表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
婚約破棄された公爵令嬢ですが、身に覚えのない冤罪を晴らしたいだけです  作者: 明衣令央


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
29/33

第29話:エレノアの容態



 わたくしが凶刃に倒れたその後、わたくしは王宮へと運ばれ、王宮医師の治療を受けた。

 けれど、アレクシス殿下の短剣には毒が塗られており、毒の回りが早かった――。


「……エレノア様……どうか……どうか目を開けてください……」


 ウイリアム殿下はわたくしの手を握りしめ、震える声でわたくしに何度も呼びかけてくれていた。

 けれど、わたくしの意識は戻らなかった。

 医師たちは、毒の種類を特定できず、治療法も見つからないまま、ただ首を振るばかりだった。


「このままでは……時間の問題かと……」


 その言葉に、ウイリアム殿下は顔を歪め、国王陛下は深く目を閉じた。

 連絡を受け、王宮へと駆け付けたお父様が、わたくしをクロノ家に連れて帰ることを決断し、わたくしは王都にある屋敷へと移された。






 クロノ家の治療室は、王宮とは違う静けさに包まれていた。

 薬草の香りが漂い、淡い光が差し込む。

 クロノ家専属医師が治療を行った後、わたくしの部屋からクロノス・ダイアリーを持ってきたおばあ様が、わたくしの枕元にそっと置いた。


「クロノス様……どうか、エレノアをお守りください……」


 おばあ様の願いに応えたのか、クロノス・ダイアリーが光を放ち、わたくしの枕元にクロノス様が姿を現す。

 クロノス様はわたくしを見つめ、


『光と闇……闇に魅入られた者は、行いを正すことはできないのか……』


 と、ぽつりと呟いた。

 その言葉は、アレクシス殿下とリリアナ嬢に向けられていたのかもしれない。


「クロノス様……孫娘は助かりますでしょうか……」


 おばあ様がクロノス様に問う。

 クロノス様は長考の末、重々しく口を開いた。


『……この毒はただの毒ではない。邪悪な呪いもかかっておる。つまり、肉体だけでなく、エレノアの魂にも影響している。治療には、時間がかかるだろう……』


「治るのですか……? エレノア様は……助かるのですか……!」


 ウイリアム殿下の声は震えていた。

 クロノス様は、殿下の問いにすぐ答えなかった。

 ただ、わたくしの額に手をかざし、目を閉じる。


『……魂が、深い眠りに落ちている。呼び戻すには……エレノア自身の強い想いと、長い時間が必要だ。そして、肉体と魂と、両方を癒さねばエレノアはこのまま目覚めることはないだろう。エレノアの肉体がそれに耐えられるかどうか……わからぬ……』


「そ、そんな……。ではクロノス様……僕の命を差し上げます……時を戻し、どうかエレノア様を助けてください……」


「ウイリアム殿下、そのようなことを言ってはいけません!」


 お父様が止めたけれど、ウイリアム殿下はクロノス様に詰め寄る。

 クロノス様はウイリアム殿下を見つめると、駄目だ、と言った。


『我には、以前したように、過去を見せることはできる。だが、起こってしまったことを変えることはできぬ』


 だから、わたくしが毒のついた短剣で傷を負ったという過去を変えることはできないのだと、クロノス様は言った。


「そんな……エレノア様……」


 ウイリアム殿下は力なく首を横に振り、涙をこぼした。


「エレノア様……僕のせいで……あなたは……」


 ウイリアム殿下の声は、今にも消えてしまいそうだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ