卒業生
クレイジーラボが襲撃されてから数日が経った。しかし、未だにノー・金は口を割っていない。指を折られても、体中を刺されても。
しかし、口を割らない限り、ノー・金が解放されることはない。そして今回は操が拷問することになった。
「いつになったら話してくれるの?」
「何をされようが言う気はない」
「じゃあ、君には地獄を見てもらう」
操がそう言うと、爪の先を金の腕に刺した。その途端、金の体中に焼けるような痛みが走り、さらに体が徐々に溶け始めていた。
「どう? 僕のスネークマンの毒は。痛い? 痛いよね。苦しいよね。早く君たちの情報を言えば、痛みなんか消えるよ」
スネークマンとは、操が生み出した生物のうちの一体である。
「貴様、そんなことをしていいのかよ。貴様らは人間じゃねぇ」
「何言ってるの? 僕たち超能力者には人権なんてないよ。あるのは超能力だけ」
金の体がさらに溶け、死にそうになるも、一瞬にして傷が治ってしまう。
「な……どうして?」
「死ねると思った? 残念。僕のスネークマンは解毒剤や回復薬も作れるの」
その拷問は数時間にわたり繰り返された。金は精神的にも限界が来ていた。しかし、決して口を割らなかった。
だが、それは繰に最終手段を使わせるには十分な要素だった。そして今、その最終手段を使おうとしていた。
「ここまでやっても口を割らないなら、時間の無駄だ」
「へっ、やっと気づいたか。さぁ、さっさと殺せ」
繰は指先から極細の糸を出し、その糸を耳から入れていく。
「何をするつもりだ」
「脳を弄って強制的に吐かせる。大丈夫。もう痛覚は毒で消したから」
「そんなことができるはずがない。いくら細い糸を出したところで、脳の構造を見たところで情報がわかるはずが――」
金は言い切る前に意識を失った。
繰は小さな声で呟いた。
「僕には心強い仲間がいるから」
繰は金から情報を入手し、その場を後にした。薄暗い廊下を渡り、クレイジーラボへ戻ろうとした。しかし、繰の前には剛が立っていた。
「施設長からの伝言だ。バイオレンス団の対策会議に出るようにだってよ」
「どうして僕が出ないといけないの? 外部のことは卒業生が担当するはずだけど」
「俺たちが幹部の一人を倒したことによって、参加が決まった。もちろん俺や豪腕も一緒だ。そして豪腕はもう向かっている」
繰は軽く舌打ちをし、剛と一緒に卒業生が来るであろう空港へ向かった。
空港は静かな暗闇に包まれていた。その中にひときわ目立つ人影があった。それは力魅だった。
三人が待っていると、突如、暗い空から光るものが操と剛へ向かってきた。二人はすぐさま気づき、臨戦態勢を取る。
二人組が空から繰と剛へ向かって攻撃を仕掛けてきた。
剛は【硬質化】を発動し、腕を硬質化させて剣を受け止める。
繰はくもおの超能力を発動し、糸で即席の剣を作り出して相手の剣を受け止めた。
静かな空港に剣がぶつかる音が響く。
二人組はまったく同じ服装で、顔までもよく似ていた。
二人組は繰と剛から距離を取り、大技を繰り出そうとしていた。しかし剛はすぐさま二人組の足を硬質化させ、操が糸で拘束した。
「なんで僕たちを襲ったんですか。
吾郎左衛門さんと六郎右左衛門さん」
「いやね、君たちの成長ぶりを確認したかったから。な? 六郎」
「そうですよ。悪いのは吾郎兄さんです。僕はあくまでも脅されてやったので」
「何を!」
二人が喧嘩を始めそうになると、オスプレイがゆっくりと姿を現し、降下する。
オスプレイから、ボールペンとキャンバスを持った男と、スーツ姿の女性が出てきた。
「そこまでにしろ。二人とも」
そう言うと、その男性はゆっくりと三人へ近づいてきた。
「久しぶりです、写画さん。やっぱり僕は三人の中で一番まともだと思います」
剛と力魅はゆっくりと後ろへ下がり、小さな声で雑談を始めた。
「どうして繰はあんなにかしこまっているの?」
「豪腕、知らないのか? 画は繰の憧れの人らしいぞ」
「何、二人で話しているの?」
「「何でもない」」
「あっそう。そういえば、後ろの女性は?」
「確かに。私も初めて見る」
女性はゆっくりと前へ出てきて自己紹介を始めた。
「私は清透香澄と言います。あの人たちと同じ超能力者で、卒業生です」
「でもさ、卒業生は三人だけじゃないの?」
「確かに力魅さんの言う通り、この施設から卒業したのは三人だけです。しかし私は別の施設の卒業生です」
画が吾郎と六郎の喧嘩を仲裁し、二人を連れてきた。
「雑談はそれくらいにして作戦会議をするぞ。今回はお前らの力が必要なんだ」
「「「絶対に嫌です」」」




