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こっちで元気にやってます  作者: 楠 螢
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護衛依頼

「そうですか。でも薬師の方なら薬草も詳しいですよね。自分たちの依頼の仕事も同時進行でいいのなら受けてもいいのではないでしょうか。」

「そうね。この辺りの事詳しそうだったし、受けちゃおうか。」

「決まりですね。」

部屋から出て下のレストランへ向かう。

「そういえばこっちの人には朋美って発音は難しいみたいね。」

「どうかしましたか?」

「名前を聞かれたのでトモミと答えたら『トモーミ』って返ってきたわ。登録も『トモーミ・オーノ』になっているし。」

階段を降り、2人が見つけやすそうな入口に近い4人掛けの丸テーブルの席に座った。その時テーブルの前を通ったこげ茶色の髪の女性に目がいった。彼女は食事が済んだ後らしく、会計を済ませてそのまま出て行ってしまった。

「トモさんどうしました?」

私が目で追っていたので真人が気になったようだ。

「あ、何でもないの。ちょっと今の人が気になっちゃって。」

こっちに知り合いはいない。だけど何だろう、この感じ・・・。

「あ、いたいた。お待たせ。」

入れ替わりに2人が入ってきた。私たちは席を立って2人を迎えた。

「お誘いありがとうございます。こちらは私のパートナーの真人です。」

「初めまして。よろしくお願いします。」

礼儀正しく挨拶をする。

「私は冒険者のマイ。こっちは薬師のメルフィラ。よろしくね。」

フランクに挨拶をし、さっさと席に座った。

「で、よろしくってことはOKってことでいいのかな?」

マイが言う。

「はい、今自分たちがギルドで受けている依頼も遂行しながらであれば。」

「何の依頼受けてるの?」

依頼書を見せる。それを手に取りマイが言う。

「ふーん、どっちも大丈夫よ。私たちが行く予定の道中にあるから。」

依頼書を私たちに返し、護衛の内容を話し始めた。

「メルフィラが作りたい薬の材料を取りにあるところに行くんだけど、この子薬草取り始めたら周りが全く見えなくってね。危ないのよ。それで道中と採取時の護衛をお願いしたいの。明日1日で終わると思うけど、場合によっては野宿もあるわ。」

メルフィラはえへへといって頭をかいてた。

「あたし1人だと場所によっては対処が難しくってね。あいつら群れで出てくるから。」

群れる魔物が出るところに行くのか、この辺りにはどんな魔物がいるのか気になるところだ。丁度店の人が通ったので注文をするために呼んだ。

「あたしはこのサフランスープのトリプルセット。」

「私はメルメルコッケの卵ソース掛け。あなたたちは?」

相変わらずメニューが分からないので、同じものを注文した。

「ところで2人のランクは?あたしは黒だけど。」

「私も黒です。」

「自分もです。」

ヒューっと口を鳴らす。

「楽勝だね。明日は朝早く出発するから、昼食は各自準備してね。もし明日中に帰ってこれなかったら晩御飯は現地調達で。」

「ところで護衛依頼という事は、報酬はいくらほどですか?」

しっかり真人が聞く。

「あ、ごめんごめん。大銀貨1枚ずつでどう?少し安いかもしれないけど、そっちの依頼もちゃんとこなせるし。」

ギルドを通せばもっと高い金額になるのだろう。見ず知らずの土地だし、色々教えてもらえればいいかとその金額で了承した。

「よかったー。黒だから断られるかと思っちゃった。」

メルフィラは安堵の表情を浮かべる。

「お待たせしました。サフランスープのトリプルセットです。」

テーブルに置かれたのは、カレーだった。小鉢が3つあって、それぞれ違うカレーが入っている。それにサラダとパンがついていた。

「こっちがメルメルコッケの卵ソース掛けね。」

見た目はチキン南蛮だ。スパゲティ麺が付け合わせに添えられていて、スープがついている。

「あたしたちが泊ってる宿の御飯もいいんだけど、この店のこれには負けるのよね。」

マイは早速パンをちぎってカレーにつけ、それを口に放り込む。

「んー、このピリピリがたまらない!」

真人もまねをして食べる。

「うぐ・・・。」

慌てて水を飲んでいる。かなり辛かったようだ。

「あはは、これは1つだけ激辛なんだよ。」

笑いながらマイはどんどん食べる。真人は他のカレーに手を付けた。

「明日は朝7時に西門によろしくね。」

そう言ってメルフィラも食べ始めた。私もチキン南蛮もどきを口にした。


朝は女将のフィフィーさんがモーニングを作っていた。頼んでいたお弁当も出してくれた。

「これでいいのかい?」

サンドイッチだ。簡単に作れるようにハムサンドをお願いしておいた。作ったことがないらしく、絵に書いて説明した。

「はい、これでいいです。ありがとうございます。」

サンドイッチの代金を払い、すぐに収納へ入れた。

「あとこれ、うちの朝食。」

トレイにパンと目玉焼き、サラダと紅茶が乗っていた。それを受け取り、2人掛けの席へ座った。

「昨日の食事もそうだったけど、ここの料理も味付けあっちに近いよね。」

「そうですね。でも紅茶は薄いですよ。」

小声で会話する。

「ところで今日行くところ、いったいどこなんでしょうね。」

「特別なところなんですって。でも場所は教えてくれなかったの。あまり手に入らないから、人に知られたくないとも言ってたわ。」

「それなら余計な詮索は不要ですね。こっちは自分たちの薬草が手に入ればいいですから。」

食事を済ませて私たちは西門へ向かった。

私たちの方が早かったらしい。しばらく待っていると2人が来た。

「お待たせー。それじゃあ行こうか。」

マイは赤い鎧に短めのマント、背中に大剣を差している。メルフィラは冬用の茶色いコートを着て、背中にリュックを背負っている。リュックといっても巾着のようなものだ。外出の手続きをして目的の薬草が生えている場所へ向かって歩き出した。


「ところで目的の薬草が生えているところはどこですか?」

「焦らないの~。先にそっちの依頼の薬草をとりましょう。こっちの目的の薬草はその先にあるから。」

ちゃんと私たちの依頼の事は覚えてくれていたようだ。

町を出てひたすら西へ進む。リスデンから来た道を戻っているようだ。しばらく進むと、進路を北へ変更した。かなり歩いたところに小さな池がある。

「ほら、この池の周りにあなた達の依頼の薬草があるわよ。ちゃんと摘んでね。」

そう言ってメルフィラも屈んで薬草を摘み始めた。私たちも依頼の分の薬草を摘むことにした。マイは薬草摘みはせずに周りを見ている。

薬草を摘み終えた私たちは収納へ入れる。

「トモーミって収納持ちなの!?」

見ていたマイが声を上げる。メルフィラも振り返ってみる。

「収納!もしかして、私の摘んだ薬草も入る?」

2人は収納がないらしい。私の収納に空きがあれば入れて欲しいそうだ。

「構いませんけど、もし私に何かあったら取り出せませんよ。」

「大丈夫。この辺にはそんなに強い魔物は出ないから。」

メルフィラはいそいそと薬草を小袋に入れて、私に渡した。

「これ、お願いね。よかった、背中が重くならずに済むわ。それじゃあすぐに行きましょう。」

そう言ってスキップして進んで行った。私たちはその後をついて行く。

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