表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/8

蛙の妹ははたして蛙なのか

PM 6:00 美術室


武史くんの特訓が終わり、僕は床に転がっていた。

部長が、珍しくスマホをチェックしている。


「……おっと、すみれからLINEだ」


「すみれ?」

僕が聞き返すと、部長が少し困ったような顔をした。


「ああ、僕の妹だよ。中学2年生なんだけど、最近やけに『お兄ちゃんの部活、何やってるの?』ってうるさくてね」


部長がスマホの画面を見せてくる。

そこには、ツインテールの可愛らしい少女の写真。


「可愛い妹さんですね」


うっかりアロハシャツの金髪ツインテールに錯覚してしまう佐藤は、自分を殴りたくなった。クセ強兄の妹はクセ強だと思っていたが、この命題は正しくないらしかった。


「ああ、可愛いんだけど……ちょっとお兄ちゃん大好き、が過ぎるんだよな。この前も、俺が女子と話してるだけで嫉妬して……」


部長が頭を掻く。


「マジで俺、妹に負けてばっかりでさー。可愛いツインテールとかしちゃってるくせに気づいたら完敗なんだよなw」


部長の声に、少しだけ妹に苦労する兄の姿が混じっていた。


「(……部長、妹のこと、大事にしてるんだな)」


その時、スマホが再び鳴った。


『お兄ちゃん、今日も部活? 誰かと一緒?』

部長が苦笑しながら返信する。


『今日は男子生徒の恋愛相談だよ。心配しなくていいから』


すぐに返信が来た。


『そっか!お兄ちゃん、頑張ってね!』


画面には、向日葵みたいに明るいスタンプ。

「(……妹さん、相当お兄ちゃんのこと好きなんだな)」

僕は、そんなことを思いながら、部長の後ろ姿を見ていた。


PM 3:30。

放課後の旧校舎は、特有の静寂に包まれていた。 僕、佐藤勇太の脳内では、今朝録画してきたアニメの続きが再生され始めていた。

このまま平穏無事に帰宅し、電子の海に溺れる。それが僕の、凡人としてのささやかな

「勝利条件」

だった。

しかし、その夢は無慈悲な音によって打ち砕かれる。

「失礼します……あの、こちらが『告白代行部』でしょうか……?」

恐る恐る、しかしその場を支配するような圧倒的な「華」を伴って現れたのは、星野キラリだった。

学園の校内ポスターのモデルを務め、その美貌は「1000年に一度の奇跡」と称される、誰もが知る超絶美少女だ。 


「おぉぉ! 星野キラリちゃんじゃないか! 本物がこんな薄汚れた美術室に来るなんて、我が部もついにハリウッド進出か!?」


神宮寺部長がアロハシャツの襟を正し、鼻の下を5センチは伸ばして出迎える。


「……データ外の事態ね。星野キラリ、偏差値65、容姿ランク特A。彼女に『代行』が必要な理由が論理的に見当たらないわ。他人の告白を断る代行なら需要があるでしょうけど」

一ノ瀬さんが冷徹にメガネを光らせ、タブレットで瞬時に彼女の学籍データを表示させる。

しかし、僕は見てしまった。

彼女の高級そうなブランドリュックの隙間から、かなり使い込まれ、綿がはみ出しそうになった


「パペット人形」


が覗いているのを。そして、その人形の服には、隣のクラスの極めて地味な男子、平凡ひらなみくんの名前が刺繍されているのを。


「あの……私に、『普通の恋』を教えてほしいんです!」

キラリは涙目で訴えた。その瞬間、僕の「凡人センサー」が最大級の警告音を鳴らした。これは、普通の依頼じゃない。


「……なるほど。事態は想像以上に末期的ね」


話を聞き終えた一ノ瀬さんが、珍しく眉間にシワを寄せた。

今回は少し短めです!一ノ瀬さん、深刻な顔をしていますがどこが末期的なのでしょうか、?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ