クレイジーラボの日常
日本だけに現れる超能力者。その割合は人口の一割いるかどうか。そして超能力を人工的に生み出そうとする施設、その名をクレイジーラボ。これはクレイジーラボの問題児たちのお話。
施設のチャイムが鳴り、一部の問題児以外は全員集まる。先生がいつものように問題児を部屋から引きずり出す。
「う~ん。やめて。私はまだ寝たいの」
そう言い、問題児は超能力【怪力】を発動した。先生の腕を軽く引きちぎり、駄々をこねる。しかし先生の腕は瞬きする間に再生し、再び問題児を部屋から出そうとする。
「力魅。部屋から出ろ。俺にはまだ仕事が山のようにあるから」
職員の名前は労死不老。超能力【不老不死】。この施設の職員で二人だけの超能力者。そして問題児の名前は豪腕力魅。この施設でのTOP3のうちの一人だ。
そうしてみんなが集まった。集まると朝の会をし、みんなの精神状況を確認する。朝の会が終わると、それぞれが別の実験室へ入る。
豪腕は主に腕に装置を付け、ひたすら合金でできた壁を砕くという実験を行う。
ここで他のみんなを紹介しよう。
実験室を音速ほどの速さで走っているのが走力瞬。超能力【超瞬走】。圧倒的なスピードで走れるが、体力が続かず、すぐ速度が落ちてしまう。現状では十秒しか走り続けられない。
実験室で倒れているのが重量改。超能力【質量変化】。自分の質量を変えることができる。ただし、気分で勝手に質量が変わるうえ、基本的に重くなる。それに加え、体全体の質量が変わってしまうため、立つことすらできなくなってしまう。
研究する超能力者は毎日同じではない。他にもたくさんの超能力者がいる。他の超能力者は自分の部屋にいるか、隔離されている。
そして、ここで一番厳重な実験室にいるのは世界蟲。超能力【不明】。どんな超能力があるのかは、まだはっきりとはわかっていない。ただ、とてつもない超能力であることだけは確かである。
今わかっていることは、近づいたものが一瞬で死ぬ【毒素】、遠距離攻撃をすると百倍になって返ってくる【百花返答】の二つのみ。他にも能力があることはわかっている。
世界蟲の一番危険な点は、一か月に一度SPPを減らさないと進化してしまうところである。
SPPとは超能力ポイントのことで、このポイントは生まれてから減ることはあっても増えることはない。しかし、世界蟲は例外である。
ただでさえ近づくのが困難な世界蟲のSPPを減らさなければならない。そして、そんなことができるのは、このクレイジーラボでも二人だけ。
その名を硬鏐剛と空元操。施設でTOP2を争う者たちである。
硬鏐剛。超能力【硬質化】。体を硬質化させ、防御力と攻撃力を上げる。一見地味に見えるかもしれないが、【硬質化】の本領はここから。なんと相手を硬質化させて動けなくしたり、相手の一部を硬質化させ、攻撃するタイミングで解除すると、相手の超能力すら硬質化させることができ、強制的に能力を解除できる。
そして空元操の能力は【空間操作】。ゲートを出現させ、物などを運んだり、貯蔵したりすることが可能なのだ。貯蔵できる最大重量は十トンほどである。
だが操は基本的に自分の超能力を使用しない。理由は、操が実験室を借りて生み出した九体の生物たちの力を借りて戦うからだ。この九体の生物についての説明は後ほど。
そして今、この二人が世界蟲の相手をし、なるべく力を使わせる。
「じゃあ、剛。始めるよ。防御よろしく」
「言われなくてもわかってる。そっちこそ攻撃よろしく」
そう言い合い、世界蟲のいる重い実験室の扉の中へ入っていく。
「世界蟲、久しぶり。また手合わせお願いね」
そう言うと操は指から眩い光を放ち、その光が世界蟲へと飛んでいく。これが生み出された生物の一体、ティレイの超能力【破壊光線】。その名の通り、破壊光線を相手に撃つ能力。ただし威力はとてつもなく、本気を出せば軽く辺り一帯を火の海にできてしまう。だからこそ今回はほとんど溜めずに破壊光線を撃った。
眩い光が高速で世界蟲へ向かう。しかし光は世界蟲の直前で止まる。そして世界蟲の超能力【百花返答】により、破壊光線は百発に増え、すべて操へ返ってきた。
しかし――
「させるか。【硬質化】」
硬鏐剛により、破壊光線は硬質化の範囲内に入った瞬間、石と化した。
「これでどれくらい減ったかな?」
「こんなんじゃ、全く減ってないだろう」
「じゃあ、準備運動はこれくらいにして、そろそろ解放しますか」
そう、ここからが本番。
クレイジーラボには五段階のロックがかけられている者たちがいる。そして、このロックを解除すると、解除前とは比べものにならないほど強くなる。
「管理室にフェーズ2への移行を送信」
基本的に超能力は管理室で管理され、許可を得ないと力を解放することができない。
『確認しました。フェーズ2への移行を許可します』
「んじゃ、始めるぞ。ここからは自分で防御してくれよな」
「はいはい」
そう言うと二人はその場から一瞬にして消え、様々な攻撃を繰り出した。
剛は世界蟲の背中から表面を硬質化させて剥がし、そこへ自分の硬質化させた拳でひたすら殴り続ける。
「(にしても硬すぎるだろ。前よりもはるかに硬く、超能力が効きづらくなっていやがる)」
一方、操はくもおとティレイで攻撃し、プテラノドンくんで空を飛び、有効打を探す。
「(どうして毎回有効打が変わるんだよ。しかも、くもおたちのダメージが効きづらくなっている。……もしかして)」
操はすぐさま剛を呼ぶ。
「わかったことがある。おそらくだけど、世界蟲の超能力の一つは【適応】。僕たちの超能力が効きづらくなっていることから推測できる」
「でもよ、その適応にはすごい時間がかかるみたいだぜ。じゃないと、とっくの昔に俺らの超能力は効かなくなっている」
「とりあえず、管理室に連絡を」
操は管理室に連絡し、判断を仰いだ。しかし、その判断を聞いて操は唖然とした。
「どうした?」
「管理室から、SPPが全く減っていないから、死んでもSPPを減らせだって」
「あの野郎ども……無茶を言うな」
「とりあえず、減らさない限り僕たちは出られないよ」
「わかってる。お前のところのしゃっちゃんを貸してくれないか? あいつの超能力はまだ適応されてないはずだ」
「なら、僕がやるよ」
剛が操を睨み、胸ぐらをつかむ。
「無茶はよせ。お前は同時に四体の超能力しか使えない。今の超能力を外せば、確実に死ぬぞ」
「しょうがない。わかった」
操が剛の手を取ると、青い光が剛の中へ入っていく。
「後で返してよ」
「おう。それじゃ、続きを始めるか」
その後の戦いも圧巻で、二人とも世界蟲の攻撃を受けることなく、有効打を叩き込んでいた。
戦いが始まってから三時間後、やっと世界蟲のSPPを基準値まで減らすことができた。その時の二人は満身創痍だった。
そして一日の研究が終わると帰りの会をし、それぞれの部屋へ戻っていく。
これが大まかな一日の流れだった。
そんなある日、クレイジーラボを狙う怪しい影が現れる。
「ここがクレイジーラボか。ここのガキどもや研究資料を盗めば、我らの国もより発展するだろう。確かに超能力者は日本にしかいない。だが、その理由は解明済みだ」




