調査依頼
ギルドへ行くとすぐにリズに声をかけられた。
「お2人ともこちらへ来ていただいてよろしいでしょうか。」
カウンターの横を通り二階へ上がる。それから長い廊下を通り、更に上へあがる。建物のかなり奥の方へ連れてこられたようだ。2枚扉の部屋の前で止まった。リズは扉をノックし、
「お2人をお連れしました。」
扉を開けて中へ入る。部屋の中には知らない男性が立っていた。
「この方はギルドマスターです。」
リズが紹介する。何故ギルドマスターの部屋へ呼ばれたのか分からなかった。もしかして渡り人だからかと思ったが、それならもっと早く呼ばれていてもおかしくない。座るように言われ、2人でソファーに腰を下ろす。
「呼び出してすまなかったね。実はマサトに仕事の依頼があってね。」
私はついでらしい。席をはずそうとするとそのまま座っていてくれと言われた。
「実は明後日、王都からの調査員が来ることになっているのだが。」
調査員?何のだろう。不思議そうな顔をした私たちにギルドマスターは説明してくれた。
「年に1度、王国の魔物の調査をしているのだ。どこにどのような魔物がいるとか、どの位繁殖しているとか。そしてその調査が明後日からなのだが。」
調査が入ると魔物を狩りに行けないと言う事なのだろうか。仕事の依頼というからそんなことではないと思うが。リズがいれてきた紅茶を飲みながらマスターは続ける。
「その調査に同行して欲しいのだ。」
「調査に同行ですか?」
「そうだ。王都から来た調査員にこちらの冒険者が同行することになっていたのだが、同行予定の冒険者がけがをしてね、代わりの冒険者を探していたのだよ。するとオーエンが君がいいのではと推薦したのでこちらに呼んだのだよ。」
「オーエンさんがですか?」
「そうだ。通常同行する冒険者は赤ランクなのだが、君の強さは赤ランク並みだと言ってね。調査なので基本戦闘はしなくてもいいし同行する調査員は冒険者で言えばシルバークラスだから問題ないだろうと。」
「でもなぜ自分が・・・。」
マスターは続けて言った。
「泊りでの調査になるが、君の今後のいい経験になると思ったからだ。」
自分たちが町を出たがっているのを聞いたのだろうか。魔物が生息する場所に泊まりで出かける・・・強い人と一緒ならこっちの世界の事をよく知るいい機会かもしれない。
「わかりました。引き受けます。」
「ありがとう。助かるよ。それでトモーミの方なのだが。」
ちらりとマスターが見る。
「こちらからソロの安全な依頼を斡旋するから、マサトがいない間はカウンターで依頼を受けてくれないか。」
ソロで仕事をしたことがないので少し不安だったが、その条件なら大丈夫そうだ。
「よろしくお願いします。」
「ではそういうことで。マサトは明後日9時までにこっちに来てもらえるかな?」
「わかりました。」
ギルドマスターの部屋を出た。今日はすぐ終わりそうな依頼を受けようと話し合った。
「調査員は明日こちらに到着するのだったな。」
「はい、明日の昼頃には入れると連絡を受けています。今回は2人だそうです。前回いらしたマリウスさんと新しい方だそうです。」
「そうか。ではマリウスに頼むとするか。」
「そうですね。それがいいと思います。宿は女神の雫と聞いております。」
女神の雫はこの町一番の宿だ。国の調査員が宿泊するのだからこのランクの宿は当り前だ。それぞれの部屋は魔法障壁がかけられている。セキュリティも万全で、受付ロビーから先は宿泊客と宿泊客の許可した人しか入れない。
「どんな潜在能があるのやら。」
ギルドマスターは意味ありげな言葉を口にした。
9時前にギルドに着いた。リズが案内をしてくれた。トモさんは受付で待機中だ。
「やあ来たね。」
ギルドマスターから声をかけられた。すでに調査員は到着していた。
「遅くなり申し訳ございません。」
「私たちの到着が早かっただけですよ。」
マリウスという調査員が挨拶をした。
「私はマリウス・ジェント。こちらはルイーシュ・ハウエルだ。君がマサト・エンドーだね。渡り人と聞いているが。」
「はい、そうです。最近こちらへ渡ってきました。」
「今回の調査は陸を先にすることになっている。」
マリウスの指示でルイーシュがテーブルに地図を広げる。始めてこの辺りの地形を知った。
「まず今日は馬車でスイッパ村へ出発する。それから森の奥へ入ってこの山の中で調査、宿泊だ。」
地図を指さしながらマリウスは言った。
「基本的には『生態調査』だけなのだが、場合によっては『捕獲』もする。その時は戦ってもらうことになるがいいかな?」
戦闘はないと聞いていたが、今回の調査は違うのだろうか。
「はい、大丈夫だと思います。」
「ははは、心配することはないよ。ランク的に無理な魔物を捕獲しろなんて言わないから。ただ襲われることもあるから、その時は全力で応戦してくれ。」
「わかりました。」
「行程はここで1泊、こちらに移動して1泊・・・最後に海の調査をして終わりだ。」
7日だ。思ったより長かった。てっきり馬車か何かで移動すると思っていたが、山道が多いので徒歩だそうだ。
「では早速出発するが、収納バッグは持っていないのか。」
「高価だと聞きました。駆け出しの自分では手が出ません。」
「私の収納魔法もそんなに入らないからな。食料はある程度は現地調達するが、その辺も大丈夫かな?」
「はい、大丈夫です。でも荷物を入れるものが必要ならば・・・あ。」
トモさんのリュックがあった。でもあれは宿に置いてきている。
「いや、大丈夫だよ。では出発しようか。」
マリウスに続いてルイーシュが部屋を出る。自分はその後をついていった。




