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婚約破棄された公爵令嬢ですが、身に覚えのない冤罪を晴らしたいだけです  作者: 明衣令央


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第20話:ウイリアムの告白――揺れる心


 セドリック王子に会い、王宮に報告をした翌日、わたくしは学園を休んだ。

 昨日の出来事が頭から離れず、胸が重くて仕方がない。


 セドリック王子の言葉。

 アレクシス殿下の動揺。

 王家の緊張。

 そして――ウイリアム殿下の静かな瞳。


 あの婚約破棄を言い渡された日から、立て続けにいろんなことが起きている。

 これからわたくしは、どうなっていくのだろう……。

 いや、もうわたくしだけの話だけではなく、この国もどうなっていくのだろう。


「エレノア様。ウイリアム殿下がお見えです」


「……ウイリアム殿下が?」


 執事が来客を知らせ、驚く間もなく、扉が静かに開いた。

 わたくしは頭を下げ、ウイリアム殿下をお迎えする。


「エレノア様。突然の訪問、失礼します」


 ウイリアム殿下は、いつもの穏やかな表情で立っていた。

 けれど、その瞳には強い決意のようなものが宿っているように思う。


「エレノア様はやはり、今日はお休みされていたのですね。兄は……自分があなたを守るのだと言って、学園へと向かったのですが」


 ウイリアム殿下が苦笑する。

 昨日学園に戻ったばかりだったため、学園に向かうことも考えたのだけど、足がすくんでしまったのだ。

 アレクシス殿下には、やはりわたくしの気持ちは理解できないのだろう……そんなことを思った。


「ウイリアム殿下は……どうして、ここへ?」


「エレノア様に、お伝えしたいことがあって来ました」


「わたくしに?」


「はい」


 ウイリアム殿下が頷く。

 そしてわたくしの方へと一歩近づくと、ウイリアム殿下はわたくしを見つめ、言った。


「兄上の件があり、今のエレノア様は、ローレン王家との婚姻を結びたくないかもしれません……。ですが、兄上ではなく、僕との婚約を考えていただけないでしょうか?」


「え?」


 思いがけない言葉だった。全く予想をしていなかった。

 なぜならわたくしは、ウイリアム殿下よりも五つも年上だからだ。

 そして思ったのは、昨日王家に報告した件で、ウイリアム殿下を巻き込んでしまったのではないか、ということだった。

 そうでなければ五つも年上の相手に、ウイリアム殿下が婚約の話をするはずがない。


「わたくしは……ウイリアム殿下を巻き込んでしまったのですね……」


「エレノア様、違いますっ……」


 わたくしの言葉に、ウイリアム殿下は首を横に振った。


「エレノア様。僕は、ずっとあなたに憧れていました。ずっと昔からです。そして今は、ただ憧れているだけではなく、あなたを守りたいと思っています。あなたがどんな選択をしても、あなたの味方でいたいのです」


「でも……わたくしは、あなたの未来を奪ってしまうことになるのではないでしょうか……」


 いいえ、とウイリアム殿下は首を振った。


「違います。僕は、自分の意思であなたを選びたいのです。むしろ、僕の未来にあなたがいてくださることは、僕にとって幸福でしかないのです」


「ウイリアム殿下……」


「僕は、昔から王位に興味がありませんでした。兄上とともにこの国を治めるあなたの助けになりたいと、今まで励んできました……。だけど今回のことがあり、この気持ちをあなたに伝える決意をしたのです……」


 胸が熱くなり、息が詰まった。


「エレノア様。どうか……僕に、あなたを守らせてください」


 その言葉は、アレクシス殿下の激情とも、セドリック王子の底知れぬ圧とも違う。

 静かで、真っ直ぐで、温かくて――わたくしの心は、大きく揺れた。




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