表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された公爵令嬢ですが、身に覚えのない冤罪を晴らしたいだけです  作者: 明衣令央


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
32/33

第32話:未来への歩み――王太子としての誓い


 クロノス様からわたくしの伝言を聞いたウイリアム殿下は、王宮へと戻ると、すぐに国王陛下に謁見の申し込みをした。

 国王陛下は王妃殿下と共にすぐにウイリアム殿下と会い、ウイリアム殿下のやつれた顔を見て胸を痛めた。


「ウイリアム……無理をしておらぬか。少し休め……お前は、まだ……」


「そうよ、このままだとエレノア嬢だけではなく、あなたまで体を壊してしまうわ……」


 けれど、心配する両親の前で、ウイリアム殿下は首を横に振った。

 そして胸に手を当て、宣言する。


「父上、母上。僕は……王太子として、これからの国を支えるために学び、経験を積みたいと思います」


 殿下の声は震えていたが、その瞳には強い意志が宿っていた。


「ウイリアム……お前……」


「僕は、エレノア様に相応しい王になりたいのです。あの方が……いつか戻ってきたとき、胸を張って迎えられるように」


 その言葉に、王妃殿下は思わず口元を押さえ、涙をこぼした。

 国王陛下もまた、痛々しいほどの息子の決意に胸を締めつけられながらも、誇らしげにうなずく。


「……ウイリアム。その覚悟、確かに受け取った。これからは私の隣で、国のことを学ぶがよい。私も、協力は惜しまない」


「はい、父上」


 ウイリアム殿下は国王陛下に深く頭を下げた。





 それから数日後、王宮に重々しい知らせが届いた。


「隣国の王子セドリック王子が、帰国前にご挨拶に来られるそうです」


 セドリック――その名を聞いた瞬間、王宮の空気がわずかに揺れた。

 留学生として王都に滞在していた少年が、実は隣国の王子だった――その事実が明らかになったのは、アレクシス殿下の婚約破棄宣言後の事情聴取の後のことだった。

 そして今回の事件に関わった刺客の証言から、セドリック王子が裏で糸を引いていた可能性が浮上していた。

 だが、証拠は決定的なものではない。

 だから王家としては、外交問題を避けるため、表立って追及することはできなかった。

 そんな中、セドリック王子は帰国前の挨拶という名目で、ローレン王国の王宮を訪れたのだ。




 謁見の間に現れたセドリック王子は、国王陛下と王妃殿下に対し、身分を偽って留学していたことを謝罪し、淡々と帰国の挨拶を述べた。

 セドリック王子は終始穏やかな笑みを浮かべていたが、その瞳はどこか底知れず、冷たい光を宿している。


「初めまして、ウイリアム殿下。この度は……大変なことになりましたね」


 丁寧な言葉だった。

 しかし、その声音には「愉悦」のようなものが混じっていた。


「あ、そうだ……エレノア様のこと、本当に残念でした。あれほど美しく、聡明な方は滅多にいないのに」


 ウイリアム殿下の胸が、ぎゅっと締めつけられる。

 なんだ、この言い方は……エレノア様はまだ生きているのに、と思う。

 だが、ウイリアム殿下は表情を崩さなかった。


「……ええ。ですが、僕は前を向きます。この国のために、そして……エレノア様のために」


 セドリック王子の笑みが、わずかに深くなる。


「強いですね、ウイリアム殿下は。兄上の件でも、これから大変でしょうに」


 挑発――明らかな挑発。

 怒りで胸の奥がざわめいた。

 ウイリアム殿下は一瞬だけ拳を握りしめたが、表情を崩さずに続ける。


「確かに、大変ですね。けれど、僕は逃げません。新たな王太子として、自分の責務を果たします」


 その返答に、セドリック王子は目を細めた。


「……なるほど、ね。やはり君は手強そうだ」


 その言葉は、まるで“獲物を見定める獣”のようだった。


「では、帰国の準備がありますので。またいずれ……お会いしましょう、ウイリアム殿下」


 セドリック王子は優雅に一礼し、背を向けて歩き去った。

 その背中には、


『将来、必ずウイリアムの前に立ちはだかる影』


 が、確かに揺れていた――。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ