第28話:崩れゆく王家――廃嫡と断罪
わたくしが倒れたその日――王宮は混乱に包まれていた。
アレクシス殿下は護衛に拘束され、震えながら父である国王陛下の前に引きずり出される。
「アレクシス……お前は、なんということをしたのだ!」
国王陛下の怒号が響く。
アレクシス殿下は震え、涙を流しながら、必死に言い訳の言葉を探す。
「違う……違うんだ……! 俺は……ただ……エレノアを……取り返したかっただけなんだ!」
「黙れ!」
国王陛下の声は、これまで聞いたことがないほど激しかった。
けれど、冷静にならなければと思ったのだろう、小さく息をつくと、氷のような冷たい目をアレクシス殿下へと向ける。
「アレクシス……お前には王太子としての自覚も、責任も、誇りもない! お前は……王家の名を汚したのだ」
「ち、父上……」
その瞬間、アレクシス殿下の膝が崩れ落ちる。
「アレクシス。お前を――廃嫡とし、王宮からの退去を命ずる。お前の犯した罪は、王族として許されるものではない。もう、お前を王太子としておくことはできぬ。今後は北の離れに住まい、見張り以外との一切の接触を断つこととする」
「アレクシス……本当に、どうしてこんなことを……」
王妃殿下は顔を覆って泣き崩れる。
「父上、どうか考え直してください! 俺は第一王子です! 父上、どうか! 父上!」
アレクシス殿下は必死に国王陛下を呼んだが、国王陛下はそれに応えることなく、兵士に引きずられていった。
アレクシス殿下が連行されたあと、王宮にはさらに重い空気が流れていた。
次に呼び出されたのは、ダロウ男爵と、その娘リリアナ嬢だった――。
「ダロウ男爵、前へ」
国王陛下の声は低く、怒りを押し殺したような響きを帯びていた。
ダロウ男爵は青ざめ、震える足で玉座の前に進み出る。
「こ、国王陛下……! どうか、どうかお慈悲を……!」
「黙れ」
その一言で、場の空気が凍りつく。
「お前の娘リリアナは、王太子であるアレクシスと共謀し、第二王子ウイリアムの命を狙った。さらに、毒を塗った短剣を用意し、刺客を雇い、王族を危険に晒した。これは――王家への反逆に等しい大罪だ」
「そ、そんな……! 私は……私は何も……何もしていませんっ!」
「親として娘の行いを止められなかった時点で、責任は免れぬ。それに……お前に雇われたという刺客たちの証言も一致している。毒を塗った短剣も、お前が用意したものだと調べがついておるのだ!」
国王陛下の言葉に、ダロウ男爵は崩れ落ちた。
「ダロウ男爵家は、取り潰しとする。領地は没収、爵位は剥奪。お前は王宮の地下牢にて拘束し、後日正式に裁きを受けよ」
「ひ、ひぃっ……!」
護衛に引きずられていく男爵の姿は、もはや貴族の威厳など微塵もなかった。
そして、次に名を呼ばれたのは――娘であるリリアナ嬢だった。
「リリアナ・ダロウ。前へ」
リリアナ嬢は、先ほどまでの狂気じみた笑みを失い、まるで別人のように青ざめて震えていた。
「わ、私は……私は悪くないの……! アレクシス殿下が……そうよ、アレクシス殿下が、エレノアを殺せと言ったのよ……!」
「黙れ」
国王陛下の声が鋭く響く。
「お前は父親に刺客を手配させ、毒を用意させ、刺客を誘導した。そしてアレクシスと共に毒を塗った短剣で、ウイリアムを襲い、エレノア嬢を傷つけた。その罪は、アレクシスの命令の有無とは関係ない。お前自身の意思で行ったことだ」
「ち、違う……違うの……! 私は……私は……!」
リリアナ嬢は泣き叫び、床にすがりつく。
「リリアナ・ダロウ。お前を――王宮地下牢に投獄する。罪状は、王族殺害未遂および反逆行為。後日、正式な裁判のもと、刑を決定する」
「いやぁぁぁぁぁっ! 助けて! 誰か、誰か、助けてぇぇっ!」
リリアナ嬢の悲鳴が王宮に響き渡る。
しかし誰一人として、彼女に手を差し伸べる者はいなかった。
こうして――ダロウ男爵家は滅び、リリアナ嬢は罪人として地下牢へと連れて行かれた。




