表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された公爵令嬢ですが、身に覚えのない冤罪を晴らしたいだけです  作者: 明衣令央


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

8/19

第8話:真実の記録


 わたくしは審問室の中央へ進み、胸に抱えていた手帳を両手で差し出した。


「これが……わたくしの記録です。毎日欠かさず書いております。どうか、ご確認くださいませ」


 重臣が侍従に合図し、手帳が丁寧に受け取られる。

 その瞬間、わたくしの頭の中に『何か』が語りかけてきたような気がした。


『大丈夫だ。真実は、必ず証明される』


 と――。

 語りかけてきたのは誰?

 もしかして、今提出した手帳?


 侍従が手帳を開き、重臣の前に置く。

 ページをめくる音が、審問室にやけに大きく響いた。


「……ふむ。四月十二日」


 重臣が読み上げる。


「『午前:図書室にて自習。午後:図書委員の当番』……南棟の階段には、行っていないようだな」


 ミーナの顔が青ざめる。


「と、図書室……? で、でも……リリアナ様が……」


 重臣は淡々と続けた。


「図書室の出入り記録にも、エレノア嬢の名がある。時間も一致している」


 ミーナは口を開いたまま、言葉を失った。

 他のページがめくられる。


「五月三日。『午後:乗馬訓練。訓練場にて』」


 ラドックがびくりと肩を揺らす。


「乗馬訓練……? で、でも……中庭で……」


「訓練場は学園の北側。中庭とは反対方向だ。同じ時間に二つの場所にいることは不可能だろう」


 ラドックは額に汗を浮かべ、視線を泳がせた。

 さらにページがめくられる。


「六月二十日。『王宮図書館にて資料調査。夕刻まで滞在』」


 カミラ嬢の顔色が一気に変わった。


「お、王宮図書館……? そんな……」


 重臣は書記官に目配せし、書記官が手元の書類を確認する。


「王宮図書館の出入り記録にも、エレノア嬢の名がございます。滞在時間も一致しております」


「これは、間違いありません。僕はその日、王宮図書館に入られたエレノア様を見ているんだ。残念ながら、声はかけることができませんでしたが」


「な、なんですって? ウイリアム殿下、それが本当なら、少なくともカミラは、嘘の発言をしたことになります!」


 ウイリアム殿下の発言に、審問室がざわめいた。

 視線が最後の証人として発言した、カミラ嬢へと集まる。

 カミラ嬢は助けを求めるようにリリアナ嬢を見つめるが、リリアナ嬢はそんなカミラ嬢から顔をそむけた。

 その様子を見て、ウイリアム殿下が静かに立ち上がる。


「重臣殿。これら三つの証言は全て『エレノア様がその場にいた』という前提で成り立っています。しかしエレノア様の手帳の記録と、王宮・学園の出入り記録が一致している以上、証言の信憑性は極めて低いと言わざるを得ません」


 ウイリアム殿下の声は落ち着いており、確かな力があった。


「証人たちは、誰一人として『エレノア様が嫌がらせをする瞬間』を見ていない。ただ『リリアナ様が泣いていた』という状況だけを述べているにすぎないのです」


 ミーナ、ラドック、カミラの三人は、完全に言葉を失っていた。

 重臣が厳しい声で告げる。


「……証人たちよ。そなたらの証言は、事実と大きく食い違っている。虚偽の証言をしたと判断せざるを得ぬ」


 三人は膝を震わせ、深く頭を下げた。


「も、申し訳ありません……! わ、わたしたちは……その……」


 言い訳は続かない。

 ダロウ男爵が歯を食いしばり、リリアナ嬢は顔をしかめて三人の証人たちを見つめていた。


「エレノア嬢、大切な手帳をお返ししましょう」


「ありがとうございます……」


 大切な手帳が返された。

 受け取った瞬間、手帳が温かくなっているような気がした。

 そして、


『真実は一つ……そなたはいつも、真実を記し続けたのだ……』


 と、頭の中に『何か』が語りかける。

 もしかして、わたくしに語りかけているのは、本当に手帳なのかもしれないと思った。

 そしてこの手帳が、わたくしの無実を証明してくれたのだ――。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ