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こっちで元気にやってます  作者: 楠 螢
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渡り人の記録とマリウスの仕事

マリウスは資料を見ながら真人の話を思い出していた。

「戻ってきた・・・か。こちらから渡った人の記録はないにしても、そういった話を聞いたことはあるな。」

こちらからどこかへ渡る時は、やはり朋美たちと同じように地面に丸い魔法陣が現れ眩しい光を放ち人々を連れていく。渡った先がどこなのかは当然分からない。

「しかし渡れたとしても意図的ではないからな。渡る方法を見つけることはまず無理だろう。しかも渡る先も分からないし。」

こちらに渡ってきた人の記録を見る限りでは、いつも同じところではないようだ。髪の色、瞳の色、肌の色。どれも統一性がない。

「この人は凄いな。尻尾が生えていると書いてある。私たちと容姿も違うぞ。」

王歴841~850年は渡り人の数は7人。

「マサトたちのように一緒に来た人が1組か。」

記録には渡ってきた時期や職業適性、その後の生活の場所などが記録されている。

「さすがに50年も前だと亡くなっている人もいるな。」

7人だとあっという間に見終わった。851~の記録を見る。

「あ、この女性かな。カヨ・・・ん?メモが挟まっている。」

それを開いて読んでみる。

『隣に住んでいたお婆さんと一緒に来た。お婆さんは戻ってきたと言ってすぐにいなくなった。お婆さんは緑の目をした人だった。』

「緑の目?こっちには多い人だな。」

記録をパラパラと見る。

「渡ってきた人の中に瞳が緑の人はほとんどいないな。本当にこっちから渡った人なのかな。」

呼び鈴を鳴らしメイドを呼ぶ。扉をノックし、メイドが入ってきた。

「お呼びでしょうか。」

「戸籍課から王歴861年以降の渡り人の記録も借りて来てもらえないか。すぐに返すと伝えてくれ。」

かしこまりましたと言ってメイドは下がる。マリウスは紙に情報を書いていく。

今が王歴900年、841~の10年は6回で7人、851~の10年は4回で4人か。特に一定の法則もなさそうだな。」

真面目なマリウスはすっかりこっちの事に夢中になっていった。


「いたたた・・・。昨夜は飲み過ぎたな。」

二日酔いで出勤したルイーシュを仲間がからかう。

「飲み過ぎるほどいい相手と飲んでたのか?」

「おー、今度俺たちにも紹介しろよ。」

そんなんじゃないぞといいながら警備隊の控室を出る。上官のマリウスに今日の予定を報告するために部屋を訪れる。

「マリウス上官はどうせまた研究機関に直行しているんだろう?」

代表が扉をノックする。

「入れ。」

マリウスの声が聞こえる。みんなは扉を開けて中へ入る。

「おはようございます。本日は王城周辺の見回りと第二王女殿下の視察の同行を行います。」

「そうか。いつものように気を引き締めて活動をするように。」

マリウスの言葉にみなハイと返事をし、部屋を出る。ルイーシュは積んである渡り人の記録を見て、真人が訪ねてきたことを知る。

「ああ、ルイーシュ。こっちへ来い。」

昨日真人と飲んだことがばれたのかと思いドキッとする。


ハイと返事をしてマリウスの前へ行く。

「渡り人はほとんどが1人でこっちへ来ているが、たまに2人で渡ってくることもあるのだな。しかしマサトたちは3人だぞ。」

3人で来たとは聞いていなかった。

「マサトとトモーミの他にあと1人いるという事ですか。」

「ああ、しかしこっちでの生活に慣れないのだろうな。借金を作って今強制労働しているようだ。」

「仲間なら助け合って生活していってもよさそうですよね。マサトたちと知り合いではなかったという事ですか。」

「さあ?借金はカジノで作ったみたいだから、見捨てられたのかもしれないぞ。」

記録にはそんなことまで載っている。こっちの世界には渡り人のプライバシーはないのかもしれない。

「891~900年の間に渡ってきた人はこの3人の1回しか記録がない。年々減っているわけではないが、1回は不自然だな。本当にいないのだろうか。」

マリウスは顎に手をあてて考えている。

「さあ、自分にはわかりかねますが。」

二日酔いがばれないようにいつもより小さな声で返事をする。

「まあそうだな。では仕事に戻ってくれ。酒はほどほどにな。」

やっぱりばれていたようだ。


マリウスは午後には隊長に呼ばれて執務室へ行く。

「マリウス・ジェント。そろそろ現場に出てきちんと自分の業務をこなしたまえ。研究機関の部屋に行ったきりだそうじゃないか。」

流石に何か月も本業をほったらかしにしているので上からお叱りを受けた。

「申し訳ございません。渡り人がもたらす技術が大変珍しく、つい興味がそちらに向いてしまいました。」

マリウスは深々と頭を下げる。

「確かに渡り人の技術は目を見張るものがある。しかし10年程度であんなに進歩するものか?」

隊長もそのあたりは不思議に思っているらしい。

「今朝調査依頼で同行した渡り人のマサトが私を訪ねてきました。こちらから渡って戻ってきた人がいるという話を聞いたそうなのですが、隊長はなにかご存じありませんか。」

話題をさっとすり替える。

「戻ってきた?聞いたことないなぁ。それは本当の事なのか?」

隊長も興味があるようだ。

「真偽が定かではありませんが、記録にこのようなメモ紙が挟まっておりまして。」

さっと先ほどの紙を差し出す。

「49年前にお婆さん。もう亡くなっているだろうが、もしかしたらその家族はいるかもしれないな。しかしこれを調べてどうするのだ?」

「実はマサトと一緒にやってきた渡り人があちらに帰る方法を探しているらしいのです。それでこちらから渡って帰ってきた人の情報が欲しいと頼まれまして、今探しているところです。」

「元の世界に帰る方法?そんなものがあるのか?」

「いえ、わかりません。そんな話は今まで一度も聞いたことがないので。」

「もし見つかれば自由に行き来が出来るようになるかもしれないという事か。そうなればこちらに有利な人材をあちらから来てもらうことも可能だな。」

サンシュテール王国は常に周りの国に狙われている。戦争になった時の為により能力の高い人材を欲しがっている。

「はい、そうですね。」

「ところで、訪ねてきたマサトという渡り人はどんな能力を持っているのだ?」

「武闘タイプの冒険者ですでにブロンズになっています。一緒に来たトモーミは魔導士です。魔力がかなり高いようですね。」

「そうか。是非戦力としてこちらに残ってもらいたいものだな。」

「マサトはこちらに残ると言っています。問題はトモーミの方ですね。」

「ふむ、よし分かった。しばらくそれに協力してやれ。しかしほどほどにな。」

「ありがとうございます。」

マリウスは深々と頭を下げ、隊長の執務室を後にした。

「そもそも何故渡り人はこちらの人間より能力が高いのか?渡り人の子孫もやはり能力が高いのだろうか。」

隊長もこの件が気になりだした。

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