武器を求めて
「おはようございます、トモさん。」
「ふあ~、真人おはよう。」
あくびが止まらない。睡眠不足だ。壁が薄いので隣の部屋の音がとてもよく聞こえた。
「凄かったですね。自分の部屋まで聞こえましたよ。」
佐藤のいびきの大きさに同じ宿で宿泊することは無理だと2人は思った。
「朝食後すぐにチェックアウトしましょう。」
私はうなずいた。こんな体調で今日はまともに仕事ができるかしら?
何とか朝食を済ませてギルドへ向かった。数人ギルドの前で待っている。情報を仕入れようと真人は積極的に話しかけていた。私は眠気と闘いながらその様子を眺めていた。
「お待たせしました。いい話が聞けましたよ。」
「いい話?」
「そうです。トモさんは魔法剣士の適性がありましたよね。まだ魔法が使えなくても剣が使えれば自分と一緒に外に行けるそうですよ。」
「剣が使える?そんなもの扱ったことないから無理よ。」
思いっきり首と手を振った。
「ギルドで訓練してもらえるらしいです。お金はかかるけど早く外に出た方が稼げるし、すぐに元は取れそうですよ。」
少し魅力的な話だ。だけど平和な世の中で育った私に剣を使うなんて早々すぐにできるものじゃない。尻込みしている私に真人は続けて言う。
「魔導士は魔力が切れたら戦う術がないですからね。でも魔法剣士の適性があれば剣を使うことも出来るからかなり戦いに幅が広がりますよ。」
そういう考え方もあるのね。私は諦めて返事をする。
「わかったわ。それじゃあ先に剣を買いに行きましょう。」
「いえ、今日はこれから町中の依頼を受けましょう。早く依頼を終わらせて剣を買いに行きましょう。」
そうだ、手持ちはあまりないのだから、少しは稼がないとジリ貧だ。ギルドが開くのを今か今かと待ちながら私たちは今日の予定を立てた。
何とか昼過ぎに仕事を終えた私たちは、昨日のティアナの父親の店に来た。武器屋を紹介してもらう為だ。
「魔法剣士の適性があっても、あんたじゃロングソードは無理だろう。」
あっさり言われた。確かにそうだ。ゲームのように装備してボタンを押せば軽々と振り回せるものではない。
「今から剣を覚えてもマスターするのに随分とかかるから、まだ短剣の方がいいと思うぞ。扱いやすいしな。今いくら持っているんだ?」
予算を伝える。
「その予算じゃ厳しいな。包丁も買えないじゃないか。」
思いっきり手を振られた。確かにそうだ。でもこれからギルドで訓練してもらう分も取っておかなければならない。さすがに今日武器を購入して訓練までというのは無理そうだ。諦めかけていたその時、
「ああ、そうだ。」
何かを思い出したようにティアナの父親は店の奥へ行った。ゴトゴトと引き出しを開け閉めする音が聞こえる。
「あったぞ、これならどうだ?」
そう言いながら、飾り気のないちょっと古そうな短剣を持ってきた。
「昔俺が防具作りの合間に作った短剣だ。武器職人が作ったもの程性能はよくないが、今のあんたにならこのくらいで十分なはずだ。」
受け取って鞘から抜いてみた。鈍い光を放つ短剣は素人の私から見たら十分なほどよく切れそうだ。握り手の端にくぼみが付いている。
「そのくぼみに魔石を入れれば魔剣として使えるはずだ。・・・多分な。」
「へ?多分って?」
「俺は魔法が使えないからな。作っては見たものの、実際使ったことがないんだよ。」
まだ魔法がきちんと使えない私にも使えそうにないわ。
「ちょっと振ってみな。」
少し離れて短剣を振ってみた。重さも気にならない。悪くなさそうだ。
「それなら予算の金額で売ってやるよ。」
よかった。剣が手に入ったなら試験に合格すればすぐに外に出られるわね。さらに懐は寂しくなったけど、仕事の幅は広がりそうだわ。私たちはお礼を言って、早速ギルドへ向かった。
生まれて初めての剣の訓練は体への負担もすごかった。今夜は筋肉痛になるわ、きっと。でもその甲斐あって何とか合格がもらえた。訓練の費用は真人が払ってくれた。お金が入ったら払うと言ったが、一緒に外に出られるようになる為の必要経費だって笑って返された。




