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水の精霊 ~もっと光り輝いて~  作者: あるて
第2章 一等星になりたくて

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18/20

第17曲 二人だけの時間

 少し心配だったメディアの反応だけど、数日後に発売されたいくつかの雑誌の誌面を見ると、意外にも好意的な論評が並んでいて驚いた。


「家族愛の究極形」「いつまでも支え合う家族」「切れない絆を永遠に」「愛に正解はない」「最も長い愛のカタチ」


 などなど、倫理観にうるさい日本のマスコミにしては随分と肯定的な意見ばかりが並んでいる。

 一部のスポーツ新聞などは面白おかしく「ハーレム」なんて言葉を使っているけれど、それすらも非難するものでなく、羨ましいけどそれだけの深い愛情を持っているなら愛される方も幸せだろうという論調で締められている。


「なんか拍子抜けだよね」


「もっと叩いてほしかったのか?」


「別にそういうわけじゃないけどさ。ってほとんど読んでないでしょ」


 隣に座って一緒に読んでいるのだけど、より姉は雑誌など見ずわたしの方を見て終始ニコニコしている。


「そんなの最初の数行を読めば大体どんなことが書いてあるか分かるだろ。そんなことよりお前のことを見ていたいんだよ」


 今日はかの姉とあか姉、ひよりの三人は新しく立ち上がる配信者事務所のアドバイザーとして五代さんに呼ばれ、留守にしている。

 わたしはいらないのかと聞いたら、今日は技術的なことを聞きたいからと返されてしまった。わたしも自分で編集してたんだけどなぁ。そりゃかの姉の作ったもののクオリティには遠く及ばないけどさ。


 そういうわけで今日はより姉と二人きり。

 みんなが出かけてからは片時も離れず、わたしにくっついたまま上機嫌で鼻歌なんかも歌ってる。

 甘えてるというかめっちゃ懐いているというか、とにかくべったりだ。


「二人きりになれたのがそんなに嬉しいの?」


「そんなの当然だろ。ゆきは嬉しくないのか?」


 わたしの質問に口を尖らせる。なんだかいつもと雰囲気が違うよなぁ。


「わたしだって嬉しいよ。みんなと一緒ってのもいいけど、たまには二人きりになりたいこともあるよね」


 そう答えると、花が咲いたような笑顔になった。


「だよなだよな! あたしも別にみんなといるのがイヤってわけじゃないんだが、ゆきと二人きりというのはなんか特別感があって」


 そこまで言うと今度はモジモジしてしまった。


「特に今日はみんな夜まで帰ってこないってことだったし、時間はたっぷりあるだろ……」


 そう言ってわたしを見上げるその瞳はどこか潤んでいるようで、なんとも言えない色気というか、艶やかな雰囲気を感じてしまう。

 しばらく黙って目を見合わせていると、首の後ろに手を回してきたので、そのままキスをした。


 いつもとは違う、求めあうような大人のキス。とても濃厚な抱擁でお互いの胸がつぶれ、否応なしに密着感が上がってしまう。

 より姉が首に手を回しているので、自然とわたしは腰に手を回す形になり、その細い腰に手が触れるとドキドキしてしまう。

 もう少年ではないけれど、それでもまだ若い男性だ。そのスタイル抜群な体のラインを意識してしまうと、体中を血液が駆け巡ってしまう。


「ゆき……」


 甘えるような、なまめかしいような吐息と共にわたしの名前を呼んでくる。

 すっかり雰囲気にあてられてしまったのか、現実感が薄れて頭がボーっとしてきた。


 さらにお互いを求めあう口づけは激しいものとなり、その手は何かを確認するかのように相手の体を這っていく。

 より姉の手もまさぐるようにわたしの体を這いまわり、やがて胸へと到達してしまった。


「よ、より姉……」


「キレイだぞ、ゆき……」


 少し驚いたけど、ちっとも嫌な気分じゃない。むしろもっと触れて欲しいとすら思ってる自分がいる。吐息が乱れる。

 より姉の指が、胸の中でも敏感な部分に触れた。しびれるような感覚に思わず変な声が漏れてしまう。恥ずかしい……。


「そんな声も可愛いんだな。ゆきの全てが愛おしいぞ」


 唇に触れていたより姉の顔がずれ、首筋に顔を埋めてくる。舌が首を這いまわり、ぞくぞくとした感触でさらに大きな声が出てしまい。


「より、姉ぇ……」


 猛烈な恥ずかしさと共に、どうしようもないほどの興奮が体を襲い、触れられる箇所すべてが敏感になってしまったようだ。

 触れるか触れないか程度の強さで腕をなぞられるだけでも電流が体を走り、思わず体をよじらせてしまう。


 激しい運動をしているわけでもないのに息が荒くなり、熱を含んだ吐息がより姉に降りかかり、さらに激しく追い詰めてくる。

 だんだんワケが分からなくなってきた。このまま全てをより姉に委ねてしまいたい。

 胸を這っていたより姉の手が止まり、ブラウスのボタンに伸びてくる。

 ひとつ、またひとつ。丁寧に外してくれているのかと思って見てみたら、より姉の手も震えていた。


 緊張、してるんだ。

 その事実に心が強く跳ね、切ないほどの愛しさと共により姉の体を抱きしめる。

 少し動きにくくなったかもしれないけど、お構いなしにその手は動き続け、やがてわたしの下着が露わになった。


「外すぞ」


 微かに首を動かすと、背中に手が回り、プチっという音と共に締め付ける感覚から解放された。

 自分も着けているものだからさすがに慣れたもので、するすると腕から外すと上半身全てが光の下に。

 より姉の喉が動く。


「同じような姿は自分で見慣れてるはずなのに、どうしてこんなに興奮するんだろうな。キレイすぎるぞ、ゆき」


 胸元に顔を埋めると、そのまま優しくキスの雨を降らせてくる。

 今までに感じたことの無い感触に、体がどうしても跳ねてしまう。恥ずかしいから必死に抑えようとしているのに、より姉の唇が触れるたびに声が漏れてしまう。


 わたし達、このまま愛し合うのかな……。

 どこか現実感の薄い頭でそう考えていると、家の外に車の停まる音がした。


 え。


「それじゃ、五代さん、ありがとうございました~!」


 聞き間違えるはずもない、妹の元気な声。なんで!?


「ゆき! 服を持って脱衣所で着てこい!」


 瞬時に正気へ戻ったより姉がわたしの服をひっつかみ、押し付けてきた。

 わたしは慌てて走っていく。お風呂の脱衣所は玄関とは反対側にあるから急がなくても間に合うんだけど、気が焦ってしまってそれどころじゃない。


 わたしの自慢はいつでも正確無比に体を動かせることなんだけど、これだけ焦っているとボタンを上手くはめることすらできないんだということを初めて知った。

 もたもたしているうちに、三人がリビングに入ってくる音がした。


「あれ、ゆきちゃんは?」


 というひよりの声も聞こえる。早くしろよ、わたし!

 普段の倍以上の時間をかけて衣服を整えると、もう一度鏡を覗き込む。

 うん、いつもと変わらない、冷静な顔に戻ってる。はずだ。


「みんなお帰り~。晩御飯は五代さんからご馳走になるんじゃなかったの?」


「あ、ゆきちゃんいた! うん、そのつもりだったんだけどね。なんだか担当するタレントさんが体調を崩したとかで、急遽五代さんがお見舞いへ行くことになっちゃったんだ。今度みんなが揃ってるときに埋め合わせするって言ってたよ」


 なんとも間の悪い。

 ん? 間が悪いと思うってことは、残念に思っているのだろうか。わたしはあのままより姉と……。


「どうしたの? なんだか顔が赤いけど」


 しまった。つい想像してしまった。


「なな、なんでもないよ? そのタレントさん、大丈夫なのかなぁ、あはは」


 より姉に呆れたような顔で見られてしまった。

 分かってるよ! 自分でも何言ってんだって思ってるよ!

 こんな場面に慣れてないんだから仕方ないじゃんかぁ……。


「なんか挙動がおかしいね。もしかして、より姉となんかあった?」


「な~~! な~んもないよぉ?」


 声が裏返ってしまった。

 頭を抱えるより姉。

 ごめんよぉ……。


「怪しいな……」


 ですよねぇ。わたしもそう思います。


 横でわたしのことをジーっと見ていたあか姉が、突然近づいてきて匂いを嗅ぎだした。

 何やってんの?


「淫靡な匂いがする」

「「!!!」」


 より姉と共に驚愕のわたし。なんでわかった!

 てかあんた何者!?


「淫靡ですか……はぁ」


 黙って聞いていたかの姉にため息をつかれてしまった。なに、その憐みの目は。


「まだまだみんな若いですし、そういうことをするなとは言いません。わたし達は夫婦になるんですからそういう時も来るでしょう。だけど証拠隠滅くらいは徹底してほしいですね」


 そんな暇なかったんだもん。


「まぁまぁ、かの姉。わたし達が突然帰ってきたのも悪いんだからさ。ここはわたし達が気を遣ってあげようよ。より姉だってあの年で未経験ってのも可哀想だし」

「やかましーぞ、ひより!」


 顔を真っ赤にして抗議するより姉。そうか、そうなのか。


「ゆきも嬉しそうにしてんじゃねー!」


 それは無茶だよ。ずっと思い続けてくれたってことだもんね。

 より姉にとっては恥ずかしいんだろうけど、わたしにとっては愛しさが増すだけの事。


「そうだ! これからもう一度出かけて二人きりにしてあげようか!」

「余計な気を回さんでいい!」


 さすがにそれはわたしも恥ずかしい。公開処刑と変わらんじゃないの。


「……」


 顎に手を当てて何やら考え込んでいるあか姉。

 何か妙案でもあるんだろうか。


「五分くらいでいい?」


 いや、犬か。

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