異世界での職業
受付へ行くと2人が待っていた。ガルシアは真人の試験が終わってすぐに仕事に戻ったらしい。もらった紙を受付に渡した。受付の女性が手続きをしてくれている。しばらくすると呼ばれた。
「魔石をお持ちではありませんか?」
「あの赤い宝石のことですか?」
「はい。ラウンドウルフを倒したと書いてあるのでもしかしてと思いまして。」
2人で佐藤を見る。
「ああ、あれか、あれね。」
しらばっくれた顔をしていたが、しぶしぶポケットから魔石を取り出した。女性は受け取り鑑定をする。すべての魔石の鑑定が終わり、金額が提示される。
「1,300ペイです。」
大銀貨1枚と小銀貨3枚がトレイに置かれた。佐藤はすかさず手を出しお金を全部握りしめた。
「佐藤さん、ちょっと待って下さい。」
「年長の俺が管理する方がいいだろ?責任もって預かるからさ。」
そう言ってさっさとギルドを出て行った。慌てて追いかけようとすると
「まだタグの発行が終わっていないので、ギルドから出ないで下さい。」
受付の人に呼び止められた。
「で、でも・・・。」
「すぐ戻ってくるので、大野さんはここに居て下さい。」
真人はすぐに佐藤を追いかけた。
「佐藤さんどこへ行くんですか?」
腕をつかんだ。
「痛いぞ、離せ!」
「離しません!お金を返してください!」
「これは社会人の俺が預かるのが筋だ!」
「預かるにしても全額持ってひとりでどこへ行くのですか?」
「五月蠅いな!これからこの金で情報収集しに行くんだよ!」
腕を振りほどいて襟を立たず。
「お前らみたいな学生には分からないかもしれないが、大人にはこれに物を言わせて情報を手に入れる方法があるんだよ。」
「2人にはこれで十分だろう?」
佐藤は小銀貨を地面にばらまき、人込みの中へ消えて行った。真人はそれを拾い、ギルドへ戻ってきた。
「すみません、あの人はどこかへ行ってしまいました。」
「ひとりで大丈夫なのかしら。」
「あの人の心配はしない方がいいですよ。」
「でも、私たちと一緒で知り合いもいないのに・・・。」
「あんな人にも優しいのですね。」
「そういうわけじゃ・・・。だって何にもわからないところですよ、ここは。少しでも一緒にいた方がいいんじゃないかと・・・。」
ここで2人で言い合いしていても埒が明かない。
「コホン、そろそろ説明させていただいてよろしいですか?」
「あ・・・はい、お願いします。」
「まず、マサト・エンドーさん。」
この世界ではミドルネームが前に来るようだ。
「あなたのタグはこれです。」
緑のタグが渡された。
「このタグが身分証になります。この中にあなたの個人データが入っています。どの冒険ギルドに行ってもタグを提示すれば仕事を受けることができますし、貴方のデータも照合できます。また、犯罪歴などもこのタグに記録されます。諸事情で紛失した場合は、再発行するのに時間とお金がかかります。」
なるほど。かなり大事なものなのね。なくさないようにしないと。
「次はトモーミ・オーノさん。」
「はい!」
元気よく返事をしてしまったが、ギルドの人は涼しい顔で私を見ている。
「貴方のタグはこれです。」
白だ。同じ色がもらえないということは、ランクが違うということね。
「冒険者のランクは下から白・緑・青・赤・黒・ブロンズ・シルバー・ゴールドとなっています。白の冒険者は町中の仕事の依頼しか受けられません。」
「町中の仕事の依頼を緑が受けることも出来ますか?」
「はい、できます。基本的には上のランクは下のランクの仕事を受けることができます。ただし、下のランクの人が優先です。それに下のランクの仕事は報酬が少ないです。」
当然か。これは納得。
「更に白の人は先ほどのランク確認を定期的に受けてもらいます。試験官が合格を出さないとランクアップ出来ません。」
「それは何故ですか?」
「冒険者は町の外に出れば身の危険が生じます。戦う術を持たない冒険者を危険な場所へ出すわけにはいきません。」
要するに私のような魔法が使えない魔導士は危なくて外に出せないということか。
「受けた依頼は達成しないとペナルティがあります。罰金とか、その依頼主の依頼を一定期間受けられないとか。重いものはランクダウンとなります。」
違約金とかの類ね。これも理解できるわ。
「冒険ギルドの成功報酬は即金です。受け取りは現金と入金する方法がありますが、どちらになさいますか?」
「入金と言いますと?」
「硬貨センターで登録してカードを発行してもらうと、そのカードへお金の入出金を記録できます。カードをギルドへ登録して頂くと、直接カードへ入金もできます。」
「仕事の都度どちらで受け取るか選ぶこともできますか?」
真人は念入りに聞いている。
「はい、出来ます。」
「では、これを換金してもらえますか?」
ポケットから魔石を一つ取り出した。
「少々お待ちください。」
「持ってたの?」
「一つだけ。」
意味ありげに笑う真人は少し大人びて見えた。
「この金額になります。」
鑑定が終わり、お金が渡された。小銀貨3枚だ。真人はそれを受け取り、
「ありがとうございます。硬貨センターはどこですか?」
「硬貨センターは冒険ギルドを出てまっすぐ行った突き当りにあります。」
「では、服などを取り扱っているところは?」
随分と頼りになる。私が思いつきもしないことを色々と質問している。
「最後にこちらをお渡しします。」
何かのチケットが5枚ずつあった。
「これは宿屋へ泊れるものです。一週間分となっております。その間に自力で生活できるようになって下さい。では達成できる依頼から受けて下さいね。お仕事はあちらのブースで選んで下さい。」
これで一通り説明が終わったようだ。
「硬貨センターへ行きましょう。それが終わったらすぐにこちらの服に着替えて、売れるものはお金に換えましょう。」




