異変
クレイジーラボの警報機が赤く点滅し、警報音が鳴り響く。職員たちは研究資料や児童を安全な場所へ避難させる。
「労死先生、早く逃げようよ。僕の速さなら一瞬で逃げられるよ」
「ダメだ。ここにいなさい。ここが一番安全だ」
労死は頭を抱えていた。今まで侵入者がここまで来たことはない。だいたいはセキュリティがすべて解決していた。だが今は違う。
逃げ遅れた瞬の前では、セキュリティが金へと変えられ、機能を失っていた。そして、そのセキュリティを金に変えた人物が立っていた。
その男の姿は成金そのものだった。見るからに高そうな腕時計を着け、腕や首には金のアクセサリーを身に着けている。しかし、しっかりとしたスーツ姿で、胸にはバッジが付いていた。
「よう。俺の名前はノー・金。バイオレンス団の財務を任されている。そのガキをよこせ。ついでに他のガキの居場所も教えろ」
「はぁ……せっかく仕事がひと段落ついて、一人でUNOしてたのに。あと俺は、仕事とUNO以外はしたくない。児童を守るのは仕事だが、戦うことは仕事に入っていない。それに、どうして外国人が超能力を持っている?」
「敵に教えるほど俺はバカじゃない」
労死は警報音以外の騒音が聞こえ、笑みをこぼした。
「お前は運が悪いな」
金は煽られたと思い、戦闘態勢になって労死へ襲いかかろうとした。その瞬間、壁が破壊されるとともに、強烈な一撃が金の顔に炸裂する。
「よくも私の自由時間をなくしてくれたわね。今から、あなたをサンドバッグにしてやる」
力魅がキレたのである。
労死は力魅が壁を壊しながら近づいてくることに気づいていた。そして、金が別の部屋へ吹き飛ばされたことを確認すると、瞬を連れて逃げた。
「力魅を置いていって大丈夫なの?」
「大丈夫だ。力魅は力だけなら、このクレイジーラボで一番強い。それに、あのノー・金は可哀想だ。まさか、あの魔窟へ吹き飛ばされるとは」
労死はそう言い残し、避難した。
金は壁を数枚貫通し、暗い部屋へ飛ばされていた。
「なんだ、あの力は。いくら超能力だからって、あれほどの力はおかしいだろ。それより、ここはどこだ? かなり飛ばされたな」
突然、金の体は糸で巻き付けられていた。
「なんだこれ!」
糸が出てきた場所を見ると、操が立っていた。この糸は、生み出された生物の一体、くもおの能力だ。
「あのさ、突然部屋の中に入ってくると困るんだけど。せっかく寝てたのに」
「クソが!」
金は糸の束縛を解こうとするが、まったく解けない。
「くもおの能力【断糸】と【粘糸】は、それぞれこの世で一番硬い糸だよ」
「だったら!」
金は超能力【金操作】を使い、金を生成して操り、操へ攻撃しようとする。しかし、金は謎の石へ変わり、操作できなくなる。
「いやぁ、危なかったよ。操。俺のおかげで助かったな。お礼に次のカラオケ奢りで」
「は? 僕は当然気づいてたし。ていうか、剛が今まで自分で払ったことあった?」
「そんな細かいことはいいの」
剛はそう言い、金へと目を向ける。剛は超能力を発動し、金を硬質化させて動けなくしようとする。
その時――
「それは私のサンドバッグだから手を出さないで」
金を追って、力魅が壁を突き破って現れた。
「ふざけるな。お前が飛ばしたせいで、俺の部屋の壁が崩れたんだけど」
「何それ、知らない。あと、お前に聞いてない。いいから剛、やめて」
「不愉快だ。命令するな」
剛と力魅は互いに睨み合い、一触即発の空気になる。
「二人とも、やるなら僕の部屋以外でやって」
「うるさい。俺より年下が命令するな」
「あ? 今、この三人で一番強いのは俺だから」
「違う、私だもん」
「俺が一番に決まってるだろ。ふざけるな」
三人が喧嘩を始めようとしている中、金はチャンスをうかがっていた。
(足は固まって使えないが、超能力を使って三人とも殺してやる)
金は超能力で金を生成し、三人へ攻撃を仕掛けようとする。
だが、金はすぐに自分の過ちに気づいた。
「邪魔だ」
そう言われた瞬間、生成した金は粉々になり、三人の共通の敵となってしまったからだ。
その後、金は力魅に腕と足をそれぞれ折られ、操の糸で拘束され、さらに剛によって死なないように硬質化させられ、見事な石像ができあがった。
その後、労死が金の石像を回収したのであった。
ある二つの組織が、それぞれ動き始めていた。
とある場所では、スーツ姿の三人が話していた。
「金がやられました」
「何してんだよ、あいつ。勝手なことをしやがって。これじゃ資金調達が面倒になるぞ」
「仕方ない。他の方法を見つけよう」
そう言うと、黒いコートを着た人物が階段を降りてくる。
「心配ない。取られたなら、取り返すだけだ」
一方、クレイジーラボ付近の上空では――
「そろそろ、クレイジーラボに着きます」
「久しぶりだな。でも、あいつらは元気にしてるかな。なぁ、兄弟」
「そうだな。きっと元気だろう。お前も何か言ったらどうだ、画?」
「そうかもな」
「相変わらず無口だな」




