即席パーティ
エールで乾杯した。この町は氷室があるので冷えたエールが飲める。
「苦いけど旨いですね。リスデンで飲んだエールとは大違いです。」
真人がゴクゴク飲んでいる。
「この味がわかるなんて、いける口何だねぇ。」
早速マイが絡んでいる。
「『小さな花かご』は料理は美味しいんだけど、私たち飲むからこっちのつまみの方が好きなのよ。」
メルフィラが言う。2人は自分たちの好きなつまみをどんどん注文している。
「忘れないうちに護衛料渡しておくね。」
テーブルに大銀貨を2枚置く。
「ここはあたしたちのおごりだからどんどんやっちゃって。」
ゴールドロリポリが高値で売れたのでマイはご機嫌だ。
「そういえばトモーミは剣も使えるんだよね。あれの魔石で剣を作ってもらったらどうだい?値は張るけど魔石を使い捨てにすることもないし、今持ってる短剣を真人にやったら解体に使えるからいいんじゃないの。」
確かにその方がいいかもしれない。ゴールドロリポリの魔石は魔力を貯めることが出来るものだそうだ。以前マリウスが言っていたやつだ。
「グリージアに腕のいい武器屋があるんだ。紹介してやるから明日行かないか?魔石が自前だから市販の魔剣より安く手に入るはずだよ。」
魔剣は高価だと聞いている。でもそれはほとんどが魔石のせいらしい。後は鍛冶屋の腕だ。魔石からいかに効率よく魔力を流せるように武器を鍛えられるかという事だ。
「よろしくお願いします。」
「でも薬草は大丈夫なんですか?」
「ああ、あれは乾燥させて持ち歩くから、今部屋に干してるのよ。」
2杯目を飲みながらメルフィラが言う。私もお代わりを注文する。
私のエールと一緒にテーブルにつまみの料理が運ばれてきた。その中に餃子のようなものがある。
「これね、ワイルドボアのミンチが入っているのよ。このたれに付けて食べると美味しいんだ。」
ワイルドボア、大人気だ。ここでも依頼があるのかな?食べながら疑問が生じた。
「乾燥終わるまでここにいるんですか?もしそうならマイさんギルドの依頼を受けるのかしら?」
マイはエールを飲む手を止めて、
「うん、そうよ。宿は2週間取ってあるから、こっちで依頼受けないと貧乏になっちゃうのよね。」
再びエールを飲む。
「その間メルフィラさんはどうするんですか?」
「私はこっちで寄るところがあるから大丈夫よ。よかったら一緒に出掛けてみない?」
こっちからお願いしてみようと思っていたら、向こうから提案された。
「どう?2人ともタイプが違うからいけると思うけど。」
「よろしくお願いします。」
2人そろって頭を下げた。心強い助っ人だ。色々教えてもらおう。
翌日は8時に待ち合わせをしてギルドへ向かった。メルフィラはいない。
「一応こっちで依頼を受けてから出発しようね。」
ブースのパネルを慣れた手つきで触っていく。
「はい、即席パーティの設定したからタグかざして。」
ピッとパネルに呼び込ませる。
「いつまでにしておく?一週間でいいかな?」
自分たちだけで情報収集も始めたいから、それでOKした。
「2人の強さだとこれくらいいけるし・・・。」
画面を動かし、依頼をどんどんチェックしていく。あっという間に4件の依頼を受諾した。
「期限と強さからいくとこれでいいわ。さあ、カウンターに行って依頼書もらってグリージアに移動するよ。」
仕事が早い。これが本来の黒かと感心した。
馬車に1時間揺られてグリージアに着いた。綺麗な整備された街並みだ。
「あの丘の上の方は近寄らないことね。貴族のお屋敷がいっぱいあるから。」
上流階級のお住まいだ。貴族はお近づきになりたくない。言いつけは守ろう。
「こっちだよ。」
鍛冶屋街だ。迷いなく進む。
「ここだよ。親父さん、お客さんだよー。」
扉を開けて入っていく。
「おう、マイじゃないか。今こっちに来てるのか。」
手を止めて入口まで来てくれた。
「お、新しい仲間か?」
「うん、即席パーティのトモーミとマサト。」
初めましてと挨拶をした。
「こちらは名工アルコス!」
「おいおい、随分と持ち上げるな。何か下心があるんだろう。」
ペロっと舌を出し
「えへ、ばれた?」
と言いながらマイは短剣を出すように言う。
「へえ、防具屋にしちゃいい物作るじゃねえか。」
「それでね・・・。」
次に魔石を出すように言う。
「おいおい、これは!」
やはり珍しいようだ。
「これで彼女に剣を作って欲しいのよ。」
じろりと私を見る。
「その体格じゃ、大剣は無理だな。」
ゆっくりと私の周りを一周する。
「ちょっと利き手の腕だしな。」
右腕を出す。手首をつかみ、肉のつき方を確認している。次に警棒のようなものを数本出され、握ってみるように言われた。
「どれが握りやすかったか?あと予算は?」
「オーダーメイドで作ったことがないので、どの位するのか相場がわかりません。」
「そうか。あんたのその感じだとこの位からここまでの予算で作れるな。」
金額を提示された。
「この金額の幅は何ですか?」
「金属の種類だ。それと飾りだな。」
真人と顔を見合わせる。
「私の希望としては、あまり飾りはなくていいです。握りやすくてあまり重くなくて・・・。」
「ああ、あんたの腕にあった重さにしてやるから大丈夫だ。」
さらさらとこちらの希望を紙に書いていく。
「よし、分かった。この位で仕上げてやる。」
提示された金額はゴールドロリポリと同じくらいだった。
「いいお値段ですね。」
「だが一番いい金属だぞ。本来ならこんな金額じゃ作れないぞ。ランクを一つ下げるとこの位になるがな。」
一気に下がった。それでお願いしようとすると、真人が口をはさんだ。
「いえ、先ほどのでお願いします。」
「だって高いよ。」
慌てて止めようとする。それでも真人は続けて言う。
「でもこれで作れば、この先剣を買う必要が無くなりますよね。」
「おう、そうよ。よっぽどでなければ買い換えることはないな。研ぎに出す回数も減るぞ。」研ぎ・・・今の短剣は一度もしていない。
「親父さん、この短剣の研ぎも入れてその値段にしてあげてくれない?」
マイが交渉する。
「研ぎ位ならいいぞ。どうする?」
みんなが勧めてくる。
「よろしくお願いします。」
ペコリと頭を下げた。
「よし、任せな! 2~3週間くらいで仕上げてやる。前金で半分入れてくれ。」
カードを出して支払いを済ませた。
「楽しみに待ってな!一旦2週後に来てくれ。研ぎはやっとくから、夕方には出来上がってるはずだ。」
アルコスはそう言って伝票を書いて渡してくれた。
「あたしは2週間後いないけど、トモーミの剣はよろしく頼むね。」
マイは陽気に言った。
「この辺りにいるはず・・・。」
私たちは町を出て草原にいる。雪が積もる前にシザーモォール駆除して欲しいという依頼だ。依頼書で見たシザーモォールとは、あちらでいうモグラのようだ。長いしっぽの先にサソリのようなハサミを持っている。シザーモォールは冬の間に土の中で繁殖するので、絶対数を減らしておきたいのだ。
「お、あったあった。トモーミ、こっちこっち。」
マイが手招きをする。
「この穴に魔法ぶっ放して。奴らが出てくるから。」
言われた通りにする。草原のあちこちの穴からシザーモォールが飛び出してくる。マイが飛ぶように切りつける。真人も競うように穴から飛び出したシザーモォールを追いかける。あっという間に依頼の20匹を退治した。
「いいねー、早いね。こいつの討伐部位はこの尻尾だから、切り取って袋に入れるよ。後は魔石を取り出すだけ。魔石はここにあるから。」
腹部を切り、大剣を中に突っ込む。くるりと剣を返して魔石を取り出す。
「はい、次行くよー。」
あっという間に1件終わってしまった。
次の依頼の目的地へ移動する。迷うことなく進むマイに朋美は尋ねる。
「よく来るからですか?随分とこの辺りに詳しいですよね。」
マイは立ち止まった。
「んー、そうね・・・。」
また歩き始めて、
「あたしもメルフィラも、こっちの出身なんだ。」
地元だったら詳しいのも納得する。でも何故宿屋に泊まるのだろうか。マイはそのまま喋らなかったので、朋美もそれ以上は聞かなかった。
「今日中に4件とも終わるとは思わなかったわ。それじゃあ明日も同じ時間ね。」
そう言ってシェスナのギルドで解散した。
「凄かったね。こんなにハードだとは思わなかったわ。」
「はい、すごく疲れました。温泉でゆっくりしたいです。でもトモさんは温泉でも彼女たちに会うかもしれないですよね。」
そうだった。共同温泉だから同じ時間になるかもしれない。
「先に食事にする?終わってゆっくり入りたいから。」
真人も頷いて宿屋に戻った。




