な目で見てたじゃない。」
「もうだめだ。ここには調査するような場所もないじゃないか。これ以上は無理だ。もう話してしまおう。」
「明日を乗り切れば明後日には迎えがくるわ。何とか明日まで我慢して!」
「それじゃあ明日はモニエーラがどこかに連れて行ってくれよ。」
「そんな!この島のどこに連れて行けばいいのよ。」
「だからもう無理だって。明日狼煙を上げて迎えに来てもらおう。2日も足止めしたからもういいじゃないか。」
「隊長の命令に逆らうの!?」
「マサトに殴られたいか?」
「それもいやよー。」
武闘タイプの真人に殴られてただですむはずがない。2人は王室警備隊をクビになる覚悟をして、明日真人に真実を話すことを決心した。
あまりよく眠れなかった2人は翌朝早々と食堂で待っていた。
「おはようございます。遅くなり申し訳ございません。」
「いや、いいんだ。全然遅くないよ。」
「そうよ。私たちが早かっただけなの。」
「すぐに食事の準備をしますね。」
「何か手伝おうか。」
「私も手伝うわ。」
2人で厨房に入ってくる。
「大丈夫ですよ。すぐに作りますから待っていて下さい。」
手際よく食材を切り分け鍋やフライパンに入れていく。その様子を見て2人は自分たちが邪魔なのを理解し、厨房から出て行った。
「この黄色い塊は何ですか?」
「卵焼きといいます。」
「ほわ~美味しいわ♡」
「あ、モニエーラ!ずるいぞ、先に食べるなんて。」
すでに2人の食事風景はお上品な貴族とは程遠いものになっていた。真人の美味しい料理を残さず食べることに専念している。
「こんなに喜んでもらえてよかったです。」
真人も食べ始めた。2人の食べるスピードが落ちていった。
「あの・・・君に話があるんだけど・・・。」
「今ですか?」
「いや、後でもいいけどその・・・。」
「では食事が終わってからでいいですか?せっかく作った料理が冷めてしまいますから。」
「そうだね。ごめんごめん。」
黙って食べ始めた。それから誰もしゃべらないのでまるでお通夜のような静かさだった。
食事が終わり食器の片づけを済ませた2人が真人の前に座った。
「それで話とはなんでしょうか。今日の調査の事ですか。」
「まあ、そんなとこなんだけど・・・すまない!」
アリドメッドがいきなり頭を下げた。慌ててモニエーラも頭を下げる。
「2人ともどうしたんですか?何か調査に不備がありましたか?」
「その・・・あの・・・」
「頭を上げて下さい。どうしたんですか?」
言われて頭をあげ、青ざめた顔で真人を見る。
「そもそもこの調査は嘘なのだ。」
「嘘?」
「私たち本当は冒険者ではなくて王室警備隊の一員なの。」
真人の顔色がみるみる変わる。
「怒らないで欲しいと言っても無理かもしれないが、話だけは聞いて欲しい!」
アリドメッドが必死になって言うので、真人も拳を握りしめ堪えている。
「それでこれは一体どういう事なのですか。」
2人は洗いざらい話した。ある方=フランチェ隊長の元へ朋美を連れて行くこと、その為に真人と引き離し足止めすること。王室警備隊は3隊あって、自分たちが第一隊のフランチェ隊長の部下であることなど。
「それでトモさんはどこに連れて行かれたのですか。」
「おそらく隊長の屋敷だと思います。トモーミを留め置く場所が他にはありませんから。」
「王室警備隊の宿舎だと目立ってしまいますから。今回の件は隊長が独断で動いています。この国の意思ではありません。それだけは信じて下さい。」
あくまで第一隊が勝手にやっていることで、王命でも何でもないという。
「今まで自分を騙していた人たちを信じろと?」
「もし王命であれば王城に連れて行くはずです。」
確かに王様が『招いた』のであれば自分と引き離す必要もない。
「一体何のためにトモさんを連れて行ったのですか。」
何となくわかってはいるが聞いてみる。
「自分の直属にする為です。トモーミはすでにシルバーランク。戦闘で十分な力を発揮できます。隊長はその戦力を自分の隊に引き入れたいのです。」
「ちょっと待って下さい。トモさんはブロンズのはずですが!?」
「タグはそうかもしれませんが、冒険ギルドのデータはシルバーです。かなり強い魔物を討伐されたのではないですか?」
「そういえばゴールドサーペントを倒したとか・・・。」
「間違いなくそれですね。ゴールドサーペントはシルバーでもかなり難しい魔物です。それを討伐したとなると実力はシルバーが確定です。タグとデータが違う事はよくあることです。かなり早くランクが上がった冒険者はやっかみの対象になるのでタグの色を低くしておく傾向があるのですよ。ギルドもそれを分かっているのでデータのみ更新するという事をするのです。」
「つまりトモさん本人はブロンズと言っているが、ギルドや他の開示できるところにはシルバーとして紹介しているという事なのですね。」
「はいそうです。」
すでに多くの場所に朋美のランクがばれている。今すぐ朋美を助け出さなければ大変なことになる。
「それでこの島からどうやったら今すぐ出ることが出来ますか。」
「今から狼煙を上げます。そうすると船が迎えに来てくれることになっています。」
「ではすぐにお願いします。それと隊長の屋敷というのはどこにあるのですか。」
「それは私たちが案内します。それと・・・申し訳ないのですが、私たちが話したことは内緒にしておいて欲しいのです。」
「お願いします!自分たちが喋ったとわかるとどんな処分を受けるか・・・どうかお願いします。勝手なお願いだというのは分かっています。」
2人は必死になって頭を下げる。
「では狼煙を上げてこの島を出ることはどうやって言い訳するのですか?自分に脅されたと言うのですか。」
2人は顔を上げて首を横に振る。
「それは・・・どうしよう。」




