佐藤の気持ち
今日の宿は小熊のゆりかご。チェックアウトする時に伝言を頼んでおいたから探しに来ないだろうと思ったら、受付で待っていたわ。
「つれないなぁ、2人とも。俺も今日はこっちの宿に泊まるから。」
逃げきれてなかった。確かにチケットが使える宿は2軒しかないから仕方がないのかもしれないが。
「それより飯!昨日は俺がおごったんだから、今日はお前たちが俺におごれよ。」
「昨日はトモさんが倒した魔物の魔石を売ったお金で食事をしただけでしょう。あなたのお金じゃないですよね。」
危ない、喧嘩が始まりそう。
「私たち、おごれるほどお金ないですよ。」
「はぁ?冒険者は依頼こなして金いっぱい持ってるんじゃないのかよ?」
その言葉に周りにいた冒険者たちが一斉に振り向いた。流石にやばいと思ったらしく、
「いや、俺より稼ぎがいいんだろう?飯ぐらいおごってくれてもいいじゃないか。」
大きな勘違いだ。確かに上のランクの冒険者なら稼ぎはいいかもしれないが、私たちはルーキーだ。仕事も稼ぎもたかが知れている。
「私たちは外で仕事ができるようになるまで、街の中の依頼しか受けられません。掃除や配達などの仕事は金額も大したことはないでしょう。それならあなたは今日いくら稼いだのですか?」
「そ、それは・・・俺の稼ぎは週払いらしいんだ。だから今金が無くてさ。」
「自分たちも今これだけしか持っていません。」
真人はポケットからお金を出した。小銀貨1枚と大銅貨7枚と小銅貨2枚だ。
「自分たちは外での依頼を受けられるよう、有料で訓練を受けていますからね。魔物がいる外に出たら命がけですよ。生存率を上げるためにはきちんとした訓練を受けないと。」
「ちっ、仕方ないな。」
今日の晩御飯は食堂で定食のみとなった。
ご機嫌で酒を飲み、支払いを済ませて部屋へ戻った。軽くシャワーを浴びてベッドへダイブ。
「へへへ、あいつらが稼いでくれば楽勝じゃないか。」
にやにやしながら眠りについた。翌朝誰かがドアをノックする音で目が覚める。
「お客さんそろそろ掃除をするので出て行って下さい。」
もうそんな時間か!?飛び起きた。慌てて部屋を出て受付へ。朝食の提供はもう終わっているという。チケットで支払いを済ませ今日の部屋を取ろうとしたら、伝言を預かっていると言われ内容を聞いた。
「なんだって?」
あいつら、今日は別の宿に泊まるという。先に聞いておいてよかった。今日は晩飯抜きになるところだった。
「俺も今日はあっちの宿に泊まってみるわ。」
そう言って宿を出る。一応ギルドへ顔を出した。昨日担当してくれた人が対応してくれた。
「サトーさん、お仕事を探しにいらしたのですね。」
とりあえずはいと返事をした。
「新人のうちは早めに来ないと受けられる仕事が無くなってしまいますよ。今残っているものであなたが受けられる仕事はこれとこれです。」
勧められた仕事は宴会場の皿洗いと飲み屋の仕込みの手伝いだ。バカにしてるのか?学生のアルバイトのような仕事しかないじゃないか。
「買い付けの手伝いや交渉などの仕事はランクが上がらないと出来ません。下の仕事から経験と信頼を積んでからでないと出来ない仕組みになっているのですよ。あちらでの経験は豊富でしょうが、こちらのやり方に慣れていただかないと。」
ギルドの職員はそう説明する。わかる。わかるけど納得がいかない。
「どちらの仕事になさいますか?」
受ける前提で言ってくる。30にもなってなぜ学生のバイトをしなければならないのか。プライドが邪魔をする。
「今日はやらない!」
ギルドを出ようとすると、
「そうですか。明日はもっと早くいらして下さい。他の仕事もありますから。」
職員はそう言って自分の仕事に戻っていった。




