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こっちで元気にやってます  作者: 楠 螢
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サンドイッチが食べたい!

食事も宿屋併設のレストランで済ませ、明日の出発時間を決めてそれぞれの部屋へ戻った。

ディオは初めての相部屋で少々興奮しており、真人は王族との相部屋で緊張していた。

「なあマサト、友達と一緒に宿屋に泊まったらどんなことをするのだ?」

「どんな事と言われても・・・友達と旅行に行くことなんてなかったから・・・」

「そうなのか?ああそうか、渡り人だから生活そのものが違うのか。ではあっちではどんなことをしていたのだ?」

真人は大まかな話をした。

向こうでは成人は20歳でそれまでアルコールも飲めない、小学校・中学校・高校・大学があって、中学までは義務教育で必ず行かなければならない、高校・大学はそうではなく、専門的な学校もあるなど。

「まったくこっちと違うのだな。こっちでは10歳で職業適性を受けたらもう働いていいからな。マサトは18歳だって聞いているけど、学生だったってことかな。」

「はいそうです。高校に通ってました。先月19歳になりましたけど。」

「そうなのか!それじゃあ僕と同い年だな。」

ディオはで質問攻めだった。真人は段々うんざりしてきた。

「そろそろ寝ないと明日も朝が早いですよ。」

「ああ、そうだったな。すまない。こんな機会はなかなかないものでつい・・・」

「そうですね。自分たちも修学旅行に行ったら夜は中々眠れないですから。」

「修学旅行?それは何だ?」

うっかりこっちにない事を口走り再び質問攻めにあった。結局2人は睡眠不足で翌朝を迎えることになった。

「よく眠っていますね。」

「そうですね。昨日の相部屋はよほど楽しかったのでしょうね。遅くまで話声が聞こえていましたよ。」

内容は分からずとも声は聞こえた。それが楽しそうに聞こえたのだろう。実際はディオがマサトに質問をしまくり寝るのが遅くなったというのが事実なのだが。

真人は朋美に、ディオはマリウスに寄りかかり気持ちよさそうに眠っている。時々真人は苦虫を嚙み潰したような顔をし、ディオはへらへらと笑っている。

「マストからは少し距離がありますね。検問所まで進みますか。」

「そうですね。そうすれば次の日は夜遅くてもグリージアまでは行けますよね。」

「ところでシェスナへ戻ってからはどんな予定になっているのかな?」

「その後もついてこられるのですよね。以前戻ってきた人の話をして下さいましたよね。」

「ああ、薬師一家の事ですか。」

「はい。その事を知っている方にお話を聞きに行くつもりです。」

「見つかったのですか!?」

「見つかったというか、たまたま知り合った薬師の方がその話をご存じだったんです。聞く覚悟が出来たらおいでと言われていたので。」

「聞く覚悟ですか?」

「はい。その時はただ聞ければいいと思っていたので覚悟と言われて聞けなかったけど、今は絶対に聞いておかないといけない気がするんです。」

「そうですか。私たちも是非聞きたいが、それは可能だろうか?」

「わかりません。相手の方に聞いてみないと。」

「そうですね。そんな情報は貴重ですからね。だからこそ表立って出てこないのでしょう。無理にとは言いませんが、もしよかったらその場に立ち会わせてほしいですね。」

「聞いてみますね。」

そんな会話をしているうちに馬車はマストへ到着した。熟睡していた2人はそれまで一度も起きなかった。


少し遅い昼食になったのでどの店も空いていたのですぐには入れた。今日はこの後検問所までしか行かないのでここで少し時間が取れると聞いてディオは街を歩いてみたいと言った。いろんな店を見て回るだけでも楽しいとはしゃいでいた。

「いつも護衛が付いてくるので周りの人たちがすぐに道を開けるんだ。だからみんなと触れ合う事もなかった。声をかける相手も決まっていたし。」

あらかじめ決まった行動しか許されていなかったのだ。しかし今回は違う。好きな場所に行き、出会った人と遠慮なく会話が出来る。

「お兄さん安くしとくよ。これなんてどうだい?」

「うちに可愛い雑貨が入ったよ。見て行かないか?」

活気のある街を満足げに歩く。

「兄さん、王都もこんなに活気があるの?」

「そうですね。規模は違いますが結構活気がありますよ。いろんな町の人が行き来しています・・・いるからな。」

まだまだ話し慣れないマリウスだった。

「そういえばここで一番高い宿屋のパンって美味しかったわよね。」

「そうでしたね。ふかふかのパンでしたよね。あれを買いましょうか。」

「何?ここではふかふかのパンが食べられるのか?王宮でもめったに食べられないぞ。」

「ロマからグリージアに行く途中に街はないから、その分たくさん買いましょう。」

宿に泊まらなくてもレストランでパンは買える。みんなは散策を切り上げてすぐに宿へ向かった。

「ほ~、こんな風に売っているのか。」

初めてパンが並んでいるのを見たディオは目を輝かせて焼き立てパンを見ていた。

「すぐに食べてみますか?焼きたては美味しいですよ。」

先ほど昼食を食べたのに、焼き立てパンは別腹に入るらしい。

「うん、おいひい。すこいふかふか。」

マリウスが毒見をしようと思ったが、それより先にかじりついていた。

朋美はふかふかのパンの他に少し硬めのパンも買った。

「八百屋と肉屋にも寄っていいかしら?」

「何を買うのですか?」

「サンドイッチの材料を買おうかと思って。」

「ああ、あれですね。あの時のは美味しかったですよ。」

「何!?そんなに美味しいものを兄さん食べてたの!?」

「あ・・・いやそれは・・・」

もう1年近く前の事をマリウスは覚えていたようだ。

「明日の昼食用に作りますからね。」

「本当だな!絶対だな!」

本当に小さな子供のようだ。朋美ははいはいと言って次の店へ向かった。


貴族が泊る検問所の宿泊場所は一般の人の場所とは離れており、きちんとした部屋になっている。以前朋美が泊ったところと同じような造りだ。1人ずつ部屋に入ったが、すぐに真人が朋美の部屋へやってきた。

「あれで次の王になるのですよね。」

「そうね。なんか甘やかされて育った子供を見ているようだわ。この国本当に大丈夫なのかしら。不安になるわ。」

「昨夜もいろんなことを根掘り葉掘り聞かれて眠れませんでしたよ。」

「そうだったの?随分と仲良くなって盛り上がってたと思ってたのに。」

「本人が言うにはかなり過保護にされていたから護衛もなしに外に出るのが初めてで楽しいそうです。」

「すべてが新鮮なのね。でもあの歳であのテンションはちょっとね・・・。こっちが疲れちゃうわ。」

もう少しでシェスナに帰りつくが、あの調子でリルーディのところへ行くのも気が引ける。

「マリウスさんがリルーディさんの話を一緒に聞かせて欲しいって言ってるのよ。」

「話しを聞く位は大丈夫かもしれませんが、殿下を同行すること自体がちょっと気になりますね。」

「私としては2人とも来てほしくないわ。」

「だったら自分が2人を引き受けましょうか?その間に話を聞くといいですよ。」

「真人は聞かなくていいの?」

「はい。自分はこっちに残るって決めていますから聞かなくていいです。」

実はもう知っていますとは言えないのでそう答えた。

扉をノックする音がする。

「私です、マリウスです。」

「はい、すぐ開けます。」

「マサトもトモーミのところに来ていたのですね。実はグリージアに着いた後の事を話し合っておきたくて。」

「グリージアに着いた後の事ですか?」

「はいそうです。トモーミは薬師の方のところへ行くと言っていたね。それはどこですか?」

「私たちが住んでいるシェスナの北にあるツェンと言う小さな村です。」

「殿下にその話をしたらどうしても自分も聞きたいとおっしゃって。」

手遅れだった。リルーディの家はそんなに広くない。しかも一般家庭よりも質素な家だ。そんなところに殿下を連れて行けるだろうか。

「それは厳しいですね。もう引退されてひっそりと暮らしていらっしゃるから大勢で押しかけると失礼に当たるというか・・・」

「そうですよね。ですからこちらにお招きすると言うのはどうでしょうか?場所はこちらで用意しますから。」

「どうでしょう?元々気難しい方ですから。」

「そうですか。困りましたね。初めて自由に行動が出来ているので殿下が少しあれでね。何とかならないか?」

どうやらマリウスも殿下のあの態度は気になっていたようだ。


結局ツェンまでは一緒に行き、朋美がリルーディに確認してから家の中へ入ると言う事になった。もしダメなら真人も一緒に馬車に残って話が終わるのを待つことにした。

「それではグリージアから直接ツェンという村に向かおう。その後はシェスナで宿を取ることにしよう。」

「私たちは自宅に戻ります。」

「その家に私と殿下は泊まれるか?」

「いいえ、部屋がないので無理ですね。」

「それなら申し訳ないが、一緒に宿に泊まってもらう。私たちは一応『監視』という事でついてきているので君たちから離れるわけにはいかないのだ。」

「宿はどこでもいいですか?」

「変なところでなければいいよ。」

私たちは『小さな花かご』へ泊ることにしようと思った。

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