グリーンイグアーナ
やっと門へ着いた。ガルシアさんが私に気が付いた。
「おい、大丈夫か?腕をケガしてるじゃないか。すぐ治療院へ!」
私が1人だったので付き添ってくれた。
治療院に入ってすぐ椅子に座らされた。院の女性が腕を見る。
「酸にやられましたね。」
治療がしやすいようにと服を肩から切られた。棚から取り出した何かのクリームを傷口に塗る。少ししみる。
「これから治療をしますね。大丈夫ですよ。このくらいの傷なら綺麗に無くなりますよ。」
掌を火傷の上にかざす。暖かい空気が流れてくる。しばらくして、傷が綺麗に無くなった。
「有難うございます。」
深々と頭を下げた。
「仕事ですから。」
にっこりと微笑んだ彼女は紙に何かを書いている。そしてその紙を私に差し出した。請求書だ。私は火傷の治療に500ペイ払った。
遅い時間だったのでそのまま宿に戻った。食欲もない。せめて汚れた体は洗おうとシャワーを浴びる。
「黙っている方がいいよね、絶対。」
そのまましゃがみ込んだ。温いお湯が背中にあたる。
「どうしてこんな時に真人はいないんだろう。」
シャワーと一緒に涙が流れ落ちた。
先にギルドに行くことにした。依頼達成とトカゲを換金しないと服や防具が買えないからだ。連泊の宿代も残しておかないと。真人は7日もいないのだから他に頼れる人はいないし。
「佐藤さん・・・無理よね。私たちに借りに来るくらいだから。」
真人の言葉が思い出される。
「そうよね、自力で何とかできないといけないのよね。」
マントで服が破れた左腕を隠しギルドの扉を開く。リズが私に気づき声をかける。
「おはようございます。まさかもう達成されたのですか?」
聞くとあの依頼は1日では無理だと判断しての期限だったらしい。カウンターに薬草を出す。リズが鑑定する。
「間違いないです。ではお支払いしますね。」
現金で受け取った。
「でも、この量を1日で採取したという事は、こちらからお教えした場所以外で採取なさいました?」
鋭い。どうせ解体に出すのだからかいつまんで話をした。リズは真っ蒼になった。
「よく無事でしたね。戦うにしても逃げ切るにしても今のトモーミさんだとかなり無理があると思うのですが。」
氷漬けにしたとは言えない。水魔法を覚えたことは絶対に知られたくないから。
「いやぁ、運が良かったのかな?渡り人はラッキー数値でも高いのかな~。」
と適当に誤魔化した。
「あ、でも火傷したのよ。治療院で治してもらったんだけど、そっちの出費が痛かったわ。」
これ以上聞かれるとぼろが出そうだったので、そそくさと解体所へ向かった。
「ほう、これはすごいな。随分と立派なグリーンイグアーナだな。」
解体所の人が感心していた。
「こいつの皮は貴族に結構人気なんだぞ。傷もほとんどないな。いい値が付くぞ。」
あの後収納から出して氷は溶かした。水魔法の痕跡を残さないためだ。
「これが収納に入っていると思うと気持ち悪かったです。」
「そうか?でもこっちはいいから気持ちはよくなるぞ。」
指でお金の形をして見せてくれた。これは万国共通なのか?クスクスと笑ってしまった。
「この大きさなら魔石もかなり大きいだろう。楽しみに待ってな。」
「はい、お願いします。」
「何?グリーンイグアーナを!?」
「はい。私もびっくりしました。トモーミさんのレベルだと絶対に無理だと思うのです。」
「倒した方法は聞いたか?」
「それが運が良かったとだけしか言われないのです。」
「グリーンイグアーナは雷の耐性がある魔物だからな。今の彼女の能力だと倒せる可能性はほぼ0だろう。剣のスキルが高いのか?」
「それは分かりません。訓練をした時にはそこそこだったと担当から聞いていますが。」
そこそこで倒せるレベルではないはずだ。急激にレベルが上がったのか?
「では後で解体所へ行ってグリーンイグアーナがどんな状態だったか聞いてくれ。皮は依頼があったと言って引き取るように。」
「かしこまりました。」
リズは部屋を出る。
「雷以外の属性の魔法を覚えたのか?昨日は水の日だったな。」
ギルドマスターは煙草に火を付けながら呟いた。
かなり大きな魔石が出てきた。皮も綺麗にはぎとられている。どちらも引き取ってもらえたのでいい収入になった。昨日の件があったので、今日は依頼を受けずに服や防具の買い足しをした。
「あらいらっしゃい。」
イトヤの店長は私のことを覚えていたようだ。
「あらあら、派手にやったわね。同じ服でいいかい?」
新しい服を出してくれた。
「マントはどうする?付加が付いたものを防具屋で買った方がいい気がするけど。」
そんなものもあるのだと知り、お礼を言って店を出た。ローハンの店へ行こうと思ったが、先にティアナの父親の店へ足を運んだ。
「そうか。でも俺の作る防具は魔導士向きではないからな。マントはローハンの店で買いな。」
商売熱心ではないのか?あっさりと他の店を紹介する。
「そういえば、短剣の具合はどうだ?もう切れ味は試したか?」
言われて思い出した。武器なのに防具屋のここで売ってもらったんだった。
「はい、中々よかったです。魔石を使ったからちゃんと魔剣になりました。」
短剣を取り出す。はめていた魔石の色が無くなっていた。
「あ、魔力が無くなったみたいです。」
「魔力を使い切った魔石は広場に回収箱があるからそこに入れるといいぞ。再生したこいつから薬を入れる瓶とかが作れるからな。」
そうだ、今後に備えてポーションも買わないと。昨日みたいに怪我をしたらその場で治療した方がいいものね。
「ところで、魔剣の威力はどうだった?」
「このくらいの木がスパッと切れました。」
手で木の幹の大きさを作って見せた。
「そうか。」
聞いてきた割にはあまり興味がなさそうだ。自分に魔力がないからだろうか。引っ込めようとした手をいきなりつかまれた。
「しっかし、細い腕だな。」
「え、あ・・・。」
「そうだ、今度グリーンイグアーナ狩ってこないか?このぐらいの大きさでいいぞ。代金は払うから。」
手で示してくれた大きさは逃げて行ったトカゲの大きさだ。
「すぐにですか?」
「いや、急いじゃいない。何かのついででいいさ。」
そう言って作業に取り掛かってしまった。その時お客さんが入ってきたので、私は入れ替わりで店を出た。




