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水の精霊 ~もっと光り輝いて~  作者: あるて
第2章 一等星になりたくて

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20/23

第19曲 サムライガール

 今日はひよりと一緒に考えた企画の配信日。


「ゆきちゃん、本当に大丈夫?」


 ひよりが心配そうに聞いてくる。当たり所が悪ければ大けがをする可能性もあるだけに、見てる側としては心配してしまうのはよく分かる。わたしも姉妹の誰かがこんなことやるって言ったら止めるし。

 だけどわたしの態度は余裕そのもの。


「ダイジョブダイジョブ! 何度か練習してるし、万が一にも失敗はないよ」


 一応体に当たっても怪我をしないように生地の分厚い道着を着てるけど、顔は特段何もせず、ゴーグルもはめてはいない。

 そんなものをつけたら視界が遮られて逆に危ないからね。


 リラックスした状態で配信時間まで待機。

 今日のカメラマンは急遽代打としてより姉が担当。あか姉は射撃主としてスタンバイしているからだ。

 試射の時にみんなやりたいというから順番に撃たせてみたんだけど、あか姉以外はみんな背筋が凍り付くような結果だった。


 誰一人的に当てることが出来ないのは良いけれど、デッドボールどころではない位置にバンバン撃たれては安心して任せることなんて出来やしない。わたしは犯人役のパネルじゃない。

 圧倒的なエイム力であか姉にお任せすることが決まったから、代わりのカメラマンとして以前の仕事でモデルを撮影したこともあるより姉に代役をお願いしたわけ。射撃役はひどかったからね。


 あか姉もすっかり乗り気になって、銃を肩に構えてサングラスをかけている。それが妙に似合うから逆に面白い。

 さっきかの姉が後ろを通ったら銃口を向けられていた。


「わたしの後ろに立つんじゃない」


 あんたは超A級スナイパーか。

 わたしの事は生かしておいてくださいよ。

 Now Loadingの画面が終わり、いつもの挨拶を済ませると、そのまま今日の企画の説明。


「今日はね! わたしの運動能力と反射神経、動体視力の限界に挑戦してみたいと思います!

 題して、『エアガンの弾をキャッチできるのか』企画です~!

 なに? 相変わらずのネーミングセンス? うるせーよ。

 名前はともかく、すっごく危険なことだから、良い子のみんなは真似しちゃダメだよ。悪い子は怪我しても知らないからね。くれぐれも真似したりしないように!」


 元々神経が活性化してるのは小さい頃に負った障害のせいだから、普通の人が真似しようとしても相当な訓練を積まないとできるものではない。反射神経というのは人によって限界があるから、才能と努力の両方が必要なものだからだ。チートのわたしは別として。


 かの姉には後で『この人は特殊な人物で特殊な訓練を受けています』というテロップを入れてもらう予定。


「ちなみに今回用意したのは東京マルイさん発売のボルトアクションライフル。秒速九十五メートルというとんでもない速さで飛んでくる弾丸をキャッチすることが出来るのか! 時速に換算するとなんと三百四十キロ! 新幹線より速いよね。これをキャッチ出来たらわたしは新幹線を止められるということになるねぇ」


【ならねーよ】【ゴジラか】【いやキングコングだろ】【ゆきちゃんなら物理法則無視できそうだからなぁ】


 誰が大猿だ。さすがに物理法則には勝てないぞ。


「冗談に決まってるでしょ。小さい弾だから挑戦できるけど、基本的にわたしはか弱いからね」


 そう言ってカメラに向かってウィンクすると、流れていたコメントがぴたりと止まった。


【は?】【か弱い?】【彩坂きらり:ちょっと国語辞典調べてきます】【時代によって言葉は変わるからねぇ】


 どういう意味だコラ。言葉の誤用なんてしてねーよ。


【柔道着がそれだけ様になってる人がか弱いとか草生える】【大草原】【コメ欄にわかにサバンナ化】


 やかましいわ。そのままライオンにでも襲われるがいい。


「さて、アホなリスナーさんの相手をしていても時間が過ぎていくだけなので、さっそく準備に入るよ。ゴ〇ゴあか姉、準備はいい?」


 さっきから微動だにせず銃を肩にもたれさせているので、すっかり成りきっているのがよくわかる。意外とノリがいいんだよね。


「プロなら準備などいつでも出来ている」


 おぉ。常在戦場の心構えですな。っていつからプロになったんだ。

 突っ込むと長くなりそうだからそこは軽く流して配置についた。


 いくらうちの地下室が広いとは言っても、対角線上に立って最大限に使っても10メートルというのが限界だ。

 到達時間は約0.1秒。普通の人間の反応速度の限界値。反応はできてもそこから筋肉を動かしてキャッチしなければいけないから、反応速度はもっと上げる必要がある。


 やがてあか姉が打ち合わせの場所に着き、その射線上に立ちふさがるわたし。

 練習の時は危ないからと射線の横から手を出していたので、正面から向かい合うのはこれが初めてだ。

 周囲はもちろん、わたしとあか姉の間にも緊張感が満ちていく。


 特に合図などは決めていない。合図を決めてしまうと予測で動くことも可能になるから。

 あくまで動体視力で弾丸を捉え、反射神経と腕の振りの速さでキャッチをしないと意味がない。

 腰を落として構えを取り、集中力を高めていく。決して見逃すまいと銃口を睨みつけ、わずかな動きも見逃さない。

 高まる緊張感。誰かが唾を呑み込む音がした。


 次の瞬間、空気の音と共に銃口から白いものが飛び出してくるのをしっかりとらえた。

 決して目を話すことなく腕だけを動かし、寸分の狂いもなく弾道上をわたしの腕が横切っていく。それはまさに刹那の瞬間。

 今のわたしが持てる最大の速さで腕を動かした。


 皮手袋をはめた掌中に小さな衝撃を感じた。確認するまでもなくこの手の中に納まっているのが分かる。

 より姉が構えるカメラの方に近寄り、拳をゆっくりと開いて見せつけた。

 黒い革手の上に転がる小さな弾丸。


「せ、成功だな!」


 カメラの後ろからより姉の興奮した声が上がった。あか姉がニヒルな笑みを浮かべながら歩いてくる。親指を立てて。

 いつまでなりきってんの。


 より姉が構えてたカメラと定点設置してあった二台のカメラを回収してかの姉に手渡してもらう。

 わたしはモニター前に移動してリスナーさんのコメントを確認。


【え、何が起きたの?】【早すぎて見えんかった】【取れたんだよね?】【日向キリ:スロー再生は?】


「今、かの姉が三つのカメラの録画を確認してるからちょっと待ってね」


 かの姉が手馴れた手つきで録画データを編集している。ほどなくしてさっきのわたしの姿が映し出された。



 ライフルの方を睨みつけ、微動だにしないわたし。スロー再生でもブレるほどの勢いで腕が動いたかと思うと前方から小さなものが飛んできて、それが手の中に納まった。


 腕以外は頭も体も、ほとんど動いていない。

 機械のような正確さと速さで、寸分の狂いもない緻密な動き。


 自分で言うのもなんだけど、その一連の動きは芸術的に美しく見える。

 実際姉妹たちも見とれていたのか、より姉が撮ったカメラの映像は少し揺れていた。


 カメラを三台使っていたので、スロー再生は違う角度から三度再生された。どの角度から見てもまさに完璧無比なタイミングと動き。

 コメント欄も賞賛と感心の言葉であふれており、見ている人に感動を届けることが出来たようだ。

 いつもの歌とダンスとは違うけど、これもまたエンタメとして人々を笑顔にすることが出来ただろう。


 その後は柔道着を脱ぎ捨て、いつも通りの可愛い姿に戻ってからコメントの読み上げを行って、最後に歌を唄ってその日の配信は終了となった。

 それなりにいい動画を提供することが出来ただろう。その時はその程度に思っていた。



 めっちゃバズった。

 映像としてはめっちゃ地味なのに。

 音としてはパシュ、フォン、で終わり。それ以上でも以下でもない。


 だけど海外でも大量に再生されたようで、ついたあだ名が『サムライガール』

 なんでガールやねん。

 ついこないだ結婚報告したばっかりだろうが。


 まぁけっこう緊張したから、その緊迫感が伝わって、いかにもな感じの雰囲気になったんだろうけど。

 だって当たったら痛いんだもん。そりゃ緊張するっての。


「痛いのはイヤだから真剣にやっただけだよ」


「ゆきの真剣な表情がカッコいい」


 あか姉の言葉に華が咲く。うそん、わたしカッコいい?


「今は可愛い」


 もうそれでもいいよ! 物事に真剣に打ち込む姿をカッコいいって言われるのは男として嬉しいものだからね!

 だけどその真剣さが結果としてこういったエンタメが大好きなアメリカを中心に大ヒット。以前にも増してわたしの知名度が上がることになった。


 これでいよいよかの地に乗り込む準備が出来たのかもしれない。

 次はいよいよ本丸攻略だ。

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