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こっちで元気にやってます  作者: 楠 螢
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朋美の冒険3

寝る前に感知をしてみて、近くに何も感じなかったのでテントを張った。流石に熟睡は出来なかったが、少しは休むことが出来た。誰かが入ってきた感じもない。

「ここまではみんな来ないのかしら。」

食事を済ませ、上に上がる準備をする。食事は2回分しか持ってきていないので、今後は食料になりそうな魔物を調達しなければならない。地上の移動のように風魔法を使って進めば早く地上に出られるはずだが、風に乗っている時に魔物に襲われたら避けられない。

「早いとこここを出ないと。」

足を強化して歩き出す。

「何処かのパーティに会えたら食料を分けてもらえるかな。ううん、それは甘いわね。でも上の方は結構討伐が済んでいるはずだから、そんなに魔物はいないわよね。」

最短コースを選んでひたすら歩く。ズズズ・・・地面を引きずるような音が聞こえる。

「何かいるわ。それも大きい・・・。」

感知魔法を使ってみる。

「うっ。」

少し体温の低い丸太のようなものを感じた。それはゆっくり移動している。

「多分ヘビだわ。それも凄く大きい。」

ヘビは変温動物だから冷やせば勝機はある。それとも気づかれないように一気に4階を目指そうか。食べ物がないので4階を目指すことにした。地図でルートを確認する。

「少し迂回すれば大丈夫ね。」

地図を片付け迂回ルートを進む。

「あの角を曲がれば4階に上がる階段だわ。」

階段まで走ろうとした時、後ろから風を切って何かが追い付いてきた。振り返るとヘビのしっぽがすごいスピードで朋美に向かって突っ込んできていた。朋美は慌てて氷の壁を張った。ガコンと音がして、見事に氷は割れて尻尾の先が朋美に当たった。

「がはっ!」

尻尾は見事に朋美の鳩尾に当たり、そのまま体は吹き飛ばされた。

う・・・息が出来ない。

必死になって呼吸をする。

「はっ・・・はーはー。」

何とか呼吸が出来る状態になったが、階段はさっきより遠くなった。

「倒さなきゃ上に行けない。」

覚悟を決める。

頭はどこ?尻尾からだと大したダメージも与えられないわ。

感知をしてみる。はっきりと形を捉えることは出来ないが、細長いヘビの形から想像するとどこに頭があるのかは分かった。

「こっちが尻尾だから多分あっちが頭よね。ホワイトサーペントより大きいわ。もしかしてここの主かしら。」

気を引き締めてヘビに挑む。とりあえずどの魔法が効くか尻尾に向かって攻撃する。

「まず雷!」

雷撃を放つ。しかし効いている風ではない。

「グリーンイグアーナもそうだったけど、爬虫類は雷が効かないのね。」

次に炎を放つ。尻尾を引っ込めて逃げる。

「火はいけそうね。次は風ね。」

ウインドカッターをヒュンヒュン放つ。パシパシと音を立てて固い皮に弾かれた。

「ヘビは通路にいるから、この広さだと一方通行のはずよね。ここを曲がれば頭があるはず。」

火の玉を作り、風魔法と組み合わせてヘビの方へ飛ばしてみる。

「シャー!」

いくつか当たったのか、姿は見えないがヘビが威嚇している。

「やっぱり尻尾から攻めるべきだったかしら。」

ボティに一発入れられたのでちょっと弱気になっていたが、ヘビは後ずさりが出来ないのだから、尻尾から攻めた方が勝機がある気がしてきた。

「よし、あっちから攻撃しよう。」

急いで尻尾の方へ移動する。頭が動いたのか、さっきの場所に尻尾はなかった。感知してみる。

「あ、あそこね。頭は・・・そこか!」

後ろを振り向き一直線に炎を出す。

「プシュー。」

ヘビは後ろにのけぞる。朋美の頭を一飲みしそうな大きなヘビの口からは長い舌が出ている。ヘビは間合いを取りながらゆっくりと近づいてきた。

「シャー。」

一気に食いついてきた。慌てて火の玉を出して攻撃しながら後ろに下がる。その時服に隠れていたスマホのライトがヘビに当たった。ずっと洞窟の中で生活していたヘビはあまりの眩しさに目を閉じた。

「今だわ!」

朋美は大きく開いているヘビの口に向かって無数の氷を投げ入れる。ヘビは一旦顎を外し、その氷を飲み込んだ。朋美はそれでも休まず氷を口に向かって入れ続ける。ヘビはまた氷を飲み込み、少しずつ朋美に近づいてくる。朋美も少しずつ後退しながらひたすら氷を投げ入れる。随分とヘビに氷を飲ませた。少しずつヘビの動きが鈍くなってくる。

もう少し、もう少し。

更に後ろに下がった時、何かに躓いて転んでしまった。

「しまった!」

慌てて立とうとつまずいた何かを手で触った。冷たい。それはヘビの尻尾だった。

こんなに冷えてる。これならいけるかも。

朋美は触った尻尾から頭の方に向かってヘビを氷漬けにしていく。ヘビは抵抗して尻尾を上下左右に振るが、たくさんの氷を飲み込み、体の中から冷えてきているので思ったように動かない。ビキビキビキ・・・体温の下がったヘビは冬眠状態のように鈍くなり、ついに朋美の魔法によって凍りついた。

「はあ、はあ、倒したよね、倒したよね。」

収納へ入れてみる。シュンと音を立てて中に入った。

「よかった、よかった。」

朋美は泣きながら自分に言った。


改めてヘビを出した。氷の形跡を消すためだ。ライトでヘビを照らし火加減を調整しながら表面の氷を溶かしていく。

「このヘビ金色だったのね。ハンドバッグとかにしたらあっちの人は喜ぶわね。」

こっちの人も喜ぶだろうが、そんなことを朋美は知らない。

「よし、乾いたかな。」

再び収納へヘビを入れた。

「あんなに爬虫類、特にヘビは嫌いだったのに、生活の為って思うと狩れちゃうのね。

そう言いながら4階に続く階段を上がって行った。


4階には湖があり、幸運にも魔魚が釣れた。何とか食べ物にありついた朋美はその後も急いで上の階を目指しひたすら突き進む。途中で出会った魔物は容赦なく狩っていく。

「ここを上がれば3階ね。」

ここは螺旋階段になっていた。吹き抜けの暗い階段をゆっくり登って行く。

「はーはー、長い・・・でも後少し・・・。」

ヘビとの戦闘の後、4階はかなりのスピードで駆け抜けた。そろそろちゃんとした休憩がしたい。壁に手をあてて階段を登って行く。

「3階はまだ?」

足が震えてきた。

「下の方に明かりが見えます。」

「発光性のある魔物じゃないか?気を付けろ。」

人の声がする。朋美が待ちに待った冒険者が降りてきた。

「誰かいますか。」

声を上げる。

「今誰か喋った?」

「いや、下から声が聞こえた気がするが。」

上の方でそんな話声がする。

「私はソロの冒険者です。上にいらっしゃるのは冒険者の方ですよね。」

もう一度声をかける。

「ソロの冒険者の人がもうそんなところにいるんですか。」

上から冒険者たちが駆け足で降りてくる。やっと階段の途中で5人パーティの冒険者と合流した。

「よかった。誰にも会わないから迷ったかと心配になって。」

少し涙ぐんだ声で朋美は話した。

「こんなところにソロでですか。私たちのパーティは解禁日初日からずっと潜っていますが、他の冒険者たちには抜かれた覚えはないですよ。」

聞くとこの洞窟の討伐期間は2週間で、このパーティは初日一番乗りでそれからずっと潜っているのだそうだ。

「落っこちたって、そんなに下に続いている落とし穴なんてここにあったかな。」

「私たち毎年潜っているけど、そんな事聞いたことないわ。」

みんなは朋美の言う事が信じられなかった。

「足止めしてすみませんでした。それじゃあ私は上を目指しますね。」

1日ぶりに人と話をして落ち着いた朋美はこれ以上この人たちに話をしても何も信じてもらえないと思い、上を目指して再び歩き出した。

「ねえ、あの人の話が本当ならあの人ってすごく強いのよね。」

「たとえ嘘でも4階から上がってきたってことは、4階の魔物をソロで倒せるくらい強いってことだよね。」

朋美は自分の強さに自覚がなかった。今まで目立たないようにやってきたつもりだったからだ。それでも4属性すべて扱えるという事は、渡り人の特徴としては受け入れていた。しかしたとえ4属性扱えなくても、朋美の魔法の威力はこの世界では異常なのだ。それに全く気が付いていない朋美は、自分の強さはこっちでは平均的なのだと思っていた。だから5人で1週間潜っているのは沢山狩りたいからだと思っていた。事実5人で分けると依頼料は大したことがない。獲物はそれなりの量や高値で売れるものでないと雀の涙ほどにしかならない。

この洞窟の地下3階からの魔物は黒の2人以上のパーティでないと倒せないようなものばかりなのだが、そんなことを知らない朋美は相変わらず容赦なく進路妨害する魔物を片っ端から倒していった。

「やった、1階に行く階段だわ。」

地下3階の途中から数組のパーティに会ったので、その後は魔物に会わずに進むことが出来た。ふらふらになりながらも出口を目指して歩き続ける。

「眠たいわ。もうどのくらい歩いているのかしら。お腹もすいてきたわ。でも食べたら絶対眠ってしまうわ。せめて地上に出ないと。」

パアン!両手で思いっきり顔を叩いて眠気を飛ばす。

「よし、もうひと頑張りだわ。」

シェスナに戻ったら絶対にアーヤから魔よけの薬を購入しようと心に決めて出口を目指した。

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