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こっちで元気にやってます  作者: 楠 螢
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朋美、漁師再び

「魔魚は獰猛で魔力に寄ってくる習性がある。魔力の高いものを好む傾向があるので魔導士や錬金術師は格好の餌食である・・・って、私餌じゃない!」

「ははは、魔魚はトモさんで釣れるんですね。」

真人はお腹を抱えて笑っている。

「もう!冗談じゃないわよ。湖に落ちたら食べられちゃうじゃない!あの時職員の人が私を見たのはそのせいだったのね。」

いくらか怒りが収まった朋美は疑問を口にした。

「魔魚は魔力に寄ってくるのなら、船を借りなくても陸から魔法でおびき寄せられるんじゃない?」

確かにそうだ。朋美の豊富な魔力ならそれが可能かもしれない。

「試してみましょうか。」

魚捕りの網を購入して、ラコンへ向かう途中で湖へ寄った。


「この辺りはよさそうね。」

足場がしっかりあり、湖はそれなりの深さがある。魔魚は体長が50cmくらいなので、あまり浅いと陸の方へ近づいて来れない。

「さーて、餌をあげるわよー。」

水面に向かって短剣をかざし、少しずつ魔力を流していく。短剣がほのかに光りだす。

「どの魔法でもいいのよね。やっぱり雷がいいかな。」

ザバーン。言ってるそばから魔魚が食いついた。正確には短剣から溢れる魔力に食いついたのだが。朋美はびっくりして短剣を引っ込めた。魔魚はそのまま水中へ逃げていった。

「あーびっくりした。でもこれでいけそうね。」

「そうですね。トモさんは短剣を持って行かれないように気をつけて下さいね。次は網ですくいますから、短剣をもう少し上に構えて下さい。」

そうだ。この短剣自体が魔剣なのだから、魔魚に持っていかれる可能性もある。

「大事な短剣を取られてなるものですか。さあ、魔魚漁始めるわよ。」


面白いように魔魚が釣れる。入れ食い状態だ。

「はー、疲れた。少し休憩。」

「自分もさすがに疲れました。」

依頼は魔魚50匹。ロザリーヒルの料理屋からの依頼だ。魔石は外してもいいとのことだ。魔魚は頭に魔石を持っているので、仕留める時にナイフで頭を刺して魔石を取り出すといいのだ。美味しいらしいので少し余分に釣った。

「この湖を定期船でも走らせればいいのに。そしたらマストからロザリーヒルまですぐに行けるのに。」

湖横断。向こうの世界なら当たり前のことだ。

「この世界の動力は魔石ですからね。そんなもの浮かべたら、真っ先に魔魚の餌ですよ。」

「確かにそうね。」

違う動力が開発されたらそれも叶うのだろうか。

「トモさんこれどうぞ。」

真人が小さな箱を差し出した。

「なあに、これ?」

受け取って箱を開ける。箱の中には四角い茶色の塊が入っていた。

「キャラメル?こんなのどこで手に入れたの?」

「宿の売店に売ってましたよ。やっぱり甘味は高級品なんですね。でもこれで疲れが取れるでしょう。」

早速1つ口に入れた。甘くて美味しい。

「真人も食べる?」

「それじゃあ1ついただきます。」

箱に手を伸ばしキャラメルを1つとり、それを口に放り込む。

「うん、甘いですね。そういえばこっちに来て初めて食べる甘味ですね。」

確かにそうだ。こっちで甘い食べ物を見たことがない。

「昔は甘いものは高級品だったそうですから、多分それと一緒なんでしょうね。」

そう言って真人は立ち上がった。

「そろそろ行きましょうか。街道を行かないと足場が悪いですから。」


身体強化をかけながら歩いて移動する。ラコンで早めの夕食を軽く取り、さらに先へ進む。陽がすっかり落ち、辺りが闇に染まる。街灯もないので真っ暗だ。

「曇っていて星が見えませんね。せっかくのキャンプなのに残念です。」

満天の星空を見ながらキャンプと思っていたが、あいにくの曇りだ。それでも湖畔でキャンプは外せない。

「星が見えないなら暖を取るのもかねて、おっきなキャンプファイヤーにしましょうよ。」

大きく手振りをする。

「いいですね。魚も焼きますか。」

街道から湖に向かって歩き出す。やっぱり暗くて何も見えない。

「ああもう!足元も見えないわ。ちょっと待ってて。」

短剣を抜いて火の魔法を使う。剣が炎を纏って松明のように周りを照らす。

「これなら見えるわ。さあ行きましょう。」

ツボに入ったのか真人がクックと笑う。

「絶対そんな使い方はしませんよ。」


浜辺のような場所に着いた。周りは見通しがいい。

「ここにしましょうよ。」

「そうですね。ここにしましょう。」

すぐにテントを張る。湖側に大きな焚火をつけて暖を取る。

「水の側はやっぱり冷えるわね。焚火が暖かい。」

「魚もいい具合に焼けましたよ。ハイどうぞ。」

軽く塩を振って焼いた魔魚にかぶりつく。

「うーん、美味しい。泥臭くないわね。」

「淡白な白身魚ですね。いくらでもいけそうです。」

食べ過ぎてはいけないので、1人2匹だけにする。

「今日は自分が起きていますから、先に休んで下さい。」

「そう?それじゃあ遠慮なく。お休みなさい。」

テントに入って横になる。急に前に見た夢を思い出した。あれは何だったんだろう。多分私が小さなころのことだと思うんだけど、本当にあんなことがあったのかしら。瞼を閉じていい夢が見れるようにと考える。段々意識が薄れ、やがて眠りに落ちた。


「トモさんそろそろ交代です。」

テントの外から声がする。

「ううん、もうそんな時間なのね。」

眠たい目を擦りながら布団から起きる。簡単に身だしなみを整えてテントから出る。

「お待たせ。ゆっくり休んでね。」

「はい。ではお願いします。」

テントに入ろうとしたその時、真人は湖の方を振り向いた。

「どうしたの?」

「何か嫌な感じが・・・。」

2人でじっと湖を見る。ぼんやりと光が見える。

「何だろう、あれ。」

何かを引きずるような音がする。焚火の明かりの向こうに見える光が段々近づいてくる。空にかかっていた雲がはれた。月明かりに照らされて、数匹のオオサンショウウオのようなものが砂地をズルズルと這っていた。大きさは1mくらいだろうか。


「ひゃっ!何あれ。」

大きな口をパクパク開け、ゆっくりと近づいてくる。

「グリーンイグアーナの件があるから、あまり近づくと危険かも。」

口から酸を飛ばしてくるかもしれない。十分に距離を取ろうと後ろに下がる。ぼんやりと見えた光は、この魔物の目が焚火に照らされて反射していたのだ。冷静になって数を数える。

「5匹ですね。湖から出てきたようですから、雷魔法が効くかもしれません。トモさんいけますか?」

両手を前に出しパチパチと雷を放つ準備をする。

「全体にやった方がいいわね。やあ!」

激しい雷撃がオオサンショウウオたちを襲う。効いているようだ。体をビクビク震わせる。魔法が切れたのを確認した真人は一番近い所にいるものの顔面に向かって右手の拳を振り下ろす。ベチャッと音がし、真人の腕は魔物の舌に絡まった。

オオサンショウウオは大きな口を開けて舌を出し、真人の腕を捉えて口の中に引き入れたのだ。引き抜こうと必死になるが、獲物を捕らえた舌から腕を外せず、大きな口も開かない。

「真人!」

朋美はすぐに短剣を抜き、炎を纏わせ真人の手を食べているヤツを切りつけた。

スッパリと顔の1/3が落ちた。引き込んだ舌の力が無くなったのか、真人は腕を引き抜くことに成功した。しかし顔が1/3無くなってもまだ動いている。

「頭を切り落として下さい。」

前から狙うのが危険だと悟った真人は、横から頭を切り落とすことを提案する。

「自分が囮になります。お願いします。」

真人はオオサンショウウオの前に距離を保って立つ。のそのそと真人に向かって歩いてくる。幸い相手の動きが鈍かったので、1匹ずつおびき出すことに成功した。しかし仲間がやられていくのを見ていたからか、1匹は湖に逃げていった。

「この魔物は表面に少しぬめりがありますね。舌は随分と長いです。」

解体をしながら観察している。

「一応入れてもらえますか?」

まだまだ余裕があるので大丈夫だが、ちょっとグロテスクだ。出来るだけ触れないように収納に入れる。

「雲がはれて満天の星空が見れますよ。よかったです。湖畔でキャンプが最後にこんな星空を見れて。」

空を見上げて真人は言う。私もつられて空を見上げる。

「うわー、すごいわ。さっきの気持ち悪いもの全部綺麗に忘れられるわ。」

しばらく2人で空を見上げていた。それから真人は視線を落とし、空を見あげる朋美の顔をじっと見ていた。

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