港町リスデン
荷馬(牛)車にゆられて町に付いた。どうやらここは日本どころか、地球ではないらしい。サンシュテール王国の東にあるリスデンという港町らしい。城門を通り、街の中へと思ったら、私たちはここで降ろされた。
「一応身元の確認があるから、後はこの人についていってくれ。」
「ありがとうございました。」
深々と頭を下げる。もしこの人と出会っていなかったら私たちの野宿は確定していた。
「さて、渡り人だそうだが、その確認もかねてこちらへついてきてもらおうか。」
門番の男の人の後をついていくと、綺麗な建物にたどり着いた。
「ここは教会と言って神託や職業鑑定などを行っているのだ。もし本当に『渡り人』なら、お金はかからないから安心したまえ。」
え、お金取るの?この世界の通貨なんて持ってないわよ。ちょっと心配になったが、間違いなく『渡り人』なんだから大丈夫よね。扉を開いて中へ入った。
キリスト教の教会のような建物の中は意外とシンプルだった。もっと華美な装飾品に彩られているかと思ったけど、全体的に真っ白な室内だ。お祈りをするための場所らしく、奥の祭壇にはステンドグラスの綺麗な光が差し込んでいた。
「こちらへどうぞ。」
祭壇の横の扉から奥の部屋へと招かれた。小さな会議室のような部屋の中央に少し大きめの水晶玉らしきものがある。
「こちらへ。」
神官らしき男性が私たちを手招きする。
「3人とも、同じところからいらしたということで間違いありませんね。」
「いやー、会社に行こうと信号待ちをしてたら、突然光に包まれて知らないところへ置き去りにされたんですよ。何が起こったのかさっぱりわかりませんね。ちなみに私たちは同じ場所で信号待ちをしていただけで、知り合いではないですよ。」
急に他人のふりをしだした。確かに知り合いではないのだが。
「まあ、ここへそろって来てしまったから、『同郷』ってことには違いないんですけどね。」
しかしよくしゃべる。自分たちのたいへんな境遇を説明したいのだろう。
「ではあなたからこちらへどうぞ。」
一番に指名された。急に挙動不審になり辺りを見回す。私たちが知らん顔していたので諦めて神官の方へ行った。
「こちらへ両手を置いて下さい。これからいくつか質問をするので、嘘偽りなく答えて下さい。」
深呼吸をして水晶玉の上へ両手を置く。神官の質問にサラリーマン・・・佐藤は答えた。
「ふむ、間違いないようですね。ではこれから私があなたへ魔力を流します。体に流れを感じたら、それをこの水晶玉へ押し出すようにして下さい。」
魔力?そういえば獣に襲われたときに私の体から出てきたあれか?ちょっと怖いなと思っているうちに、神官は佐藤の額に右手を当て何か呪文を唱えた。白い光が佐藤を包む。その後水晶玉が光り、中に浮かび上がった文字を神官が読み上げた。
「商人と出ています。」
「ショウニン・・・ですか?」
「はい、あなたの適正職業は『商人』ですね。」
うそ発見器にかけていると思ったら、すぐに職業鑑定に進んだ。
「この国では子供のころに職業鑑定を受け、適正職業の中から自分がなりたい職業を選びその職業に就くための学びをします。あなたたちはすでにその時期を過ぎているので、適正職業の種類があまりないのでしょう。あなたは商人の適性が出たので、『商業ギルド』へ登録し、自分に合った仕事を斡旋してもらうといいでしょう。」
商業ギルト?ハロワみたいなものかしら。
「ではそちらの女性の方、こちらへどうぞ。」
先ほどと同じように質問される。嘘はついていないので、水晶玉は何の変化もない。
「では先ほどの方と同じように魔力を流しますね。」
探るような何かが体の中に入ってきた。それを掌から押し出すように水晶玉へ流した。
「魔法剣士・魔導士・錬金術師・料理人と出ています。」
魔法!あれは魔法だったんだ。テンションが上がった。スキップしそうになるのを抑えて2人のところへ戻った。次は真人の番だ。さっさと質問を済ませて職業鑑定に進む。
「武闘家・漁師・教師と出ています。」
「私たちは異世界からこちらへ来たので、こちらの常識を知りません。生きていくために必要な知識もお金もありません。どうすればよろしいのでしょうか?」
丁寧に尋ねる真人へ神官は答えた。
「今から紹介状を書きます。それを持って適性のあるギルドへ持っていき、個人登録をします。それからこちらで生活するために必要なお金を稼いで下さい。」
随分と簡単な説明だ。見ず知らずの土地に来て保護も何もないらしい。私たちはこれから自力で稼いで生活しなければならないのだ。
「おふたりは冒険者の適性があるようですから、『冒険ギルド』へ登録なさるといいでしょう。あちらは小さな仕事から大きな仕事まで色々ありますから。ではあなた方に幸多からんことを。」
適性診断が終わったら、さっさと教会から追い出された。




