表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こっちで元気にやってます  作者: 楠 螢
78/119

朋美の冒険1

真人が出かけて2日が過ぎた。未だに帰ってくる気配がない。

「やっぱり私も出掛けてみよう。」

1人でなにか帰れる手がかりを探してみることにした。

「そういえばミューズ領には南にもう1つ町があったわよね。そっちに行ってみようかしら。」

念の為に置手紙をし、アーヤに鍵を渡してすぐに出かけた。

「ん-、いい天気。よーし、一気に行くぞ。」

風魔法を上手に使い、歩きでロマまでたどり着いた。予定より早く着いたのでマスト行の最終馬車に乗ることが出来た。夕方から出発する馬車には初めて乗った。日が長くなってきたからか、宿泊場所にたどり着くまで日が暮れることがなかった。相変わらずお尻に優しくない揺れだったが、ないよりましのクッションのおかげで何とか耐えられた。

収納から晩御飯を出して食べる。乗り合わせた人たちは皆同行者がいるようで、1人で乗ったのは朋美だけだった。少し寂しい気もするが、さっさと済ませて食後の散歩に出た。

「真人は気配で敵を察知できるのよね。魔法でも出来るって聞いた気がするけど、どうやってするんだろう。」

とりあえず辺りの気配を探ってみようと目を閉じで体の外に向かって魔力を流してみる。何かいるような気はするが、隠れる場所もないようなところなので、何かいるはずもない。目を開けて辺りを見る。やっぱり何もいない。

「んー、誰かに教えてもらった方がいいわね。そういえばマイさんのパーティのリーダーは魔導士だったわよね。」

以前偶然ロザリーヒルであったが、次も会えるとは限らない。

「魔導士と言えばリスデンのランディさん位しか浮かばないわ。他に知り合いもいないし。・・・もしかして私ってボッチかしら。」

あまりに暇で変な事ばかり考える。みんな食事が終わったらしい。それぞれがテントの中に入って行ったので、朋美も休むために自分のテントの中へ入った。


翌朝は早めの出発となった。全員が早起きしたためだ。辺りも明るくなっているし、馬の体調も良さそうなので出発出来ると判断してくれたのだ。全員すぐに馬車に乗り込んだ。

馬車はのどかな草原を過ぎて森の中へ入って行った。


ちょっとここで練習してみようかな。


目を閉じて外に向かって昨日より強く魔力を体の外に向かって放出してみる。馬車に乗っている人の体温を感じる。


あ、これはいけてるのでは?


さらに外に向かって放出する。馬の体温を感じた。もう少し外に向かって放出しようとしたところで、隣の人から声をかけられた。

「大丈夫ですか。具合が悪いのですか?」

慌てて目を開ける。

「いえ、大丈夫です。何ともありません。」

目をつぶっていたのが悪かったらしい。1人で乗ってきたので周りの人が気を使ってくれているようだ。

そのまま馬車は進んで行き、入り口が見えなくなった頃怪しい鳴き声が聞こえてきた。

「魔物がいるようです。自分たちが戦いますので皆さん安心して下さい。」

冒険者らしい2人組の男性がみんなに声をかけタグを見せる。青と緑だ。まだ12~3歳くらいだろうか。駆け出しの2人がどの位できるのか分からないが、とりあえず黙ってみていることにした。服装から見て1人は剣士、もう1人は魔導士のようだ。剣士の冒険者は席を立ち、剣を抜いて構えている。魔導士の冒険者は剣士と背中合わせに立っている。

段々鳴き声が近づいてきた。聞きなれた声だ。朋美も魔力を練って準備している。シュッと音を魔物が馬車に飛び乗ってきた。

「わああぁぁー!」

ワータイガーが剣士の前に姿を現した。その拍子に驚き、剣士は腰を抜かして倒れてしまった。急いで魔導士がワータイガーに向かって火を放つ。ワータイガーはぴょんと軽々と飛んで森の中へ身を隠した。ヒヒーン!馬が暴れ出した。

「どうどう。落ち着け。」

御者は必死になって馬を落ち着かせようとしている。しかし興奮した馬はその場を離れたいらしく、いきなり走り出した。その馬の前へもう一匹のワータイガーが飛び出してきた。

ヒヒーンと鳴いて馬は前足を高く上げ、その場に止まった。飛び出したワータイガーは馬の前足に危険を感じたのか、森の中へ姿を隠した。

グルルルル・・・。

どうやらワータイガーは2匹いるようだ。何とか立ち上がった剣士は震えながら剣を構えている。他の乗客はそれを見て、身を寄せ合って震えていた。朋美は収納から短剣を取り出す準備をする。再びワータイガーが馬車に飛び乗ってきた。今度は頑張って剣を振る。しかしワータイガーは素早く避ける。勢いあまって剣は馬車に切り込んだ。ざっくりと刃が食い込んだ剣はなかなか抜けない。すかさずワータイガーが剣士に向かって鋭い爪を振り下ろした。

「えい!」

魔導士が必死に火の玉を飛ばしワータイガーを追い払おうとするが、火の玉は簡単に振り払われた。余裕の顔をしたワータイガーは剣士に向かって再び鋭い爪を振り下ろした。

みんながもうだめだと思った瞬間、朋美が強い電撃をワータイガーに向かって放つ。

ギャギャギャガー!!!ワータイガーは激しい電撃に身悶え馬車から転げ落ちた。短剣を収納から取り出し炎を纏わせる。それと同時に馬車から飛び降り、ワータイガーの首を一気に刎ねる。若いワータイガーはあっけなくその生涯を閉じた。

グルル・・・グルルルル・・・。もう一匹のワータイガーが攻撃するタイミングを見計らっている。朋美は魔剣の炎を消し、様子を伺いながら収納へ入れる。その瞬間、武器が無くなったと思ったワータイガーが飛びかかってきた。至近距離を外すはずもなく、強力な電撃を浴びせる。

ガガガガガァー。かなりの時間電撃を浴びせた後、朋美は魔法を解いた。ワータイガーはそのまま地面に落ちた。手足は痙攣し口から泡を吹いている。まだ息があるのでとどめを刺さないとまた襲ってくるかもしれない。朋美は収納から再び短剣を出し、そのままワータイガーの首を切った。2匹のワータイガーが地面に転がっているのを見て乗客たちは一安心した。

「冒険者の方だったのですね。」

「助かりました。有難うございます。」

人々は朋美にお礼を言う。駆け出しの冒険者2人は涙目になっていた。朋美は2匹のワータイガーを収納へ入れ、馬車に乗り込んだ。

「君たち勇敢だったね。」

2人に声をかけた。駆け出しの2人はそのまま泣き出してしまった。

「こ・・・怖かったです。有難うございます。」

「このご恩は一生忘れません!」


その後は魔物に会うこともなくマストへ着いた。一応ギルドへ行き、ワータイガーの依頼がないか確認した。

「ああ、ありますよ。この時期は多いのですよ。2体ですね。」

移動の手続きをした後報酬をカードに入金した。

「あ、魔導士のお姉さん!」

馬車で一緒だった2人が声をかけてきた。

「あら、君たちマストに帰ってきたのね。この人と一緒だったの?」

「はい、ワータイガーに襲われたところを助けてもらいました。」

「ああ、先ほどのワータイガーですね。」

「かっこよかったです。電撃でしびれたワータイガーの首を炎の魔剣でスパッと切り落としたんですよ。」

「炎の魔剣?」

これはまずい。火属性が使えることは報告していないのだ。案の定、職員は私の魔法適正をチェックしている。

「トモーミさん、火属性は登録されていませんよね。」

急いで魔剣を取り出し、魔石を見せる。

「ほら、オレンジの魔石なんですよ。魔剣だけは火属性が使えるんです!」

魔石に魔力を込める。

「これのおかげで魔剣だけは火が出るんですよ。ほら君、これを使って炎を出してみて!威力も凄いから。」

魔導士の少年に短剣を握らせる。ボン!天井まで届く勢いで炎が出た。

「ほらね。凄いでしょう。」

さっさと短剣を取り上げて収納へ入れる。

「凄い魔剣ですね。僕が普段使う魔法の3倍以上の威力です。いいなぁ、僕もあんなの欲しいです。頑張ってお金をためて作ります。」

少年は目を輝かせて言った。

「わかりました。火属性は魔剣限定ですね。記録しておきます。」

何とか誤魔化せたようだ。

「そういえばトモーミさんは黒でしたよね。討伐依頼を受けませんか?」

「討伐依頼ですか。」

「はい、春先は冬ごもりしていた魔物が一斉に地上に出てくるのですが、数が多いので国や領が依頼料を出してそれぞれの場所に冒険者を派遣しているのです。まだ募集枠が残っているのでいかがですか?報酬は1パーティに対してなので大した金額ではありませんが、狩った魔物はその人の物なので、依頼にあるものならばかなりお得ですよ。」

特に急ぎの用があるわけでもないので受けることにした。

「ありがとうございます。場所はここから南にある洞窟になります。明日出発する他のパーティと一緒に行って下さい。ここに8時半集合となっています。」

「ちなみに洞窟に潜ってどのくらいかかるのですか。」

「出発はみんなと一緒ですが、中に入ればそのパーティの自由です。その日のうちに上がってくる人たちもいれば、中で何泊かするパーティもいます。討伐最終日は1週間ですので、それまでに戻ってきてくださればいいですよ。」

何とも自由な依頼だ。行くのは一緒だが中では自由行動。こっちもそれはありがたい。今日は早く食事をして早く寝ることにした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ