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こっちで元気にやってます  作者: 楠 螢
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本当の目的

エランからバジュールまでは町を2つ通り過ぎ3日かかった。

「移動に3日もかかるのに他の冒険者を待機させているって、よっぽど大事な調査なのね。もし真人がエランにいなかったらシェスナまで迎えに来たのかしら。」

確かにおかしい。たまたまエランにいたからいいものを、もしシェスナにいて他の依頼で留守にしていたらどうしていたのだろうか。しかし考えてもその理由は分からないので、それについてはこれ以上考えないことにした。

「宿は冒険ギルドで予約してありますので受付でそう伝えて下さい」。

御者は宿の名前を書いたメモを渡してきた。それを受け取り2人でその宿に向かう。

「宿も準備してくれるなんて、至れり尽くせりね。何だか気味が悪いわ。」

「確かにそうですね。でも変な宿にトモさんを1人置いていくよりいいですよ。」

指名依頼を受けた真人だけならわかるが、朋美の部屋まで準備してある。真人も少し不安になってきた。

「トモさん、もし何かあったら1人で大変かもしれませんが、シェスナに戻ってアーヤさんのところにいて下さい。絶対ですよ。」

「何かあったらって、ただの調査依頼でしょ?それに真人1人じゃなくて他の冒険者もいるんだから、そんなに心配しなくてもいいじゃない。」

「天候ですぐに戻って来れないこともあるかもしれません。5日を過ぎても戻らなかったら帰って下さい。自分もすぐに戻りますから。」

「そうね、その可能性もあるわね。わかったわ。5日はこっちで情報収集するわ。でもそれを過ぎたらシェスナに帰るわね。」

「お願いします。必ずアーヤさんのところに行って下さい。」

真人が念を押してアーヤのところに行くように言うなんて、やっぱり真人は年上が好みなのだろうかと少し不安になった。


エランから2日後、マントの男は王都のとある場所にいた。

「マサトはバジュールの先の島へ移動させることになりました。トモーミも一緒にバジュールに移動しています。」

報告を聞いた男は葉巻の火を消した。

「そうか、一緒にいたのか。ではこちらに来てもらうのにそんなに日数かかからないな。」

「はい、バジュールはシェスナよりも王都に近いですから。」

「そうだな。ではトモーミを迎えに行ってくれるか、エドガルトフィ。」

「はい隊長。すぐに準備をいたします。」

エドガルトフィは敬礼をし、部屋を出ていった。

「あの脳筋どもには任せてはおけんからな。きれい事だけで貴重な戦力を手に入れられるとでも思っているのか。さて、こっちも準備を始めるか。最高のもてなしをしなければ。」


翌朝銀髪に赤い目のスラッとした女性魔導士と、赤毛に浅黒い肌の細マッチョ男性剣士の冒険者2人が真人を迎えに来た。

「マサト・エンドーさんですね。私は魔導士のモニエーラと申します。」

「自分はアリドメッドと言います。よろしくお願いします。」

「こちらこそよろしくお願いします。ところで今回の調査をする島はバジュールからどの位かかるのですか。」

「普段は船で3時間程沖に進めば到着します。しかし今日は海からの風が吹いているので、もっと時間がかかるかもしれません。」

「そうですか。それでは早く行きましょう。」

3人はそのまま宿を出ていった。朋美はそれを見ながら不思議に思った。

「あの2人、冒険者にしては服が随分と綺麗ね。どちらも新品みたい。」

いつもなら注意深く見る真人も、今回は早く依頼を終わらせて帰ることを考えていたので迎えにきた2人の服装にまでは気が回らなかった。


港へ着くと船が待機していた。

「ようこそ。今日はこの船で出発します。食料もちゃんと積んでありますので。」

「早く島へ向かいたいので船を出してもらえますでしょうか。」

アリドメッドの声掛けですぐに船は出発し、みるみる沖へ出ていった。

「早いですね、この船。」

「はい、魔石燃料のいいものを使ってますからね。」

あっという間に陸地は見えなくなり、船は目印のない海をひたすら沖に向かって走って行く。海からの風が吹いているとは言っていたが、船は3時間かからずに目的の島に着いた。積んでいた荷物を船着き場にすべて降ろした。

「それではこれで失礼します。迎えは4日後の午後で良かったですよね。」

そう言って帰っていった。

「4日後って、そんなにこの島に滞在するのですか?」

「おや、聞いていないのですか?」

涼しい顔をしてアリドメッドとモニエーラは荷物を持つ。

「マサトさんも運んで下さい。ここには観察小屋がありますから、そこで今日から4日過ごすことになります。」

迷わず進んで行くところを見るとこの2人はよくこの島には来ているようだ。真人も荷物を持って2人の後から着いていった。小高い丘になっている所に観察小屋があった。小屋というより宿泊施設のようだ。

「荷物はこっちに運んで下さい。マサトさんは料理は出来ますか?」

「はい、出来ますけど。」

「それはよかった。実を言うと自分たち料理は苦手でしてね。」

「4日間焼くだけの肉や野菜を食べる生活になるのではないかと少し心配していたんですよ。今回はまともなものが食べられそうですね。」

「今回はってことは、お2人はよくここには来られるのですか。」

2人は顔を見合わせる。

「ここというか、よく指名依頼でこの人とは一緒になるのよ。」

「そうなんです。なぜか縁があって。」

なぜか慌てふためく2人だった。

「それより部屋に行きましょう。ここは元々国の施設だったので部屋は綺麗なんですよ。」

モニエーラが2階の部屋へ案内してくれた。

「どの部屋も使っていいって聞いています。でも3階はダメだといいています。えらい人たちの部屋だったそうで、今でも鍵もかかっているそうですが。」

「調査依頼に来ているのですから寝泊りできる部屋であればどこでもいいですよ。」

真人は一番近くの扉を開けてその中に入って行った。

「それじゃあ私はこの部屋で・・・。」

「あ、自分はこっちの部屋を使います。」

2人もそそくさとそれぞれの部屋に入って行った。


「物はないけど随分と綺麗な部屋だな。元々国の施設だっただけあって作りもしっかりしているし。」

据付のテーブルもベッドもかなりいいもののようだ。壁も厚く隣の声は聞こえそうにない。

「この島って元々どんな用途に使っていた島なのだろう。魔物の活動が活発って上陸しないと分からないよな。国の施設があった場所に誰が上陸して確認したんだろう。」

どれだけ考えても答えが出てこない。兎に角今はあの2人に従って調査をするしかない。

「調査・・・今日はどうするんだろう。」

今後の事も全く聞いていないので、アリドメッドに聞いてみようと彼の部屋を訪ねた。


「とりあえず今日はゆっくりして下さい。明日の朝から島を見て回りますから。」

「まだ日が高いですよ。今からでも行けるところは行った方がいいのではないでしょうか。」

「そんなに熱心にしなくても大丈夫ですよ。船は4日後しかこないし、この島一周してもそんなにかかりませんから。」

どうやらかなり余裕の日程を組んであるらしい。2人を宿に泊めておいたことと言い、どれだけ予算にも余裕があるのだろうか。どちらにしても調査は明日からしかしないというので、何もない部屋で時間を持て余してしまうので食事の準備をすることにした。

「迎えが4日後の午後ってことは3泊4日か。この材料で3人の4日分だとすると、まず腐り易い肉から調理するか。」

2人は料理が苦手と言っていたので手伝ってもらう必要も感じず勝手に始める。

「あっちなら真っ先にカレーだけどな。どこかに香辛料売ってないかな。」

美味しそうな匂いにつられて2人が食堂へ降りてくるのはもう少し後の事である。


「ねえアリドメッド、あんな真面目な人を後4日も騙してここに留め置くって難しいわ。それにとても心苦しいわ。」

「自分もだよ。いくら任務とはいえ、絶対途中でぼろが出そうだ。」

2人が冒険者だというのは真っ赤な嘘だ。

「1日あれば回りきるこの島を4日もかけて魔物の調査だなんて、かなり無理があるわよ。隊長も随分と酷い依頼を押し付けてくれるわよね。」

「あー、他のギルドについてた連中はもう任務を解かれたんだろうな。どうしてヴォデルマ領なんかに来てたんだよ。だってあいつらシェスナに住んでるんだろ?」

渡り人のデータはすぐに国に報告される。当然こっちに来て適性を受けた時からデータは作成され、それは定期的に更新されている。佐藤が強制労働させられているのもそうだが、冒険ギルドに登録した2人のランクも国は知っている。

王室警備隊は1~3隊まであり、その上には王室親衛隊がある。ロドリゴは第二隊の隊長であり、今回動いているのは第一隊だ。第一隊のフランチェ隊長は第二隊のロドリゴやその部下を『脳筋』とよんで馬鹿にしている。何かあればすぐに拳で語り合うところがあるからだ。そして今回もロドリゴが真人を入隊させるためにアプローチをしているのを知っていたが、渡り人を手に入れることは自分の出世にもつながるので隙あらば自分たちの隊に入隊させようと虎視眈々と機会を窺っていたのだ。

そしてついに朋美がシルバー(本人はブロンズと思っているが)になったのを機に一気に仕掛けてきたのだ。

「明日はどこに連れていく?この島は王室警備隊の訓練施設だから魔物はいないわよ。」

「西に確か洞窟があったよな。あそこに連れていこう。ばれるにしても少しでも時間を稼がないと隊長に降格処分を言い渡されてしまうよ。」

とんだ貧乏くじを引いた2人であった。

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