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こっちで元気にやってます  作者: 楠 螢
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白い獲物

試作品が出来たという事で、2人でガーディアンに来ていた。

「こちらがマサトさんの希望の形で、こっちが武器屋のクルケスさんが勧めた形です。右手だけですが、はめてみて下さい。」

真剣な顔をして真人を見ている。真人は先に自分の希望の手袋に手を通す。ギューッと拳を握る。次に空手の型を作り、動きを確かめる。次に武器屋が勧めた方に手を通し、先ほどと同じことをする。最後に手を握ったり開いたりして先ほどの物との違いを見ている。

「こっちの方がいいですね。動きを邪魔しないです。」

オーディンの顔が急に明るくなった。自分たちのお勧めの方で決めてもらえたからだ。

「手袋の素材は撥水性がいいです。水に濡れて重さが増すとこちらの動きがいつも通りにいかないですから。」

「それならグリーンイグアーナの皮はどうだ?少し値は張るが、雷の耐性もあるからいいぞ。」

親方が言う。

「これですか?余った皮でないよりましだと作って下さったものですが。」

上着を脱いで胸当てを見せる。

「おお、いいものつけてるな。」

「見せてもらってもいいですか?」

胸当てを外してオーディンに渡す。

「凄い綺麗な縫合ですね。無駄がないです。この職人さんは腕がいいんですね。自分もこんなに綺麗に縫えるようになりたいです。」

胸当てを隅々まで見てオーディンはべた褒めする。

「あーそれ、ドルディンさんが作ったものです。」

びっくりして顔を上げる。

「父が作ったものなんですか!?」

「だから言ったろう。お前の父親はいい腕してるんだよ。」

急に目頭が熱くなった。

「早く親父に追い付けよ。」

親方がオーディンの肩を叩く。ハイと小声で頷く。

「グリーンイグアーナはこの辺りでも取れますか?出来れば材料費を抑えたいのですが。」

「ああ、グリーンイグアーナは寒がりだからもう冬眠しているんじゃないか?春先まではほとんどお目にかかれないな。今回の分は諦めてくれ。恐らくこいつは消耗してきたら作り変えが必要だから、その時は持ち込みしてくれ。」

「わかりました。そうさせていただきます。」

「あと、これの製作権をこっちにもらえないかな?もちろんその分安くで提供させてもらうからさ。武闘タイプの武器になる防具として売り出したいんだ。」

「構いませんよ。自分が使っているものがほかの人にも使い勝手が良ければぜひそうして下さい。」

独占する気もないので快諾した。今回は製作権を譲渡という形で安く作ってもらえることになった。仕上がりまで後一週間ほどかかると言われたので、もうしばらく王都に留まることにした。


ギルドに顔を出すと職員が飛んできた。

「よかったです。まだこちらにいらっしゃいますか?」

「はい、後一週間ほどはいる予定ですが。」

「ああ助かりました。先日のビッグフロッグが好評でぜひまたお願いしたいと頼まれたのです。」

指名依頼が来てしまった。2人で顔を見合わせるが、提示金額がいいので受けることにした。

「あの数をあんな短時間で達成していただけるとは有り難いと追加で依頼が来てしまったのです。冬場は中々見つからないし、生息地に行くにも結構時間がかかりますから。」

そう説明しながら手は休まずに動かしている。

「ではよろしくお願いします。」

さっと依頼書を渡された。

「ちなみにこの辺りでグリーンイグアーナがいる場所はありませんか?」

念の為に聞いてみる。

「グリーンイグアーナですか。ビッグフロッグのいる洞窟の先に森がありますが、そこにいるらしいです。最も今の時期は冬眠しているので見つけるのは至難の業ですが。」

「ありがとうございます。」

やはり冬は見つからないのか。しかし時間もあるのでちょっと寄ってみることにした。


「やっぱりきちゃったわね。」

「きましたね、指名依頼。」

再びあの生息地に向かって歩く。

「今度はあの時よりスムーズに仕留められますよ。自分は餌ですから頼みますね。」

歩みも軽やかに、前回よりも早い時間で洞窟にたどり着いた。中も1度行っているので迷わずに進む。川を渡るのも前回同様だ。

「普通の冒険者はこの川を迂回するから時間がかかるのよね。」

「そうですね。この方法ならかなり時間が短縮されますからね。」

あっという間にビッグフロッグの住処の前に着いた。

「さてトモさん、準備はいいですか?」

大きく深呼吸する。

「ええ、いつでもいいわよ。」

魔法を繰り出す準備をして返事をする。


依頼の数を収納にいれ、洞窟から出る。

「前より簡単に終わったわね。あんまり早く持って行くと蛙取りが専門になっちゃうわ。」

「冬眠しているグリーンイグアーナを起こしに行きましょう。1匹くらいは狩れるかもしれませんよ。」

臆病なグリーンイグアーナはおこすと狂暴になるかしら?なんてことを考えながら森を目指す。

「リスデンのあの森みたいね。絶対にいるわね。」

うっそうと茂る森の木々があの日の事を思い出させる。

「どんなところで冬眠しているんでしょうね。岩の陰とか土の中とか。」

それらしいところを見て回る。しかし見つからない。もう少し奥まで行ってみようと足を延ばす。

「ちょっと危なそうですね。諦めて引き返した方がよさそうです。」

「私もそんな気がするわ。でも何にもしないで帰るのももったいない気がするわ。」

散歩に来たわけではないので、手ぶらでは帰りたくない。大きな岩陰を見つけてそこに向かって雷撃を打ち込んでみた。

「何にも出てこないわね。」

諦めて帰ろうとしたら、そこから大きなヘビが出てきた。気温が低いので動きは鈍いが、大きさは5mほどある。

「また凄いのが出てきましたね。」

「うえー、ヘビ嫌いなのに。」

そう言いながらヘビに向かって雷撃を放つ。しかし効いていないようだ。

「爬虫類って雷の耐性が高いのかしら?」

「そうかもしれませんね。」

隙を見つけて真人も攻撃をする。ヘビは長い尻尾を振り回し攻撃してきた。細い木はなぎ倒されていく。

朋美は氷に近い程冷たい水をヘビに向かってかける。流石に冷水を浴びたヘビは先ほどよりさらに動きが鈍くなった。そこへ真人が頭を中心に蹴りを入れ、最後にかかと落としで決めてヘビは完全にノックアウトした。

「これを収納に入れたら中はどうなるんでしょうね。」

「ヘビと蛙・・・想像しないでおくわ。」

5mのヘビを一瞬で収納にいれ、王都に戻って行った。


翌朝朝食を済ませ、先にガーディアンへ行った。あのヘビがグリーンイグアーナの代わりになるか確かめるためだ。作業場にヘビを出す。

「これは見事なホワイトサーペントだな。グリーンイグアーナより貴重だぞ。よく仕留めたな、こんなの。」

工房のみんなが集まってみている。

「これは使えますか?」

「使えるも何も、高級品だぞ。売った方が絶対にいいぞ。」

手袋に使うにはもったいないそうだ。仕方がないので収納に入れる。

「すごいな。あれが入る程大きな収納を持っているんだ。」

みんな感心している。自分たちとしては材料費を抑えたかったのだが、売った方がお釣りがくるらしいのでそうすることにした。手袋は仕上がるのを待つだけとなった。

ガーディアンで言われた通り、ギルドのカウンターに出してみた。職員は目を丸くして見ている。

「渡り人はラッキー数値が高いんですよ。」

リスデンで使った言い訳をここでもする。職員は急いで裏依頼を確認する。

「ありますね。2回ほど更新されています。」

そう言って状態を確認する。

「大きさ、傷、申し分ないです。」

すぐに買取価格を提示してくれた。

「こんなにですか!?」

「はい、ホワイトサーペントは滅多にお目にかかれません。この依頼も数年前から出ていて誰も達成できなかったのです。その為報酬が2回上げられているのです。依頼も3m以上なので、5mもあればこの位で引き取ります。いかがですか?」

全く問題ないのですぐにOKした。大金なのでカードに入金して、今日は休むことにした。

「ガーディアンの人たちが高級品だという訳ですね。」

「白いウィーゼルルも高かったけど、こっちって白いものは高いのかしら?」

「きっと手に入りにくいから高いのでしょうね。」

確かに白いウィーゼルルは見つけにくいから高いと言っていた。ホワイトサーペントも滅多にお目にかかれないと言われた。

「白・・・か。ラッキーカラーかな?」

「それじゃあ今日の昼は白いものを食べに行きませんか?」

真人が箸ですするようなしぐさをする。うどんだ。

「行く行く!」

ランチにうどんを食べにミヤコまで足を延ばした。

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