表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水の精霊 ~もっと光り輝いて~  作者: あるて
第1章 光が消えることはない

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/18

第8曲 新しい門出

 三か月後、スタジオに姉妹たちとわたし、五人が集まった。


「それでは、新会社『Fairy's Kin』の設立を祝って、かんぱーい!」


『Fairy's Kin』は妖精の眷属という意味でつけた。みんながわたしに力を貸してくれるのだから、これ以上相応しい名前はないだろう。

 わたしの音頭でそれぞれがグラスを掲げる。


 株式会社の設立と、福利厚生の充実、姉妹たちの仕事の引継ぎなどで必要な期間を過ぎて、今日ようやく起業へとこぎつけた。

 代表取締役社長はわたし。副社長にひより。専務はより姉。常務があか姉。映像技術部長にかの姉が就任。

 税理士や弁護士、社労士などは五代さんに紹介してもらった。


「自分たちで起こした会社となると、自分の城って感じがして気が引き締まるな!」


「正真正銘、わたし達の牙城だよ! これから発展させていくのも、先しぼみになるのもわたし達次第なんだからね」


 より姉とひよりはご機嫌でこれから先の展望を語っている。


「これで四六時中、ゆきちゃんと一緒にいられるんですね」


「私生活もカメラに収められる」


 かの姉とあか姉は私欲全開だ。

 プライベート時間にカメラを回すのはやめてね。どこぞの自主製作映画じゃないんだから。カメラを止めろ。


 全員晴れて成人を迎えているので、堂々とお酒を飲んでいる。

 みんなそんなに強くはないけれど、お酒を飲んで騒ぐのは好きな方だ。お祭り騒ぎが好きなわたし達らしい。

 でもそれくらいの遊び心がないと配信者というエンタメ業界ではやっていけない。


「あたし達の夢の第一歩! ゆき一人でもここまで来れたんだ。これからはあたしらもそばにいるから、さらなる発展を遂げていかないとな!」


 すでに顔を赤くしたより姉が、希望に満ちた言葉を口にする。


「あんまり無茶なことをしても負担がかかるのはゆきちゃんなんだからね。その辺のかじ取りをするのもわたし達の仕事だよ」


 ひよりもお酒が入っているはずなのに、言っていることは随分しっかりしている。

 末っ子にしては随分たくましく育ったものだ。


「あんまり忙しくしすぎたら一緒に過ごす時間が減っちゃうんだからね!」


 私欲かよ。せっかく見直したのに。


「当面は今までのペースを崩すつもりはないよ。配信活動に関しては以前も手伝ってくれていたから問題ないと思う。ただコンサートは一年以上前、テレビ出演に関しても生出演か収録化によってスケジュールの調整とか必要になるから、そのへんの交渉はお願いね。仕事を取ってくるのは五代さんがやってくれるから、みんなは自分の役割をしっかりこなしてくれるだけでいいよ」


 みんなはそれぞれの本業の分野で頑張ってくれるだけでわたしの負担はかなり軽減されるし、なにより動画の質が上がる。

 今までは空いた時間を使って手伝ってくれていたのが、これからはそれがメインになるのだから手のかけようも段違いだ。

 これからは世界に向けて発信していくのだから、プロの手を借りられるのは何よりもありがたい。


「もちろん自分の分野については本領を発揮するつもりだぞ。ただなぁ……」


 ん?

 より姉が言葉を濁すということは何かあるな。


「何か都合の悪いことがあるなら先に言っておいてよ。後から言われると対処も困難になるからさ」


「おや、都合が悪いってわけじゃないんだが……。その、以前もやっていたモデルのオファーがだな……」


 月に一度撮影していたモデルの話かな? そういえば倒れてからは話が来なかったから忘れてた。


「前と同じ契約でしょ? バタバタしてたからうやむやになってたけど、それくらいなら受けるよ。長期でツアーをする時なんかは難しいけど」


「いや。それがだな。障害を克服したからってことでテレビでも取り上げられるくらい話題性抜群になっただろ? それで専属モデルとして本格的に活動してほしいという話があってだな」


 本格的というのはどのくらいのことだろう。


「月に2回とか? それくらいなら普段は大丈夫だけど」


「そうじゃなくってだな。週に3回、ショーがあるときなんかの繁忙期はほぼ毎日って話なんだが……」


 ま、毎日!?


「いやいやいやいや。さすがに毎日は無理でしょう? わたしの本業はあくまでも配信者だからね?」


「それは向こうも分かってるんだけどさ! スケジュールに空きがあるときは是非にって言われてるんだよ」


 それって空いてる時間はほぼ毎日ってことじゃないの?


「まぁモデルの仕事は不定期だから、こっちの空きがある時だけなら可能な範囲では協力するけれど……」


 これって休める日があるんだろうか。


「それを言うならわたしも」

「わたしの会社もです」


 あか姉とかの姉も!?


「テレビに出るようになったら出演お願いしたいって。ちゃんと音楽番組」


 そりゃあか姉はテレビ局だもんね。話題性のある人物の親族が働いていたとなったらコネは作りたくもなるか。


「うちはイメージビデオの撮影などをお願いしたいそうです」


 かの姉のとこも映像制作会社だもんね。


「そういえばお父さんたちもゆきちゃんにCM撮影の話が来てるって言ってたよ」


 はぁ!?

 それって家族全員から包囲されてるってことじゃない?


 モデルの仕事はやるって言っちゃったし、アメリカが皮切りになるとしてもテレビ出演も前向きになっていると話した。

 これで仕事の選り好みをしたら、あちらを立てればこちらが立たずになってしまう。


「ひより。五代さんと相談してわたしのスケジュール管理してくれない?」


「オッケー! 任されました! ゆきちゃんが世界中で人気者になれるよう、お仕事いっぱいいれてくね!」


 おいおい。さっきは一緒にいる時間がどうとか言ってたんじゃないのか。


「むふふ~。秘書としてスケジュールまで管理するとなったら四六時中一緒にいられる」


 魂胆はそれか。

 しっかり口に出ちゃってますよ~。


 それにしても。

 各方面からの仕事が殺到してるよなぁ。これって下手な芸能人よりも忙しくなるんじゃないの?


「ちゃんと健康管理も出来るように、無茶なスケジュールは組まないから安心してね」


 頼もしいことを言ってくれる妹に望みを託すしかないか。


「ちゃんと七時間の睡眠は確保するから。家事がおろそかになるかもしれないから、この際ハウスキーパーを頼むことも視野に入れないと……」


 家事をする暇もないほど仕事させる気か!

 睡眠以外は全部仕事になるんじゃなかろうな……。


「力はないけど、体力はけっこうあるもんな。ゆきなら大丈夫だろ」


「そうですね。以前六十曲も唄って踊る配信企画をやったくらいですから」


「スタミナすごい」


 また懐かしい企画の話を。体力はあるけど、疲労は蓄積していくものだって知ってる?

 自分で料理を作れるときは疲労回復の献立をメインに考えておかないとだな。本当に料理する時間あるんだろうか。


「ゆきちゃんの料理は食べたいから、ちゃんとその時間も確保できるようにしておかないとね。手料理を食べられない期間が続くと禁断症状が出ちゃうもんね」


「そうだな。ゆきの料理がないとイライラする」

「精神的にも持ちませんね」

「手が震える」


 あんたらわたしが入院してた期間はどうしてたんだ。禁断症状出てる人もいるじゃないか。

 料理をするのは趣味と同じだから、その時間を確保してもらえるのはこっちとしてもありがたい。精神的な疲労は好きなことをやることで回復するものだからね。


 ひよりが仕事の内容をまとめるために、スタジオのホワイトボードに箇条書きしてくれた。

 モデル活動(専属)、ビデオ撮影、音楽番組出演、CM撮影、配信、動画収録。

 なんか配信と動画収録が副業みたいになってない?


「こんばんわ~」


 そんな話をしている時に、タイミングよく五代さんがやってきた。

 事前に玄関を開けておくから勝手に入ってくるように言っておいたから。ちなみに入った後に鍵は閉めてもらって。


「ゆきちゃーん! 会社設立おめでとー!」


「こ、琴音ちゃん!?」


 なんかついてきた。


「もう! 新しい門出のお祝いに呼んでくれないなんてひどいよ! 同じ事務所の仲間でしょ!」

「ゆきさん、ごめんなさい。お祝いしに行くと言ったら一緒に行くと聞かなくて……」


 五代さんが申し訳なさそうに謝罪する。


「いえいえ! 琴音ちゃんの仕事が忙しいと思って声をかけそびれただけで、一緒に祝ってくれるなら嬉しいですから」


「お仕事よりゆきちゃん優先だよ!」


 それはそれでどうかと思うよ。

 ちゃんとお仕事頑張ろうね。


「まぁ琴音の事は置いといて。ゆきさん、この度はおめでとうございます」


 置いとかれちゃった。


「ありがとうございます。ここまでこれたのも五代さんの助言のおかげです。重ね重ねありがとうございました」


「大げさですよ。わたしはあくまでもアドバイスをしただけ。それを実現できたのはお姉さん方の愛情と、ゆきさんの人望の賜物です」


 謙遜してはいるけれど、その表情ははにかみ笑い。

 マネージャーが自分のファンだというのはこんなにもありがたいものなのか。


「わたしだってゆきちゃんへの愛情なら負けないよ! ゆきちゃん、困ったことがあったら何でも言ってね」


 鼻息荒く詰め寄ってくる琴音ちゃん。その心意気はありがたいんだけどね。

 ちょっと近いよ。


「あたしらがいるからお前の出番はねーよ」


 そう言ってわたしと琴音ちゃんを引きはがすより姉。

 なんだかいつもより手荒いような気がするんだけど、ひょっとして酔ってる?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ