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第9話「結城・本庄の合併!? 結の涙と智也の決断」

挿絵(By みてみん)


幸人との激闘から数日。学校には、また別の種類の不穏な空気が流れていた。


校門の前に並ぶ黒塗りの車。だが、今回は神代グループではなく、本庄グループの巨大なロゴが刻まれている。


「智也さま、お話がありますわ」


放課後の静まり返った図書室。


呼び出された智也の前に立つ結の声は、いつもの自信に満ちた高飛車な令嬢のそれではなく、どこか弱々しく震えていた。


彼女が差し出したのは、金縁の豪華な招待状――ではなく、冷徹な数字がびっしりと並んだ『経営統合の覚書』だった。


「わたくしの父……本庄の現総帥が、結城家を完全に傘下に収めると決めましたの。それに伴い、わたくしと智也さまの『結婚』を、来月中に強行させると……」


「……来月!? 早すぎるだろ!」


智也の叫びが、図書室の冷たい空気を凍りつかせる。


その時、本棚の陰から足音を荒げて現れたのは、みくるとこのみ、そして紗季だった。ずっと智也の後を心配してつけてきていたのだ。


「ちょっと、冗談じゃないわよ! 智也を本庄に売るなんて、あたしが絶対に許さないんだから!」


みくるが激昂して結に詰め寄るが、結は反論することもなく、ただ力なく首を振った。


「わたくしも、嫌ですわ……。こんな、契約書で縛り付けるようなやり方で、智也さまを手に入れても……ちっとも、嬉しくありませんわ……」


お嬢様としてのプライドが崩れ去り、結の大きな瞳から大粒の涙がポロポロと畳の上に溜まっていく。


彼女にとって、智也はコンツェルンを拡大するための経営戦略の対象ではなく、十年間の努力の果てにようやく出会えた、一人の恋焦がれる男性だった。けれど、巨大財閥の令嬢という立場が、その純粋な想いを冷酷に歪めていく。


「……智也さま。逃げてください。わたくしが本庄のすべての追手を食い止めます。……あなたが、あやめさんや、皆さまと笑っていられるように」


結が涙を拭い、背を向けようとしたその瞬間だった。


智也は迷うことなくその一歩を踏み込み、結の華奢な手首を、強く掴んで引き留めた。


「……逃げるわけないだろ、結さん」


「え……?」


「本庄も結城も関係ない。結さんが泣いてるなら、俺がそれを止める。……じいちゃんたちの契約じゃなくて、俺自身の意志で、本庄の親父さんと直接話してくるよ」


智也の真っ直ぐな言葉に、結の顔が一気に耳元まで真っ赤に染まる。


彼女は慌てて扇子で顔を隠し、ぷうっと頬を膨らませ、泣き笑いのような顔で智也を見上げた。


「……ずるいですわ、智也さま。そんな風に言われたら、わたくし……ますますあなたから離れられなくなってしまいますわ」


「あら。智也くん、ずいぶんとかっこよくなったわね」


このみが一歩前に出て微笑むが、眼鏡の奥の瞳には、抜け駆けは許さないという静かな、けれど苛烈な火が灯っている。


図書室の隅では、あやめが白銀の刀の柄にそっと手をかけ、冷徹に呟いた。


「……神代も、本庄も。ゆきを縛るものはすべて、私がこの太刀で切り伏せるわ」


結城家と本庄家の全面衝突。財閥の力という現代の怪物に、智也はどう立ち向かうのか。


そしてその裏では、第四勢力が着々と結城智也という器を狙って、さらなる罠を広げていた。


「……見ていろ、智也。本庄の令嬢を泣かせた代償は、高くつくぞ」


夕暮れの校舎の屋上から、傷だらけの幸人が一人、歪んだ笑みを浮かべて街を見下ろしていた。


(第9話「結城・本庄の合併!? 結の涙と智也の決断」おわり / 第10話へ続く)

メインヒロインのひとり坂下 このみが歌う、

「ゆめみる、ゆき、あやなす、むすび。」の挿入歌です


『SUNLIGHT AFTER RAIN』


架空アニメ 「ゆめみる、ゆき、あやなす、むすび。」挿入歌


歌:坂下 このみ


https://suno.com/s/43UiO1QR7pJVw0xL

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