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かけがえないんだろう、と騙されてあげる  作者: 今井葉


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器に落ちてくる氷の粒よ、お久しぶり、こんにちは。―枕草子

 梅雨前。五月なのに十分な暑さではないだろうか。きょうだいたちは扇風機の取り合いをしているし、「エアコンどうする?」なんて話をしたり。



 怠い。身体が茹だる。台所で、水で洗い物が気持ちいい。



 動画視聴に飽きた娘が台所にやってくる。

「ねえ、かき氷食べたい」

 ハンディファンを顔に向けつつ、真剣そのもの。確かにそうなのだ。暑い。暑すぎる。そう、かき氷。それっきゃない。

「かき氷機出そう」

 私が答える前に息子が棚へと手を伸ばす。

 私は冷蔵庫を開ける。

「氷、オッケ。シロップ、賞味期限オッケ」

「これは来ましたな」

と、息子。


 

 果たして、かき氷作りが始まったのであります。




 僕が僕が、私が私が、とひとつしかないかき氷機を取り合い、ごりごり回し出す。器に落ちてくる氷の粒よ、お久しぶり、こんにちは。なんて美しいの⋯つい見惚れてぼうとしてしまう。



 枕草子。あてなるもの。ここで参照しましょうよ。

「あてなるもの。⋯削り甘葛あまづら入れて、新しきかなまりに入れたる。⋯」

 上品なもの。かき氷に甘いつゆをかけて新しい金の器に入れたの。とある。そうだ。これぞ日本最古かと思われるかき氷の出来上がり。清少納言さんも好きだったのね!



 我が家はガラスの器だけど、

「まずはいちごでしょう!」

と、娘は削りあがった氷に赤いシロップをかける。

 なんてあてなる。氷のつぶがきらめいているではないの。

 息子はブルーハワイ一択とばかり、たっぷり青いシロップをかけて頬張る。一気に我が家に涼がやってくる。



 私が狙ってるのは、冷蔵庫の中にある煮た小豆。作ろうとしてるのは宇治金時。ほろ苦さと小豆の甘さのハーモニー。これぞ、和の心よ。



 小豆煮ておいてよかった⋯小さくガッツポーズ。



 清少納言さんも大好きな削り氷。私もいただきます。




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