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こっちで元気にやってます  作者: 楠 螢
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こちらの生活事情

「採取依頼が1つしかありませんね。」

まだ『狩り』に慣れていない私たちは薬草などの採取をメインに仕事をしようとしていたのだ。しかし、採取依頼は元々数が少ない。港があるこの町は交易を中心に栄えている。ダンジョンもないので『討伐依頼』もほとんどないのだ。この町で最も多い依頼は『狩り』である。商売の素になるような魔物を『狩ってくる』のだ。

「これだけでは今日は食事代も稼げませんね。この依頼も受けませんか?」

アルミラージの角の入手。いずれは『狩り』もしなければいけない。ちょっと早い気もするが、値段も薬草採取よりいい。

「そうね。やってみようかしら。」

受諾して受付へ行く。

「依頼は角だけですが、魔石も出ますし毛皮は10匹単位で引き取ってもらえますよ。」

「10匹に達しなかったらどうなるのですか?」

「アルミラージは毛皮の面積が狭いし、角の入手依頼はよくあるのです。解体が出来る人たちは狩ったその場で欲しい部位だけを取っています。毛皮が10枚になったら売っているようですよ。今日はもうほかの人が依頼を受けているのでこの仕事は残っていませんけど。」


雑貨屋で紐や棒を購入し、アルミラージがいるという森へ出発した。昨日の件で紐などの道具が必要なことを私たちは覚えた。

「解体、早めに覚えた方がよさそうですね。」

「魚は捌けるけど、肉は捌いたことないわ。」

「魚捌けるんですね。意外でした。」

「うちは父子家庭なの。母は私が赤ちゃんの頃に亡くなってね、小学校に上がるまでは祖父母の家で育ったの。その時に簡単な料理は祖母に教えてもらったの。」

知らなかった。自分は両親がそろっていたがネグレクト気味だから料理は覚えたが、そんな事情で料理を覚えることになったとは。

「学校に通うようになってからは定期的に祖母が家に来てくれて、魚の捌き方もその時教えてもらったのよ。こう見えて料理は得意なんだから。」

「それじゃあそのうちご馳走してもらえるのかな?」

「こっちに来て食べたどの料理よりも美味しいものをご馳走するわよ。」

楽しい会話をしながら『狩り場』の森へ到着した。


数匹のアルミラージが群れで草を食べている。アルミラージは一角兎だ。茶色い毛に赤い目、額に15cm程の角がある。目的はこの角だが、毛皮も売れるので綺麗に仕留めたい。黙々と草を食べる姿は愛らしい。とても魔物には見えない。しかし油断してはいけない。敵認されたらあの角で襲われる。強靭な後ろ脚で地面を蹴り、容赦なく突き刺してくる。

「避雷針みたいになるのかな、あれ。」

魔法を放つとあれに向かって雷が落ちるかもしれない。試しに軽く魔法を放つ。いい感じに雷が角に向かっていく。かなり弱めの雷だったので、静電気程度の感じだったのだろう。

アルミラージは身震いしたが、また草を食べ始めた。

「いけそうですね。もう少し強めに放ってもらえますか?残ったやつは自分が仕留めますから。」

焦がさない程度の魔法を放つ。雷は角に向かっていく。ビリビリと感電していくアルミラージ達。一斉に倒れ、足をヒクヒクさせてそのうち動かなくなった。一番遠くにいたアルミラージだけは魔法の効きが悪かったのか、立ち上がりこっちに向かってきた。真人の出番だ。アルミラージはその角を突き立てようと真人めがけて地面を大きくけった。さっと真人がよける。着地したアルミラージはすぐに体勢を立て直し、再び突進してきた。タイミングをつかんだ真人は右手で角を掴み、左手で顔を殴る。綺麗に頬に拳が入る。そのままアルミラージは力尽きた。ブラウンアッフェより随分と楽に倒せた。


毛皮が10枚単位なので、頑張って10匹狩りをした。角は保存がきくので売らずに次の依頼があるまで取っておくことにした。昨日より早く依頼が終わり、追加の依頼は受けなかった。

「今夜の宿泊でチケットが無くなります。明日からは宿代も必要になるので、やはり狩りを中心にした依頼にしていかないと生活できませんね。」

「そうね。今日みたいに薬草とかの採取依頼がないと厳しいものね。休みの日も欲しいし。」

毎日狩りをし続けるなんて不可能だ。精神がやられてしまう。町中のカフェで今後のことを話し合った。

「まずこの世界では1週間は5日です。1か月は6週間。30日ですね。1年は12か月なので360日。ほぼ地球と同じですね。」

火の日・雷の日・風の日・水の日・闇の日。魔法の発動と関係があるようだ。私は雷属性だから、雷の日に魔法を使うと普段の1.2倍くらいの威力になるらしい。闇の日はどの魔法も威力が弱くなるようだ。私の戦力がダウンするので、今後はこの日は休みにしようと決めた。ちなみに昨日は雷の日だったようだ。私が格上の魔物を倒せたのは、これが関係しているらしい。時間の単位もあっちと同じだ。1日は24時間だ。

「次にお金ですね。小銅貨1枚を1ペイとして、10枚で大銅貨1枚、大銅貨10枚で小銀貨1枚、小銀貨10枚で大銀貨1枚、大銀貨10枚で金貨1枚。食事や買い物から推測すると、1ペイが10円位です。宿屋が1泊620ペイなので6,200円ですね。」

「友達と旅行に行って泊るビジネスホテルの安いとこね。弾丸旅行とか言って行き当たりばったりで出かけてよく泊まったわ。」

「仕事の報酬を考えると、全体的に安めですね。食事もワンコインで食べられる感じですし。」

物価が安いということは当然報酬も安いということだ。

「ほかの町がどんな感じかわかりませんが、いずれ旅に出るのだからここで今後の最低限度の必需品を買いそろえる必要はありますね。」

「そうね。旅に必要なものを揃えないとね。当然お金ももっと必要になるし。」

「宿屋と食事で700ペイ。物の買い足し・解体費用などを考えると1人1,500ペイ、2人で3,000ペイ以上の依頼を1日でこなさないといけませんね。」

「薬草採取が500ペイ前後だから、やっぱり狩りを中心にしないと駄目よね。アルミラージの角は1,000ペイでしょ。魔石は小さいから安かったわよね。」

「そうですね。毛皮も供給が多いからって10枚であの金額でしたから。」

ちなみに転移初日に襲ってきたラウンドウルフは毛皮の価値もないらしい。お肉もおいしくないので、討伐依頼が出ることはあっても『狩り』の依頼はないらしい。集団で行動するので地元の人もあまり出会いたくないらしい。魔石は質がいいので重宝されるらしいが。しかし私たちは知らなかったのだ。まだこの町を離れることが出来ないことを。

「おや、2人でこの時間にカフェですか?」

「あ、ランディさん。」

今日は休みらしい。同席を求められたので承諾した。

「こちらの生活には慣れましたか?」

首を傾げストレートの銀髪を揺らしながら、笑顔でこちらを見ている。

「慣れるというか、必死ですね。」

「指輪なしでの魔法の発動はまだ無理なようですか?」

「まだ感覚がつかめないので・・・。」

「魔法はイメージが大事です。」

そう言って両手を包み込むように前に出した。

「いいですか。」

ポン!小さな炎が手の中に出た。

「魔法は自分の持ってる魔力を練り発動させます。より良く練った方が質の高い魔法を発揮することが出来ます。属性にもよりますが、魔力が多ければより多くの魔法を使うことも出来ます。魔力の量は個人差がありますが、増やすことが出来ます。増やすためには普段から魔力を練る訓練をした方がいいです。」

そう言って出した炎を細長くしたり小さくしたりして見せた。

「魔力を練る・・・ですか。」

「そうです。魔力の流れは説明しましたね。今度は自分の体の中の魔力の流れを確認してみて下さい。」

五感を研ぎ澄ます。ゆっくりと魔力が血液のように体の中を巡っているのを感じる。

「魔力が溜まる場所を感じることが出来ませんか?」

鳩尾付近が暖かくなる。

「あ、感じます。」

「そうですか。ではそこに魔力を集中させましょう。始めはゆっくりですよ。」

段々鳩尾が熱くなる。

「集まってきたら、それを圧縮してください。出来るだけ小さくなるように。」

難しい。集めるまでは簡単だったが圧縮は無理だった。一気に体中に魔力が逃げて行った。

「ふふ、難しかったようですね。でもこの数日で集めることが出来るようになったってことは優秀ですよ。」

頼んでいた紅茶を飲みながらランディは言った。

「マサトさんは武闘タイプでしたね?」

「あ、はい。魔法の適性はなかったです。」

「この町の半数以上の人は魔法を使えないですよ。魔法が使えても1属性です。私は2属性使えるのでギルドで試験官をしています。」

「2属性でも水・・・氷が使えるとなると、貴族が召し抱えしようとします。氷が使える人は貴重ですから。」

「貴族の抱え込みですか。」

「お抱え魔導士ですね。適正職業で魔導士が出るとリストに載ります。更に水魔法が使えると、貴族から声がかけられます。氷魔法が使えるようになるかもしれませんから。今はこの町にはいませんが。」

なんと!そんな事情があったとは。魔法使いって意外とレアだったのね。

「それじゃあ私も魔法が使えるからリストに載っているのですね。」

「そうですね。特に渡り人は魔力が多い傾向があるらしいです。水魔法が使えなくても声をかけられるかもしれませんよ。」

紅茶を飲み干し支払いを済ませたランディは席を立った。

「お抱え・・・。」

「この町に永住することになりますね。」

早く旅立つ準備をしなければと2人は心に誓った。

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