魔法発動!
「はあはあ、・・・なんか・・・出た・・・。」
獣たちが襲ってきた瞬間、悲鳴を上げた。来ないで!と言わんばかりに手を前に出した。その時私の体の中から何かが手先へ流れていった。激しい音がした。そしてギャウン、ガガガ、グウー・・・と獣たちの苦しそうな声が聞こえてきた。怖くて目をつぶっていたが、しばらくして声が聞こえなくなった。全身の力が抜けてその場に座り込んでしまった。草むらの中に埋もれている私を、学生服の彼が支えながら立たせてくれた。
「大丈夫ですか?」
「は・・・はい、何とか大丈夫です。」
「すごいですね。殲滅しましたよ。」
「え、何が?」
言われてそっちを見ると、黒焦げになった獣たちが転がっていた。辺りの草も黒焦げだ。彼はそちらへ歩いていった。
「ちょ・・ちょっと待って・・・。」
「危ないかもしれないので、そこで待ってて下さい。」
獣たちが絶命しているのを確認し、近くにあった棒でその体をつついている。ポロっと赤い宝石のようなものが出てきた。
「宝石?」
その言葉が聞こえた途端サラリーマンが走って行って、彼と同じように足で獣を突いた。
「おー、これはすごいな。よし、お前その棒でこいつらの中からこの宝石全部取り出せ。」
さっきは真っ先に逃げ出した癖に、一番偉そうに指図している。彼は1つずつ棒で探り出し、焦げた獣の中から宝石を取り出した。
「よし、これで全部だな。これは年長者の俺が預かっておく。」
そう言ってサラリーマンは出てきた宝石をすべて自分のポケットにしまい込んだ。
「まず、何だ。人を探そう。そう、人だ。テキトーに人がいそうな場所へ向かおう。」
現地の人を探すのが最優先だと2人も思っていたので、その言葉に従った。しかし、一番ヘタレのくせに偉そうだった。
「森と反対の方がいいと思います。」
「私もそう思います。」
「おう、そうだな。それじゃああっちに向かって歩くか。」
我先に歩いていくサラリーマンの後を、2人で距離を置いてついていった。
「大野 朋美さんですよね。」
私の名前を知っている?彼は誰?不思議そうな顔をする私に
「自分、遠藤 真人と言います。中学で生徒会に入っていらっしゃいましたよね。」
そうだ、私は中学の時に生徒会の副会長をしていた。話を聞くと、彼は私の2つ下で同じ中学校の出身らしい。
「駅に向かうあの通りを歩いているのをよく見かけてましたよ。」
照れくさい。まさか色々とみられていたとは。穴があったら入りたい気分になった。
ようやく人が通りそうな道に出た。舗装されていない道は、ここが自然豊かな場所だと教えてくれる。
「さてさて、右へ行くか左へ行くか。おいお前たち、どっちがいいか?」
すっかりリーダー気取りだ。このタイプは他人が間違ったら思いっきり貶す人だ。私たちが言った方へ進んで人に会うことができなかったら何を言い出すかわからない。2人で顔を見合わせた。
「自分たちは学生でよくわからないので、社会人の大先輩の進む方へ従いますよ。」
真人はさらりと言ってのけた。大先輩と言われて気をよくしたのか、
「おう、分かった。それじゃあこっちに進もう。」
左を指さす。その道の先から何かがこちらに向かってくるのが見えた。荷馬車だ。ゆっくりとこちらに向かって進んでくる馬車・・・ではなく、牛車だった。
「こんなところでどうした?」
牛車に乗った男の人が声をかけた。
さあ、大先輩。ここは年長者としてしっかりと役目を話して下さいと後ろから突くと、え、俺が?という顔をしながらこちらを向く。頼りない男だ。
「あー、そこの人。そうそう、あんた。ここどこ?」
やっぱり頼りない。呆れた顔をした真人が
「自分たち、違う場所からこの草原に飛ばされてきたんです。ここがどこで、どうすれば自分たちのいた場所へ戻れるかその方法を知りたいのですけど。」
男の人は困ったような顔をして、
「もしかしてあんたたち、渡り人か?」




